ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

読書

清水透『ラテンアメリカ五〇〇年』を読んで

最初に書いておくと、これは書評ではありません。清水さんの『ラテンアメリカ五〇〇年 歴史のトルソー』(岩波現代文庫 2017年)を読んで、何となく頭に浮かんだことを書き留めたものです。 本書は講義録がもとになっているようですが、小生のような門外漢に…

トルストイ『文読む月日』5

毎度引用している、北御門二郎さん訳のレフ・トルストイ『文読む月日』(ちくま文庫)の原題は「КРУГ ЧТЕНИЯ(クルーク・チテーニャ 読み物の輪)」という。最も古い訳本は、ロシア文学者・原久一郎さんによる1934年の『一日一善』で、この題名は、1880年代…

市場はいつか牙をむく

国交省の統計不正に関する識者のコメントを最近の朝日新聞から拾ってみた。 『アベノミクスによろしく』(集英社インターナショナル 2017年)の著者で弁護士の明石順平さん。 統計の基になる「生データ」を消しゴムで消す。まさか国の重要な統計でそんなこと…

国が何億かけても隠蔽したい事実

図書館に本を返しに行ったついでに本棚を眺めていて、野上忠興著『安倍晋三 沈黙の仮面 その血脈と生い立ちの秘密』(小学館 2015年)が目に留まった。今さらと思いながら、数ページめくって読んでみた。同情など一切する気はなかったが、読んでいて「気の毒…

ジョージ・オーウェルとの「遭遇」

最近ジョージ・オーウェルに二度「遭遇」した。 1回目は先週の水曜に本屋で。時間つぶしに小さな本屋に入ったところ、偶然『一杯のおいしい紅茶』というオーウェルのエッセイ集を見つけた。2020年刊の新版である。こんな小さな書店の本棚に並ぶなんて、こう…

「開戦記念日」と「愛国心」

昨日12月8日は「太平洋戦争開戦の日」。 作家の伊藤整は、80年前1941年のこの日、報せを聞いて昂奮し、夕刊を買うために新宿へ出かけた。「太平洋戦争日記」にはこう記されているという。……午後一時出かけると田中家の裏の辺でラジオが日米の戦争、ハワイの…

「マイクロアグレッション」のこと

「マイクロアグレッション Microaggression」――不勉強にも、初めて知った言葉だが、「あからさまな」差別とまではいかないが、曖昧で無意識かつ見えにくい(認識されずにいる)差別のことを包括する語らしい。 TBSラジオのSessionのパーソナリティーの荻上チ…

金平茂紀『筑紫哲也『NEWS23』とその時代』

金平さんの『筑紫哲也 『NEWS23』とその時代』(講談社)を読了した。楽しいことばかり書いてはなかったが、一気に読んだ。 先日来、金平さんのインタヴューのことや筑紫さんの最後の「多事争論」(先日の引用と金平さんの本書での引用がちがうのだが…)のこ…

2008年3月28日「多事争論」より

金平茂紀さんの『筑紫哲也NEWS23とその時代』を読んでいる。食卓上においたまま、食後に少しずつ読むことにして、昨日6章まできた。 「おかげ」でテレビをいっそう、というか、ほとんど見なくなった。ジャーナリストの筑紫さんが「越境」してその可能性に挑…

『海をあげる』 本屋大賞受賞のこと

上間陽子さんの『海をあげる』(筑摩書房)が「本屋大賞 2021年ノンフィクション本大賞」に選ばれたという。実際に本を読んだ者として、受賞を喜ばしいと思う反面、このあと「商業ベース」に乗せられていくことを思うと、少々複雑な思いもする。 早速、今朝…

『文読む月日』3

今日は短く。 『次郎物語』の作者下村湖人のことばに 「馬鹿は必ずしも高慢ではない。しかし高慢はすべて馬鹿である」 (『青年の思索のために』) というのがあるらしい。 トルストイ『文読む月日』の11月9日のテーマは、この「高慢」。 (一) 自愛は高慢…

『文読む月日』 2

毎晩トルストイを読むはずが、いかんいかんと思いつつ、ついついため込んでしまい、10月23日からの5日分を昼食後に読んでいたら、現実と交差するような言葉が並んでいた。 十月二十五日 …… (五) ある人を悪人だとか、馬鹿だとか、不正な男だとかいう理由…

トルストイ『文読む月日』より 1

今月からトルストイ『文読む月日』を読んでいる。長く手に入らず、古本も高価だったが、今月初めに入った本屋でたまたま見つけて即刻キャプチャー(誰も買わないって! 笑)。運命的なものを感じて久しぶりに気分が高揚した。 ちくま文庫版で上中下3冊、本文…

投票率と教育文化

10月8日の「報道1930」は見ておくべき内容だったかも知れない。翌9日にキャスターの松原耕二氏がドイツの若者の投票率のことをTweetしている。松原耕二 on Twitter: "昨夜の『報道1930』、ドイツでは若者の投票率も70%。背景には学校での積極的な政治教育が…

10万円給付という公約

自民党の総裁選が終われば総選挙がやってくる。10月か、11月…? そのときコロナ感染はどうなっているか。中にはもうGO TOに前のめりになっている人がいるという話も聞く。確かに第5波は8月20日頃をピークに下降線をたどっているように見える。が、喉元過ぎる…

懐かしいプリント原稿

6月にパソコンが壊れてしまい、今のパソコンに古いデータの取り込みをしていたら、むかし懐かしい授業プリントの原稿が出てきた。テーマは「アイデンティティーを考える」だったかと思う。引用資料として、読んだ新聞記事をすぐに切り抜いた記憶がある。 中…

目取真俊『眼の奥の森』

「一月万冊」で佐藤章さんが推奨していた目取真(めどるま)さんの作品。2004年から2007年にかけて季刊『前夜』に12回にわたって連載された文章に加筆・訂正したもので、2009年の刊。現在は品薄状態にあるようで、入手できたのは幸運だった。 戦争末期の沖縄…

危機の時代と自己責任

8月20日に放送されたCSのTBS NEWS『国会トークフロントライン』で、元自民党幹事長の古賀誠氏が、コロナの感染拡大と自己責任について言及していることを知った。自民党の総裁選の話より、こちらの方が気にかかった。 以下、該当部分の引用。解散は…

100分de名著『戦争は女の顔をしていない』

さすがに弔問客は一段落したと思って、届け出や買い物などで外出したら、その間、意外にも来宅されていた人がいたりする。昨晩、弔問にいらした方は、留守中に2度も来宅されたと聞いて恐縮してしまった。 東京から夫婦で移住してきて10年というこの方、父親…

「泥船」の出航

「大船」に乗ったつもりが実は「泥船」だった――いやまあ、「泥船」は言い過ぎだが、最大限好意的な表現を使ったとしても、出航前からこの船は完全に舵が壊れていると思う。 迎賓館でバッハの歓迎会をやるなど、一部の国民からすればケンカを売られているよう…

三菱電機の検査不正のこと

三菱電機の長年にわたる検査不正が発覚した。遅くとも(「早くとも」!ではなく)1985年にはすでに不正をしていたという。今から35年以上も前の話だが、これよりも前からやっていたということになると、あの「バブル経済」以前ということになる。驚愕である…

東京五輪公式グッズのこと

五輪の公式グッズの売れ行きが芳しくないという記事を見た。 むかしロサンゼルス・オリンピックの開幕前に公式マスコットのイーグルサムのワッペンが胸についたTシャツを買ったことがある。当時、すでに商業五輪への批判の声も耳にしていたが、オリンピック…

『職業政治家 小沢一郎』裏話

ジャーナリストの佐藤章さんが清水有高さんの「一月万冊」(5月19日付公開)で著書の『職業政治家 小沢一郎』について語っている。なぜ、小沢一郎なのか? 小生の小沢一郎に対するイメージは決して芳しいものではなかった。昔、宮沢賢治の足跡をたどろうと岩…

佐藤章『職業政治家 小沢一郎』

清水有高さんの「一月万冊」で、佐藤章さんが出演する回で必ず紹介(推薦)される本。こういうのはふだんは買わないのだが、清水さんの番組をタダで視聴させてもらい、いろいろな政界裏情報を得ているので、“会費”代わりと思い、買って読んでみた。あにはか…

中山智香子『経済学の堕落を撃つ』

副題は、「自由」VS「正義」の経済思想史。こういうタイトルの命名法は講談社現代新書ではたまに目にするが、ある種の「誤解」や「先入観」を誘引される。が、内容としては、著者自身が「終わりに」に書いているとおり「著者なりの経済思想史の教科書」なの…

チェルノブイリ原発事故から35年

チェルノブイリで原発事故が起きた1986年4月26日(午前1時23分)から、昨日でちょうど35年。旧ソ連(ウクライナ)の一角で起こったこの事故には、放射能汚染の問題はもちろん、いろいろなことを考えさせられた。 こうした事故が起こった場合、正確な情報(真…

『資本論』再読のこと 

マルクス『資本論』(の関連本)がよく読まれているという。小生も先月、筑摩書房のマルクス・コレクションで第1巻だけを通して読んで、懐かしかったし、昔は気づかなかったことがいくつかあった。内田樹さんも似たようなことを指摘していたが、「……論」とい…

「パンと塩は断れぬ」

ロシア語のことわざを眺めている。日本語にも同じ意味のことわざがあるなと思えるものがいくつもあるが、そのズレやちがいがおもしろく感じる。 たとえば、「猫にとっていつもバター祭りがあるとはかぎらない」というのがある。「バター祭り」とはロシアの春…

エピクテトス『人生談義』第1巻・第21章

病院の待ち時間にエピクテトス『人生談義』(國方栄二訳 岩波文庫)を読んでいる。 エピクテトスはローマ時代の「ストア派」の人。生まれはトルコの西南、エフェソスの近く。奴隷身分から身を起こしたがのちに解放され、哲学教師として80歳まで生きた。ソク…

モラルの焦土 2021

社会学者の小熊英二さんの著『と』(新曜社 2002年)の第1章「モラルの焦土」を読むと、戦争とコロナの違いはあるけれども、75年も前と今の “強情なまでの” 変わらなさを感じる。20年近く前に初めてこれを読んだ時もそう感じたが、今の方がより切実だ。 以…