ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

読書

『職業政治家 小沢一郎』裏話

ジャーナリストの佐藤章さんが清水有高さんの「一月万冊」(5月19日付公開)で著書の『職業政治家 小沢一郎』について語っている。なぜ、小沢一郎なのか? 小生の小沢一郎に対するイメージは決して芳しいものではなかった。昔、宮沢賢治の足跡をたどろうと岩…

佐藤章『職業政治家 小沢一郎』

清水有高さんの「一月万冊」で、佐藤章さんが出演する回で必ず紹介(推薦)される本。こういうのはふだんは買わないのだが、清水さんの番組をタダで視聴させてもらい、いろいろな政界裏情報を得ているので、“会費”代わりと思い、買って読んでみた。あにはか…

中山智香子『経済学の堕落を撃つ』

副題は、「自由」VS「正義」の経済思想史。こういうタイトルの命名法は講談社現代新書ではたまに目にするが、ある種の「誤解」や「先入観」を誘引される。が、内容としては、著者自身が「終わりに」に書いているとおり「著者なりの経済思想史の教科書」なの…

チェルノブイリ原発事故から35年

チェルノブイリで原発事故が起きた1986年4月26日(午前1時23分)から、昨日でちょうど35年。旧ソ連(ウクライナ)の一角で起こったこの事故には、放射能汚染の問題はもちろん、いろいろなことを考えさせられた。 こうした事故が起こった場合、正確な情報(真…

『資本論』再読のこと 

マルクス『資本論』(の関連本)がよく読まれているという。小生も先月、筑摩書房のマルクス・コレクションで第1巻だけを通して読んで、懐かしかったし、昔は気づかなかったことがいくつかあった。内田樹さんも似たようなことを指摘していたが、「……論」とい…

「パンと塩は断れぬ」

ロシア語のことわざを眺めている。日本語にも同じ意味のことわざがあるなと思えるものがいくつもあるが、そのズレやちがいがおもしろく感じる。 たとえば、「猫にとっていつもバター祭りがあるとはかぎらない」というのがある。「バター祭り」とはロシアの春…

エピクテトス『人生談義』第1巻・第21章

病院の待ち時間にエピクテトス『人生談義』(國方栄二訳 岩波文庫)を読んでいる。 エピクテトスはローマ時代の「ストア派」の人。生まれはトルコの西南、エフェソスの近く。奴隷身分から身を起こしたがのちに解放され、哲学教師として80歳まで生きた。ソク…

モラルの焦土 2021

社会学者の小熊英二さんの著『と』(新曜社 2002年)の第1章「モラルの焦土」を読むと、戦争とコロナの違いはあるけれども、75年も前と今の “強情なまでの” 変わらなさを感じる。20年近く前に初めてこれを読んだ時もそう感じたが、今の方がより切実だ。 以…

「キワキワだけど負けてない」

先月に強風が吹いて、小屋のトタン屋根が剥がれてしまい、恐る恐る上がって修理したのだが、錆やペンキの剥がれが目についた。ペンキの塗り替えの時期が来ているようだった。しかし、冬場に塗るのもなあ、と躊躇し、必要な道具だけはそろえておくことにした…

100分で名著『資本論』 4

NHKの「100分で名著 カール・マルクス『資本論』」も最終回を迎えた。1月25日放送の第4回は「<コモン>の再生」という題名だが、ポイントは、エコロジー(人間が生態系の一部として自然との調和・共存をはかるという考え)とそのための<コモン>(共有財)…

厚労大臣とワクチン大臣

昨晩(1月20日)田村憲久厚生労働大臣は、アメリカの製薬大手「ファイザー」と年内に新型コロナウイルスのワクチン約1億4400万回分の供給を受けることで正式に契約を結んだと発表した。スガが「ワクチン担当」なる新部署を立ち上げ、その大臣に河野太郎を就…

100分で名著『資本論』 3

1月18日放送のNHKの「100分で名著 カール・マルクス『資本論』」の第3回 イノベーションが「クソどうでもいい仕事」を生む !? を見た。 伊集院:僕、ついこのあいだ、イノベーションについての番組で、大きな倉庫の中でたくさんのものを運ぶ仕事で、今までは…

軽信とシニシズムの同居

「桜を見る会」前夜祭の明細書と領収書の件。野党側の提出要求にアベ側は応じず。 「ホテル側に確認したところ、明細書は再発行しないと確認した。宛先や金額が異なる領収書を発行はできないと聞いている」などと1月5日付で回答。 野党側の再質問状にも、「…

100分で名著『資本論』 2

1月11日放送のNHKの「100分で名著 カール・マルクス『資本論』」の第2回 なぜ過労死はなくならないのかより、出演者3人の談。 齋藤:……特に日本社会においては長時間労働による過労死の問題であったり、精神疾患などの(労災)申請件数などが増えている。 安…

嘘の繰り返し

ハンナ・アーレントの『全体主義の起原3』(みすず書房)から引用を二つ。 <嘘の持つ可能性についての恐るべき魅惑的で頽廃的な観念……>でっちあげとか嘘とかは充分に大がかりで大胆でさえあれば疑う余地のない事実に転化しうるのではあるまいか? 人間と…

100分で名著 『資本論』1

1月4日に放送されたNHKの「100分で名著 カール・マルクス『資本論』」の第1回 「商品」に振り回される私たち を見た。講師は斎藤幸平氏(大阪市立大学准教授)。 『資本論』・第1巻は1867年の刊行だ。その本文の書き出しは、以下のとおり<番組内>。 資本主…

上間陽子『海をあげる』

エッセイ集。新年最初の一冊はこの本と決めていた。問われているテーマの一つ一つが重くてため息をついてしまうが、それほど「塞ぎの虫」にならないのは、著者の言う「隠れた伴走者」である小さな娘さんのおかげかもしれない。それは著者自身も同じなのだろ…

今井むつみ『英語独習法』

今話題の新書。先月の18日に刊行されたばかりなのに、わずか2週間でもう品薄状態になっていて、今ネットで注文しても2,3週間待ちだという。語学(英語)の向上に熱心な人って多いんだなあと思う。認知心理学から見た学習法の提案というのに “斬新” さがあっ…

井上弘貴『アメリカ保守主義の思想史』

著者の井上弘貴(ひろたか)氏は神戸大学の准教授。20世紀アメリカ合衆国の保守主義の思想史研究が専門とのこと。書名のとおりだ。 先回、2016年の大統領選挙で、大方の予想に反し、なぜ、トランプはヒラリー・クリントンに勝利できたのか、多くの識者が説明(…

「迷惑かけなければ抗議の意味ない」

日本学術会議の会員任命拒否問題に抗議して、10月7日付で佐藤康宏・東大名誉教授が文化庁有識者会議(登録美術品調査研究協力者会議)の座長を辞任したという。昨日12月15日付東京新聞にも望月衣塑子記者の署名入り記事があった。以下、引用。【独自】「首相…

藤田省三『現代史断章』の冒頭から

学生の頃「政治学」のレポートか何かを書かなければならなくなり、ゼミの先輩と何を読んだらいいか雑談していたら、「あの(政治学担当の)先生は、丸山真男と藤田省三と松下圭一が好きなんだよね」と言われて、それがきっかけだったかどうか、藤田省三さん…

「政令による支配」 H.アーレント

昨日は昼から雨が降り始めたので、外仕事はあきらめて、久しぶりに長時間、本を読んだ。古本で手に入れた『全体主義の起原』3巻本の「第2巻 帝国主義」。著者のハンナ・アーレントはアメリカに亡命したユダヤ系ドイツ人の政治哲学者。 彼女の書いたものはど…

宇野重規さんの書評

朝日新聞の11月14日付「好書好日」に宇野重規さんの書評がある。 宇野さんは、ご存じのとおり、日本学術会議の会員から外された6人の一人なのだが、メディアからコメントを求められても、意外なほど多くを語らなかった。それも人としての矜持の示し方だと思…

晩秋の神田神保町・古本祭りを思う

10月の末になり日が短くなると神田の古本祭りを思い出す。残念ながら今年はコロナのために中止となったようだが、ひところは毎年よく通ったものだった。小生のような地方の田舎者には電車を乗り継ぎ東京都心に出ていくのはけっこう大変なのだが、江戸川を渡…

小泉悠『「帝国」ロシアの地政学』

小泉悠『「帝国」ロシアの地政学 「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(東京堂出版 2019年6月) なかなかおもしろかった。著者の小泉さんはテレビでコメントする姿を何度か拝見したが、筋立てて話す様子が印象に残っていた。確かに「軍事オタク」の片鱗も見せ…

J.リード『世界をゆるがした十日間』上

1917年のロシア"十月(十一月)革命"のルポルタージュ。著者はアメリカの人。別のルポ『反乱するメキシコ』でジャーナリストとして名を上げた。 この年のロシアには早春と初冬の2回、政変があったが、ロシア暦(ユリウス暦)と西暦(グレゴリオ暦)に12日の…

災害とソーシャル・キャピタル

今年の梅雨は長かった。雨続きで雑草が伸び放題。止み間に草取りをしてきたが、まだまだ区切りが見えてこない。数日前に庭の草を取っていたら、やたらとカラスが屋根にとまる。追っ払いはしないが、屋根の上を眺めていて「あれ?」と思った。鬼瓦と冠瓦のつ…

チェーホフのこと 『新版 ロシア文学案内』より

〇藤沼貴・小野理子・安岡治子『新版 ロシア文学案内』(岩波文庫 2000年) 蔵書の岩波文庫を読んでいこうと思い立ち、ロシア関係のものを幾冊か読み進めている。 これは2000年4月に刊行されたもので、現在は品切れ。金子幸彦さんの「旧版」が1961年刊で、そ…

橋本雅一『世界史の中のマラリア』

カミュ『ペスト』を読み終えて、本箱の片隅に長く眠っていた本に目が留まった。1991年5月4日、神田・長島書店で購入とのメモ書きがある。30年くらい前のことで、本を開いた形跡はあるが、目次から数頁めくったくらいでそのままだったと思われる。しかし、今…

カミュ『ペスト』を読んで 2

アルベール・カミュの『ペスト』を読み終えた。小説としては『異邦人』(1942年)に続く二作目で、1947年6月に発表されたもの。戦後から2年。小説の舞台にはまだ“戦争”の痕跡を感じないではない。疫病の「ペスト」に含意されているものが「戦争」であったと…