ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

歴史

清水透『ラテンアメリカ五〇〇年』を読んで

最初に書いておくと、これは書評ではありません。清水さんの『ラテンアメリカ五〇〇年 歴史のトルソー』(岩波現代文庫 2017年)を読んで、何となく頭に浮かんだことを書き留めたものです。 本書は講義録がもとになっているようですが、小生のような門外漢に…

「開戦記念日」と「愛国心」

昨日12月8日は「太平洋戦争開戦の日」。 作家の伊藤整は、80年前1941年のこの日、報せを聞いて昂奮し、夕刊を買うために新宿へ出かけた。「太平洋戦争日記」にはこう記されているという。……午後一時出かけると田中家の裏の辺でラジオが日米の戦争、ハワイの…

「論破」の文化 

1990年代であったか、学校の授業にディベート(討論ゲーム)を導入することが一時流行したことがある。「流行」というほど一般化したわけではないが、小生も実践例を真似て、試しにやってみた。「原発の是非」とか、「死刑制度」とか、ある論争的テーマにつ…

映画「ユダヤ人の私」

「ユダヤ人の私」というドキュメンタリー映画が今週末20日(土)より岩波ホールで公開される(2022年1月14日まで)。ホロコースト(ナチスなどによるユダヤ人虐殺)の生存者の語りを記録した貴重な作品。前作「ゲッベルスと私」(2018年)に続くシリーズ第2…

二つの隠喩

16日土曜、日本史研究者・加藤陽子氏の毎日新聞の記事「近代史の扉」を読んで、世論操作の問題としては奥があり根が深いと思いつつも、端的にはDappi問題のことを連想しないわけにはいかなかった。他にもそういう人はいたのではないか。加藤陽子の近代史の扉…

「自民の自民による自民のための政治」

昨日はちょっと長かったので今日は短めに。 むかし学校に勤めていた頃、試験でアメリカ大統領リンカーンの民主主義に関する有名な言葉というのを質問したら、生徒の一人が「自民の自民による自民のための政治」と書いてきた。〇にしてあげたいと思ったが(笑…

投票率と教育文化

10月8日の「報道1930」は見ておくべき内容だったかも知れない。翌9日にキャスターの松原耕二氏がドイツの若者の投票率のことをTweetしている。松原耕二 on Twitter: "昨夜の『報道1930』、ドイツでは若者の投票率も70%。背景には学校での積極的な政治教育が…

目取真俊『眼の奥の森』

「一月万冊」で佐藤章さんが推奨していた目取真(めどるま)さんの作品。2004年から2007年にかけて季刊『前夜』に12回にわたって連載された文章に加筆・訂正したもので、2009年の刊。現在は品薄状態にあるようで、入手できたのは幸運だった。 戦争末期の沖縄…

「従軍慰安婦」から「従軍」を削除すること

先週新聞を読んでいて小さな記事が気になってはいた。中学・高校の社会科教科書の記述から「従軍慰安婦」の「従軍」が削除されるというのである。慰安婦「従軍」を削除 教科書訂正を承認 文科省 | 毎日新聞 「従軍慰安婦」「強制連行」5社が教科書訂正 政府…

「ひるおび」八代発言と共産党

TBSの「ひるおび」は一時眺めていた時期もあるが、コメンテーターに呼ばれるスシロー氏の醜悪さに嫌悪感があり、最近はあまり見ていない。しかし、そのスシロー氏でもさすがにこれは言わないと思う。番組の顧問弁護士然と一見スマートなことを曰う(つもりの…

100分de名著『戦争は女の顔をしていない』

さすがに弔問客は一段落したと思って、届け出や買い物などで外出したら、その間、意外にも来宅されていた人がいたりする。昨晩、弔問にいらした方は、留守中に2度も来宅されたと聞いて恐縮してしまった。 東京から夫婦で移住してきて10年というこの方、父親…

日本の統治システムの宿痾

朝、可燃ゴミを出しに外に出たら、雨は止んでいた。山鳩が鳴いている。 ふと、今日は、父親が病院に行く日だったことを思い出した。施設では父親との面会がままならないが、病院では落ちあえるので、楽しみにはしていた。 家のカレンダーには、あれこれ今後…

「観光地図にない」平和資料館

今日8月9日。長崎の原爆の日。デモクラシータイムスで、今年の2月、長崎の小さな資料館を紹介する動画を見たことを思い出した。衝撃の「地図にない」平和資料館~加害と向き合う【デモタイ取材旅】 - YouTube 案内者(訪問者)はジャーナリストで作家の高瀬…

8月6日 の「断章」

1945年8月6日の天気図を見た。東海上から(太平洋)高気圧が張り出していて、ここ数日の天気図と似たところがある。同年8月9日の天気図では、南海上に(熱帯)低気圧があり、今日の天気図にさらに似たところがある。76年前も今日と同じで朝から晴れて暑かっ…

過去の嘘 現在の嘘

むかし吉村徳蔵さんという高校の歴史の先生がいた。直接お会いしたことはないが、歴史教育者協議会という団体の副委員長を務めていたので、その筋では有名な人で、著書も何冊かある。最晩年の著作に、自身の半生を振り返った生徒向けの講演の記録があり、8月…

1940年 幻影の東京五輪との類比

先週から始まったオリンピックは1964年の東京大会と比較されることが多い。実際、今大会の誘致に動いた人々の頭の中は、「1964年の東京大会を、もう一度」だったし、自分も何となくそう思ってきたが、時代の前後を含めれば、本当に比較すべきは、64年大会で…

手を組むヒトラー 腕を組むスガ 

毎朝仏壇にご飯とお茶を供え、母親の写真を拝む。葬儀で写真が必要になったとき、母親は笑顔で写っている写真が少なかったので、探すのに苦労したが、葬儀屋さんがそれらしく仕上げてくれてありがたかった。以後、ずっとこの写真が母親の「基本的」肖像とな…

辰鼓楼と「偽造、捏造、アベシンゾー」

「偽造、捏造、安倍晋三(ギゾウ、ネツゾウ、アベシンゾウ)」――東京都議選の応援演説で、ある衆議院議員が述べた言葉を弁護士の澤藤統一郎さんが紹介している。笑えるけど、笑えない(けれど、笑う)。 (6月25日付「澤藤統一郎の憲法日記」澤藤統一郎の憲…

小泉悠さんの対談

ダースレイダーさんの6月3日の対談動画に、ロシアの軍事研究・評論家小泉悠さんが出演していた。2時間半もあるので2日に分けて視聴したが、期待通りのおもしろい内容。いくつか話題を拾って、話の概略を起こしてみる。ダースレイダー x 小泉悠 ロシアという…

パソコン故障につき……

パソコンが壊れてしまい、古いパソコンを代用しているが、これも入力キーに欠陥があり、飛車・角・香車・桂馬抜きで将棋をさしているようなもどかしさがある。前のパソコンがうまく修理できて、データが元にもどってくれるとよいのだが……。 平素よりつたない…

五・一五事件から89年

1932(昭和7)年5月15日日曜の午後5時頃、青年将校や士官候補生、政治団体の塾生らが決起し、首相官邸、立憲政友会本部、三菱銀行、警視庁などを襲撃した。犬養毅首相は、この日、来日中だった喜劇俳優チャールズ・チャップリンと会食する予定だったが、それ…

中山智香子『経済学の堕落を撃つ』

副題は、「自由」VS「正義」の経済思想史。こういうタイトルの命名法は講談社現代新書ではたまに目にするが、ある種の「誤解」や「先入観」を誘引される。が、内容としては、著者自身が「終わりに」に書いているとおり「著者なりの経済思想史の教科書」なの…

「I am KENJI」「I am not ABE」

昨日1月30日は、今から6年前の2015年にフリージャーナリストの後藤健二さんがIS(イスラム国)によって命を奪われたとされる日。古賀茂明さんが1月26日付AERAの連載で記事を書いている。 古賀茂明「菅政権で忘れられた英雄たち」 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA d…

100分で名著『資本論』 4

NHKの「100分で名著 カール・マルクス『資本論』」も最終回を迎えた。1月25日放送の第4回は「<コモン>の再生」という題名だが、ポイントは、エコロジー(人間が生態系の一部として自然との調和・共存をはかるという考え)とそのための<コモン>(共有財)…

100分で名著『資本論』 3

1月18日放送のNHKの「100分で名著 カール・マルクス『資本論』」の第3回 イノベーションが「クソどうでもいい仕事」を生む !? を見た。 伊集院:僕、ついこのあいだ、イノベーションについての番組で、大きな倉庫の中でたくさんのものを運ぶ仕事で、今までは…

100分で名著『資本論』 2

1月11日放送のNHKの「100分で名著 カール・マルクス『資本論』」の第2回 なぜ過労死はなくならないのかより、出演者3人の談。 齋藤:……特に日本社会においては長時間労働による過労死の問題であったり、精神疾患などの(労災)申請件数などが増えている。 安…

100分で名著 『資本論』1

1月4日に放送されたNHKの「100分で名著 カール・マルクス『資本論』」の第1回 「商品」に振り回される私たち を見た。講師は斎藤幸平氏(大阪市立大学准教授)。 『資本論』・第1巻は1867年の刊行だ。その本文の書き出しは、以下のとおり<番組内>。 資本主…

「辺野古の海」と「大人食堂」

文章を書いていて意を尽くせないということは数多いが、昨日上間さんの『海をあげる』について書いたものは、意を尽くせないのと感覚のズレと両方あって、もやもやしたものが尾を引いていた。「感覚のズレ」の方は、朝日新聞12月20日付「日曜に思う」を読ん…

井上弘貴『アメリカ保守主義の思想史』

著者の井上弘貴(ひろたか)氏は神戸大学の准教授。20世紀アメリカ合衆国の保守主義の思想史研究が専門とのこと。書名のとおりだ。 先回、2016年の大統領選挙で、大方の予想に反し、なぜ、トランプはヒラリー・クリントンに勝利できたのか、多くの識者が説明(…

「迷惑かけなければ抗議の意味ない」

日本学術会議の会員任命拒否問題に抗議して、10月7日付で佐藤康宏・東大名誉教授が文化庁有識者会議(登録美術品調査研究協力者会議)の座長を辞任したという。昨日12月15日付東京新聞にも望月衣塑子記者の署名入り記事があった。以下、引用。【独自】「首相…