ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

都知事選の雑感

 7日の都知事選が終わって今日で2日。都民ではないので、そんなに力むのもどうかと思いつつ、都政が変われば国政にも連動するとの思いから、現職の「落選運動」に勝手に参加して、先週来ブログに「連投」をしてきました。結果については、ある意味「想定内」、別の意味では「予想外」と受け止めています。「想定内」というのは、一言でまとめれば、やはり「現職は強い」ということでしょうか。「予想外」というのは、蓮舫候補の得票が有効票の2割にも及ばなかったということです。
 新聞に発表されていた確定得票数を少し加工して並べてみます。

 当 小池百合子 2,918,015(42.7%)
   石丸 伸二 1,658,363(24.3%)
   蓮  舫  1,283,262(18.8%)
   田母神俊雄  267,699( 3.9%) 
 ※10万票超3人計  386,549
    1万票超4人計  241,701
     他     67,649

 直近の情勢分析では石丸候補への支持が急伸していて、蓮舫候補をしのぐ勢いだと聞いて、「へー、そうなの!?」と思いましたが、結果はまさしくそのとおりとなりました。石丸候補に投票した人と蓮舫候補に投票した人は同質とは思えないので、参考程度の意味しかありませんが、小池批判票として単純に合計すれば、294万票余。これは小池候補の得票を上回っています。ですから、小池陣営からすれば、一騎討ちのガチンコ勝負になれば危うかったかもしれないわけで、批判票が割れてくれたおかげで楽勝できたかたちです。それに、石丸候補の選挙参謀には自民党関係者(元かも知れませんが)が含まれていたという話もあるので、うがった見方をすれば、早い段階で「小池与党?」側が批判勢力の「対抗馬」つぶしを画策していたのではという疑念も浮かびます(もちろん、それを確定づける材料は持ち合わせていません)。
石丸伸二氏したたか都知事選“ジジ殺し”「選挙の神様」が演説仕切り大物経営者が胸アツ演説|日刊ゲンダイDIGITAL

 そう考えると、候補者の乱立は小池陣営にはまことに好都合でした。立候補者が多いのはある程度は事前に予想できましたが、悪ふざけをしただけに見えた「NHK党」も、この意味では小池三選を大いにアシストしたわけで、都知事選に限らず、あちこちの選挙で候補を立てている日頃の活動ぶりを考えると、その資金源はどこから出ているのか、疑いの目を向けたくもなります。

 蓮舫候補が3位に沈んだことは、勝てないまでも接戦を期待していた立憲関係者にはけっこうショックだったようです(小生にとっても、この「失速」は意外でした)。街頭演説であれほどの人を集めた候補者のこの得票をどう理解すればよいのか。たまたま今朝朝日新聞を眺めていたら、作家の鈴木涼美さんの「都知事選を振り返って」という記事を目にしました。要するに、現場で汗水たらして働く人たちにとって、蓮舫候補の「白スーツ」の清潔感や正しさ、高潔感には距離感、もっと言えば「疎ましい」感じがあったのでは――鈴木さんはそう書いています。

 ……週刊誌など一部メディアは小池氏の学歴問題などを繰り返し報道したが、思えばエリートにとってピカピカの履歴書など足かせでしかない。そもそも都知事選では過去も「正しい」政策を述べ、リベラル系インテリたちの強固な支持を得た候補がことごとく苦戦してきた歴史がある。小池氏も蓮舫氏も「庶民の気持ちなんてわからなそう」な「強いエリート女性」だけれど、そんな中で小池氏の学歴詐称疑惑なんて、彼女の「完璧ではない」一面、いわば一つのチャームとしてしか映らなかったのかもしれない。思えば、ここ二十年で人気を誇った首相たちも輝かしい学歴とは無縁だし、カネが絡む嘘に比べて経歴の虚飾はこちらに実害がない。
 現場で汗水流して働く多くの男女が白スーツを選ばないのは、すぐに汚れてコスパが悪いから。水商売の世界でも白スーツは、使い捨てできるほど儲かっているナンバーワンホストらがバースデーイベントなどに向けて新調し、イベント終わりにはどろどろになっている代物でしかない。それを日々纏える蓮舫氏は清潔感やきちんとした印象を得ると同時に、泥くさい生活を送る者たちとの精神的つながりを失った気もする。
 過去の実績アピールに忙しいだけの現職に対し、蓮舫氏が掲げた政策は街頭演説などで熱い支持を得た。しかし、正しさを追求する高潔さでもっておじさんたちを一時パニックにさせることはできた彼女も、神経を鈍化して時には馬鹿になって生きなければならない社会人女性たちに寄り添うような可愛げはあまりなかった。それは男女問わずどこか嫌味なインテリ臭のするリベラル勢にも大いに言えることで、すでに女性都知事が誕生し、女性であることが目立つ要素にも、逆にネックや弱みにも見えなくなった今、女性政治家の突き付けられる課題は男性政治家のそれに近づいている可能性はある。忙しく、貧しく、必死に生きる市民に、正しく高潔に完璧に生きる贅沢はなかなかないのだから。

朝日新聞 2024年7月9日(火)朝刊・25面)
「とりあえず女性」のその先は 都知事選を振り返って 寄稿・鈴木涼美:朝日新聞デジタル


 鈴木さんが言うような「疎ましい」感じはメディアによって増強されてもいるでしょう。プロジェクションマッピングの件もあって、電通と小池氏とのツーカーの関係は早くから指摘されていたところですが、当初のテレビニュースやワイドショーでの蓮舫候補の映像紹介は「絶叫シーン」ばかりで、かなり違和感がありました。攻撃的な第一印象がまず有権者に植え付けられた感じを持ちます。「世論誘導」という点での極めつけは、TBSの「アッコにおまかせ」での投票方法に関する虚偽です。長年選挙放送に携わってきたテレビ・ディレクターもいるのに、わざわざこんな軽率な誤報を許すものかと驚かされました。これにはやはり「背景」があるのではないでしょうか。「選挙のプロ」が指南する勝利の方程式の第一弾が、批判票の分断だとすれば、第二弾はメディア対策でしょうから。
「アッコにでまかせか!」選挙報道でまたも炎上「ひらがな記入は無効」「身分証持参」誤認発言で「打ち切りにすべき」厳しい指摘も | Smart FLASH/スマフラ[光文社週刊誌]

 細かな分析は専門家に任せるとして、選挙で当選するには、勝負事ですから、どんな手を使ってでも自分に有利な状況をつくる(不利な状況は一切かき消す)のが「鉄則」です。「選挙のプロ」は勝つための方法を冷徹に追及するでしょう。しかし、普通の人には、どんな「汚い手」をつかってもいいのかというと、さすがに迷いや躊躇はあるでしょう。それを反対陣営の「弱さ」のように考えてしまってよいのかどうか。立憲の前代表・枝野幸男氏は(無党派層から支持を得るためには)愚直に政策を訴えていくしかないというようなことを言っていたようです。「王道」はそういうことですが、言ってる枝野さん自身にもそれなりに「迷い」はあると想像します。何事も綺麗に割り切ったり、単純に考えるわけにもいきませんから。

 それから、選挙ポスターの掲示欄が足らずに、不公平な扱いをされた候補者の訴えが昨日からニュースで伝えられています。さすがにクリアファイルでボードの端に付け足して貼りつけろという選挙管理委員会の対処は非難を免れないでしょう。しかし、それならば候補者による公開討論会を1度しか開かなかったことも話題にされてしかるべきと思います。多くの有権者にとって候補の選択に必要なのは、顔写真(ポスター)よりも明らかに各候補の主張の中身でしょう。

 なお、今回「落選運動」を率先した弁護士の郷原信郎さんと裏金問題の告発者(立役者)上脇博之さんが、当選した小池氏を公職選挙法違反で告発しています。周知のとおり、学齢詐称での告発もあり、選挙が終わっても、話はまだ全然完結したわけではないので、なお推移を見ていく必要があると思います。
「小池百合子氏落選運動」の成果と今後の活動について | 郷原信郎の「世の中間違ってる!」
ついに公選法で刑事告発された小池百合子候補「女帝の落日」 「定例会見」で選挙戦略を得々と解説、最多集票でも当選無効か(1/6) | JBpress (ジェイビープレス)




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