年明け元日の能登半島の地震には本当に驚きました。石川県に帰省している(はずの)知人もいるので、大丈夫だろうかと心配していたら、昨日の夕方、テレビで航空機火災の映像を目にして、これが羽田空港での事故と知って、また驚愕です。聞けば、千歳空港から到着したJALの便と海上保安庁の輸送機が衝突したというのですが、この国でそんな事故が起こったのは初めてではないでしょうか。もちろん事故というのは「まさか」の事態が積み重って生じるものなのでしょうし、操縦士(機長)も滑走路上に何かが見えれば、管制から着陸OKの指示が出ていたとしても、おかしい、と気づくのでしょうけれど、このときはすでに日が暮れて目視では確認できなかったのも影響したかも知れません。幸い日航機の方は乗客も乗務員も全員が脱出・避難できましたが、海保の輸送機の方は5人の方が亡くなっています。地震の被災地に向けて物資を運ぶ準備をしていたということで、地震がなかったらこんな事故にはならなかったわけで、何とも悲痛です。
以上の話とは関係ないのですが、Webニュースで能登半島の地震とこの羽田空港の事故を調べていたら、マイナンバーに関する記事に出くわしました。地震と空港の事故は「不慮」かもしれませんが、マイナ問題は全然そうではありません。
マイナンバーの矛盾を徹底批判「0.01%を切り捨てる“上からのデジタル化”は人権を蔑ろにする」|日刊ゲンダイDIGITAL
ご存じのとおり、政府は、先月自民党の政治資金・裏金問題に世間の注目が集まる中、現行の健康保険証を今秋に廃止し、マイナカードに完全に移行させると(再度)「宣言」しました。昨年春から秋にかけて、マイナ保険証が機能しない事態に直面した政府は、秋口に(批判かわしの時間稼ぎのため)問題の総点検をして国民の不安を払拭すると言っていましたから、常々言っているとおり「丁寧に説明する」のかと思いきや、岸田文夫首相と河野太郎デジタル相の対応はかなりあっさりしたものでした。この記事を読むと、現行健康保険証廃止に岸田首相はどちらかというと及び腰で、一切譲歩を許さない強硬姿勢なのは河野大臣のようです。以下、自治体情報政策研究所代表の黒田充さんへのインタビューの内容からの引用です。
──総点検によって、国民の不安は払拭できましたか。
政府が措置をしたというだけです。世論調査が示す通り、不安解消にはほど遠い。12月上旬に取りまとめとしていたのに、報告は12月12日にズレ込みました。国会閉幕の前日で、総点検については国会審議にも付されず、問題です。
──そもそも不安を払拭できるような点検だったのでしょうか。
政府の総点検は情報が間違っていなければ問題ないという立場で行われています。データの間違いを正せばうまくいくと。しかも、誤りが見つかった部分を修正しているだけで、見つかっていない部分はそのままです。政府が不安払拭のための措置をしたと言い張るためのアリバイづくりでしかありません。
──トラブルは収まりませんか。
保団連(全国保険医団体連合会)はマイナ保険証の医療現場のトラブルについて、顔認証のエラー、負担割合の間違い、資格情報の無効表示などいくつも指摘しています。しかし、そうした指摘に対して、総点検では事実かどうかの調査もしていません。河野デジタル相はうまくいっている現場を視察するだけで、トラブルが多発している多くの現場には足を運ばない。これではトラブルの芽を摘んだことにはなりません。
……
──総点検の対象8208万件のうち、ひも付け誤りが計8351件だったとして、河野大臣は「わずか0.01%」と胸を張りました。
政府は「デジタル化で誰一人取り残されない」と散々、強調してきました。デジタル庁のミッションにもそう書いてある。それなのに、0.01%だったら、大したことないと、平気で切り捨てる。大きな矛盾です。政府の存立意義は人権保障ですが、医療を受ける権利など人権はかなぐり捨てられています。
──「イデオロギー(政治思想や理念)的に反対する方は、いつまで経っても『不安だ』『不安だ』とおっしゃる」とも言いました。
デジタル化を進めないと日本は沈没する。だから、俺たちが国を守っているんだ。デジタル化という大義のもと、外野がうるさく言っても進めるんだという姿勢ですね。多くの人が亡くなろうと、太平洋戦争を続けたのと同じです。
──デジタル化と言えば、何でも通ってしまう。
デジタル化すれば、経費が削減され、不正がなくなると信じ込み、現場を見ることなく上から進める手法です。パソコンが世に出はじめた頃、社長がよくわからないまま買ってきたパソコンを従業員の机に置き、「明日からこれで仕事をせい」と言うようなものです。
──総点検を受け、官邸は廃止判断を先送りしようとしたが、河野大臣らが反発し、来秋廃止の方針が堅持されたようです。
岸田首相はマイナンバーの政策そのものやトラブルの実態について、よくわかっていない感じです。来秋の保険証廃止を強行することは内閣支持率低下にもつながっている。それでも、延期を決断できず、河野大臣に押し切られている。河野大臣の暴走は岸田首相の責任です。
──厚労省の中には、河野大臣のやり方に不満もあると聞きます。
厚労省はマイナ保険証への一本化は容易でないと考えていたふしがあります。だから、オンラインシステムも健康保険証(被保険者番号)でも資格確認できるようにしていたし、一本化は何年も先の話だと思っていたはずです。ところが、昨年10月に突然、24年秋の保険証廃止方針が示され、うまく乗せられてしまった。
──デジタル庁が主導しています。
首相直属のデジタル庁が推進することで、現場の声が届かず、暴走につながっている面があります。厚労省主導なら、保団連の指摘も真摯に受け止め、丁寧に進めていたかもしれません。長年、医療行政の実務を担い、現場を知っているからです。
──今年度補正予算には「マイナ保険証の利用促進・環境整備」に887億円、マイナカードの取得環境整備等に899億円が盛り込まれています。マイナ保険証の利用率が上がった医療機関に対する支援金や広報に力を入れるようです。
お金をバラまけば、利用すると勘違いしている。国民はバカにされています。CMなども大量に流すのでしょうが、そんなことで不安が解消し、利用が進むはずがない。
……
──国民と番号のひも付けにしくじりながら政府はマイナンバーの利用拡大に躍起です。
利用拡大すればするほど新たなひも付け誤りが続出するのは避けられません。
──具体的には?
これから約80の免許や国家資格へのひも付けが始まります。しかし、住所が取得時のままのものや、そもそも住所登録が不要な免許や資格も多々あります。ひも付け誤りが多発するのは目に見えています。
──他にはありますか。
固定資産の所有者把握にもマイナンバーを使う計画だが、間違いは必ず起きる。例えば、大阪市内の建物所有者は大阪市民とは限らない。本人からマイナンバーの届け出がなければ、大阪市の職員は氏名・住所をもとに、住基ネットで1億2000万人の中から探し出し、ひも付けなければならない。もちろん死者名義のままのものもある。簡単な作業ではありません。
──政府は健康保険証を来年12月2日に廃止し、新規発行を停止することを決めました。最長1年の猶予期間があるとはいえ、どんな事態になりますか。
現在はマイナ保険証の利用率は4.3%にとどまっています。使う機会が少なく、トラブルにも出くわさない。保険証が廃止されれば、多くの患者はトラブルを経験することになる。それがいやでマイナ保険証の登録を解除し、資格確認書の発行を求めれば、健保組合や会社の総務などにしわ寄せがいくでしょう。保険証存続を求める声が高まっていくはずです。
──保険証廃止は全国民に関係のある身近な問題です。
岸田政権の「上からのデジタル化」がうまくいかないのは明らかです。これは世論の力で止めるしかない。そういう流れになっていくと思います。あきらめてはならないのです。
驚きあきれるのは、上にもありますが、河野大臣の「イデオロギー発言」です。東西冷戦が終わって30年余り、河野大臣などは間もなく61歳になるような年齢(若輩)で、そんな物言いをする(できる)世代でもないでしょうに、これは健康保険証廃止に反対を唱える人たちを「アカ」呼ばわりするのと、手法的に大差ないレッテル貼りのように思います。小生に言わせれば、実務的具体的な疑問に「丁寧に(逐一)」答えられない河野大臣の方がよほど「イデオロギー的」でしょう。
昨日の羽田空港の事故は詳しい調査を待たなければなりませんが、何かひとつ、あるいは誰か一人でも機先を制していれば、事故を回避できたかもしれないなどと想像してしまいます。無理にこれと類比するとすれば、マイナ問題もこのまま進めば「惨事」が待っているかも知れませんが、回避する時間はまだあるはずです。
時間があれば、以下もご覧ください。やはり河野大臣はこの件の適任者ではないと思います。
マイナ保険証実は利用率が2%台なのを4%台と誇大広告してたみたいです - YouTube