ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

歴史

杉田水脈氏の「教育勅語」

webを眺めていて、自民党の杉田水脈衆院議員がX(ツイッター)に、教育勅語には「なに一つおかしなことは書かれていません」、児童虐待やいじめの防止に役立つので、「学校の先生にこそ、知ってほしい内容です」と投稿したという話を知りました。これには一…

「戦争機械」と「反戦放送」

先日久しぶりに大きな書店に行って本を買いました。ロシア史研究者の和田春樹さんの自伝というか回顧録『回想 市民運動の時代と歴史家 1967-1980』(作品社)という新刊本に目が留まりました。和田さんと「同時代」を生きたというには、和田さんの方が年齢…

早尾貴紀『希望のディアスポラ』を読んで

イスラエルがガザ地区での戦闘を再開させてから、ほぼ一方的にガザの住民の死傷者が増えています。イスラエルはハマスを根絶やしにするまで戦うと言っていますが、最初に攻撃を仕掛けたのはガザ地区のハマスだったとはいえ、これは本当に「自衛行為」と言え…

EWサイード『パレスチナ問題』序より

パレスチナ出身で学者・文芸批評家のエドワードWサイードが亡くなって20年になります。最近はあまり本屋にも行っていないのですが、一時のように著書を目にすることが少なくなって、だんだんと忘れられてきている気もします。イスラエルとハマスの戦闘が始…

「歴史の真実」と「数字の政治学」

「歴史の真実」とは何なのか。そしてまた、「真実」は自分の側にだけあるという思考は、結局どこに向かうことになるのか。 ――昨日の朝、毎日新聞を見ていて、栗原俊雄さんの記名記事が目に留まりました。関東大震災から100年を迎える今年の9月1日。それは震…

スペイン戦勝利を祝う首相と政府

今朝のテレビはスペイン戦勝利の話題一色ですね。大方は、二匹目のドジョウを期待しつつも、スペインに勝つところまではなかなか想像できなかったので、朝起きて結果を知って「ええっ!?」と思った人は多かったでしょう。小生はたまたま中継をテレビで見てい…

「政治主導を偽装した官僚専制」

最近安倍政権を「行政独裁」とか「官僚専制」と特徴づける人がぽつりぽつりと現れているように感じます。言葉として断片的には以前にも耳にしていましたが、筋立てた話を2つほど知りました。 日曜の毎日新聞朝刊に、ノンフィクション作家・保阪正康さんとジ…

「胡錦濤退席」の意味

10月22日に閉幕した中国共産党大会の閉幕式の出来事が憶測を呼びました。胡錦濤前総書記が党規約改正案などの採決前に突然退席したのですが、同行者に腕を抱えられている様子がいかにも本人の意思に反しているように映ります。当局発表では胡氏の(突然の)…

「ロシア的人間」像

2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻戦争は8ヶ月となり、特にロシア側には「弾切れ」が指摘されるなど、物量的に厳しい局面にさしかかり、プーチン大統領の発言にも変化が見えます。1ヶ月前に発した部分的動員令には国内の反発が強く、出国者も激増した…

多弁なる虚勢 無言なる算段

辺野古の座り込み抗議を見に、現地に行ったら、誰も「座り込み」をしていなかったから、立て看掲示の3011日を「0日にしたほうがよくない?」とVサインで笑う自身の写真入りのTweetを上げたひろゆきという人、テレビで見かけたくらいでよく知りませんでしたが…

『亜鉛の少年たち』を読んで

副題は「アフガン帰還兵の証言」。 原著は1991年刊。日本語訳は、故・三浦みどりさんの訳で、1995年、日本経済新聞社から『アフガン帰還兵の証言』という題名で刊行されています。今回改めて、奈倉有里さんの新訳で、岩波書店から増補版(裁判記録付)として…

3万円紙幣の肖像?

安倍元首相が銃撃された奈良市の近鉄大和西大寺駅前の現場は、現在再整備が進められている一画だということですが、奈良市長は10月4日、従来の計画どおり、車道として整備すると発表しました。曰く、「(何らかの碑の建立に)賛成反対とさまざまな考えがあり…

「国賊」vs「反日」 国葬の日の記録

岸田首相(政府)が「国葬」ではなく(正式には)「国葬儀」と言い張っていた安倍氏を「偲ぶ会(お別れの会)」は、知らぬ間に「国葬」という呼称で通されているようです。その「国葬」には行かないと公言した自民党の村上誠一郎議員が、9月20日に安倍氏を「…

良知力さんを読んで

良知力 らち ちから さんという早逝した社会思想史家の著書『向こう岸からの世界史』(未来社 1978年10月刊)を読みました。1848年のヨーロッパ、特にオーストリア・ウィーンの革命をめぐる話なのですが、学生の頃に一度読んで、よくわからず、就職してから…

現代の「奴隷」

今朝の毎日新聞に歴史家の藤原辰史さんの時評があります。「現代の奴隷」というタイトルに目が引かれました。 月刊・時論フォーラム:国際秩序の亀裂/現代の奴隷/安倍元首相国葬 | 毎日新聞 要約すると、「今の時代に奴隷なんているわけがない」と私たちの…

森山軍治郎『ヴァンデ戦争』

副題は「フランス革命を問い直す」です。文庫として出たのは今年の5月ですが、元の版は1990年代半ばに出ていて、当時、本屋で目にした記憶はあります。ひょっとしたら、手に取って眺めていたかもしれませんが、副題から「歴史修正主義(右派的な歴史の書き換…

森喜朗の胸像募金のこと

森喜朗氏の胸像を建てるために5月から募金集めがなされているそうです。 ご存じのとおり、森氏は東京五輪・パラリンピックの組織委の会長でしたが、その差別発言(認識)が会長職にある者として適性を欠くと批判され(見苦しい、いや、みっともない会見をし…

ゴルバチョフ氏のこと

8月30日、旧ソ連の指導者ゴルバチョフ氏が亡くなりました。振り返ってみると、同時代を生きた政治家の中で、最大の敬意を表したいと思わせる唯一の政治家かもしれません。 調べてみるとたぶん1980年頃なので、当時、小生はまだ学生だったと思うのですが、ブ…

なぜ8月9日長崎に原爆が……

お盆が近づき、去年亡くなった父親の新盆見舞いで、毎日人が来宅します。8月は亡くなった人に手を合わせる時期ですが、今年は少し別格です。 安倍氏の銃撃事件から1ヶ月が過ぎ、歴史における偶然と必然の連鎖について、ぼんやりと考えることがあります。安倍…

1945年8月6日朝「経験の大きな黒い塊」

今日は短く。2008年に亡くなった加藤周一さんが1945年8月6日の後の広島を回想した文章です。 広島には一本の緑の樹さえもなかった。見渡すかぎり瓦礫の野原が拡がり、その平坦な表面を縦横の道路と掘割の水が区切っていた。石造の建物がいくつか、崩れ落ちず…

現実は経験を越え 島田雅彦さんの記事を読んで

昨日も暑かったです。当地は多少海風が入るので千葉県内でも比較的涼しい方だと思うのですが、それでも最高気温が35℃に達しました。なかなかお目にかかれないような高温度です。東京・都心は40℃手前まで上がったということですが、まったくいつまで続くのや…

安倍氏国葬とその先

「PRESIDENT Online」の記事を2つ。 1つめは、『国葬の成立』(2015年)という著書がある歴史学者の宮間純一氏のもの。過去の国葬の事例を引きながら、安倍氏を国葬にするつもりの現政権の意図を考察する内容です。氏は、まず、大久保利通の葬儀と比べていま…

伊藤俊一『荘園』

副題は「墾田永年私財法から応仁の乱まで」。荘園とその制度的変遷を追いながら日本中世史を一瞥した労作です。すでにかなりの人に読まれているらしく、今後、この方面の標準的テキストとして読み継がれていくのではないか、と人から言われたので、がんばっ…

参政党について

今日6月23日は沖縄戦の犠牲者を悼む「慰霊の日」です。沖縄の人ではありませんが、一日静かに過ごしたい気持ちです。外では数日前からニイニイゼミが鳴き始めました。 とはいえ、昨日、来月10日投票の参院選が公示され、ざわざわとした感じはあります。比例…

戦争をしようとする国家は戦争の前に何をするか

ロシアのウクライナ侵攻開始後、ロシアの文化人たちの語りを精力的に翻訳してきた奈倉有里さんのインタヴュー記事が、5月29日付朝日新聞にあります。 ロシアで現在、一般の人々がどういう状況におかれているか、職を失ったり、徴兵の恐怖におびえたり、ウク…

テキサス州の小学校銃乱射事件

銃社会・アメリカの「病理」と言われる惨劇がまた起きました。5月24日、米国テキサス州の小学校で銃乱射事件が起き、多数の子どもや教員が巻き込まれました。ニューヨーク州のスーパーで10人が死亡した銃による凶行から、まだわずか1週間のことです。 翌25日…

元名護市長・稲嶺進さんの記事

今日、沖縄は日本復帰50年を迎えました。50年前には、小生の住む千葉県の田舎の役場にも「沖縄返還」の垂れ幕が掛かっていて、毎日学校の行き帰りにそれを見ていた覚えがあります。しかし、それがどういうことなのか、子どもにとっては、何かめでたいことら…

ちばてつやさんの話

漫画家のちばてつやさんのインタヴュー記事を読みました。ちばさんは生後まもなく両親と朝鮮半島に渡り、その後、当時の満州・奉天(現在の瀋陽)の日本人街に移り住みます。父親が働いていた社宅は、レンガ造りの高い塀に囲まれ、「塀の外に出てはいけない…

憲法施行75年

内田樹さんが昨日(5月2日)のブログで、ロシアと日本に共通しているのは「未来のあるべき姿」を提示できないことだと書いています。ロシアと日本 衰運のパターン - 内田樹の研究室……外形的な数値ではまだ日本の方がまさっているけれど、長期低落傾向に伴う…

堀茂樹さんの話を聞いて

フランスの歴史家エマニュエル・トッド氏のインタヴュー記事が4月8日付の文春オンラインにあります。タイトル(「 日本核武装のすすめ 」)に「腰が引けて」しまってそのままだったのですが、話によると、内容の大半は傾聴に値するとのことです。オンライン…