ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「国策」としてのマイナ保険証

 今日は病院に行く日でした。受付でしばらく様子を眺めていましたが、紙の健康保険証でなくマイナカードを出す人は見えませんでした。昨日、国家公務員のマイナ保険証の利用率が4.36%だという記事を目にして、さもありなんと思いましたが、あらためて世の現実を目の前で見せられた感じがします。
「完璧に失敗」マイナ保険証、国家公務員の利用率4.36%にあふれる憤慨…河野大臣“過去の発言”への批判も再燃 | Smart FLASH/スマフラ[光文社週刊誌]

 この記事を見て、「国家公務員のくせに(国策を)何だと思ってるんだ」と思う向きもあるでしょうが、しかし、国家公務員の人たちだって利用価値がない上に、個人情報の管理に不安があれば、使いたくないと思うのは当たり前で、いくら「公僕」だからって、利用して無用のトラブルに巻き込まれるのは御免蒙りたいでしょう。それでも平均で4%の国家公務員が「忠誠心」を示して?(あるいは意地になって?)、利用しているわけで、想像すると、それもそれで驚きではあります。
 むしろ、こういう調査は国会議員(特に自民党議員)に向けてやる方が「効果的」ではないかと思います。何せ、昨年7月に上の週刊誌「FLASH」が全衆議院議員にマイナカードの取得の有無をアンケートしたら、岸田首相や河野大臣など「大物」が回答を拒否して、話題になりました(岸田さんはのちに2016年にはカードをつくったと言ってはいましたが、それなら回答を拒否する理由がありません)。国会議員の方々の中にも病院通いをしている人はいるでしょうから、彼らが実際にどう「行動」しているのか調べる価値はあるし、ひょっとしたら「衝撃的な結果」になるかもしれません。
マイナカード取得の有無に岸田首相ら大物議員「回答拒否」報道にネットは1日話題に:中日スポーツ・東京中日スポーツ

 今朝新聞を眺めていたら、経済協力開発機構OECD)が発表した2023年版「デジタル政府指数」で、日本は調査対象の加盟33カ国中、31位に落ち込んだ、という小さな記事がありました。
デジタル政府指数:デジタル政府指数 日本、33カ国中31位 OECD | 毎日新聞

マイナ保険証に反対していると、「だからこうなるんだ」と罵声が飛んできそうですが、しかし、小生のようなアナログ(志向の)人間が単に多いからというだけで、こんな順位になるものでしょうか。そもそもマイナカードの取得は任意なのに、無理に健康保険証とリンクさせて、実質義務化しようとした政策判断に誤りがあったのではないかと思います。立ち止まって成果を検証し、次の方策を考える機会も何回かあったと思いますが、現状それもフイにしてしまっています。

 加藤聖文さんの『満蒙開拓団』を読んでいたら、終わりの方にこんな一文があります。
 ……政策は実施当初において、構想段階では想定できなかった事態に直面するものである。その際、適切な政策の見直しと、それを迅速に実行する柔軟性が求められるが、この機会を逸すると、政策が肥大化するにつれ矛盾も深刻化し、見直し程度ではすまなくなる。満州開拓政策も当初に見直しの機会を逸したために、政策の肥大化とともに誰も止められなくなってしまったのである。……
 かつて満州開拓政策という国策が行われた時代は国民が主権者ではなかった。したがって、現実はどうであれ国民は国策の「犠牲者」だったといえなくもない。しかし、現在においては国民が主権者であり、政策結果の責任の一端を担う以上、国策という怪物から目を背けてはならない。現在、そして将来にわたって生み出される国策をいかに制御していくべきか、満蒙開拓団の歴史は我々にその覚悟を自覚させるものなのである。
             (加藤『満蒙開拓団』、岩波現代文庫、253-254頁)

 マイナ保険証にも当てはまるような気がします。これは「覚悟」をもって「制御」しないといけないと思います。政府が「改める」まで、今後も反対論を続けていきます。


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