ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「リフレ」じゃなけりゃ何なの?

 清水有高さんの「一月万冊」。毎日ではないけれど、おもしろく拝見しています。以前は清水さんとゲストのトーク中心でしたが、知らないあいだに、ゲストだった佐藤章さんや本間龍さんらが単独で話すかたちも追加され、全体としてすっかりバージョンアップした感じです。昨日は安富歩さんとのトーク版が更新されていましたが、そこで話題にされていたネタに、んっ!?と思いました。
https://www.youtube.com/watch?v=aahoaPuZ8KQ

 我ながら感度が低かったのですが、先週の9月23日、片山財務大臣はテレビ番組内で「(高市)総理はリフレ論者じゃない」と強調し、続く25日、城内成長戦略大臣が閣議後の会見で「アベノミクス的なリフレ政策は終わっている」と発言していたようで、その真偽(真意)もありますが、これらが何を意味するかについて少々。
「アベノミクス的リフレ政策は終わっている」 城内成長戦略相が明言 [高市早苗首相 自民党総裁]:朝日新聞

 これはもちろん、米国のベッセント財務長官からの、「リフレやめろ」圧力を受けてのものでしょうから、米国の、というかトランプのご機嫌取りでしょうけれど、総理就任以後「睡眠時間0~3時間」発言や、中傷動画作成者に「私も秘書も面識がない」発言などなど、高市首相には軽挙妄動の嘘っぱちがあまりにも多いので、今度もまたその中に紛れさせようと(軽く)考えているかもしれません。でも、清水さんが言っているとおり、これは「字義」通りならけっこう重大な「変更」でしょう。清水さんは「キャラ変」と言ってましたが、この類の表現では問題が軽くなってしまってよくないと思います。
 もちろん高市本人からしたら、「キャラ変」くらいの重みくらいしかないのかもしれませんが、でも、これは大げさに言えば、自我の揺らぎや「アイデンティティー・クライシス」を引き起こしてもおかしくないレベルです。たとえば、共産党は政党名を変えた方が支持者が増えるのではないかとずーっと言われてきたはずですが、かたくなに変えません。もし変えてしまったら、多くが拠り所を失い「クライシス」に襲われるでしょう。あるいは、昔社会党の村山富市さんが自社さ連立政権の首相に就いて、所信表明で「自衛隊は合憲」と言った瞬間、国会の議場内は拍手とどよめきが入り混じって騒然となりました。それまでの社会党からしたらありえない発言だったからです。「自称=自己評価」と「他称=他己評価」がある程度一致すれば「アイデンティティー」は安定しますが、ズレたままにしておくと動揺し、場合によっては深刻な精神的な危機に陥るという話です。でも、日頃から虚勢をはってズレが常態化している輩には、「深刻な精神的危機」など起こりようがなく、まったく関係がないのかもしれません。

 そもそも首相は去年の所信表明演説で「責任ある積極財政」を宣言して以来(いや、その前からですが)、「緊縮」とは対極の(放漫)財政政策を続けてきましたし、日銀にも利上げを阻止するべく「リフレ派」に分類される人物を送り込んできました。やってることは正真正銘、完全な「リフレ政策」でしょう。これで私は「リフレ派」じゃないの、というのは、良く言っても「転向(転身)」、そうでなければ「裏切り」に等しい感じです(あくまでも「字義通り」に動けば、ですが)。

 「リフレ論者じゃない」との発言の真意を、市場がどう受け止めるかが大問題ですが、「口先介入」程度の効果はあっても、「積極財政」の看板を下ろさなければ、円安や長期金利の上昇が止まる見込みはないでしょう。日刊ゲンダイの記事にはこうあります。
経済閣僚から相次ぐ「高市総理はリフレじゃない!」の無責任…にじむのは露骨な米国への配慮|日刊ゲンダイDIGITAL

■甚だしい無責任
 誤解されているかのような口ぶりからは他責思考がにじむ。しかし、高市政権は日銀審議委員にリフレ派とされる2人を送り込み、金融緩和の出口戦略そっちのけで日銀に国債買い入れを要請してきた。これで「誤解してくれるな」とは無責任も甚だしい。
 それにしても、なぜこのタイミングで 経済閣僚から「リフレ打ち消し」が相次いでいるのか。
「先の日米首脳会談でトランプ大統領から高市首相に円安への懸念が伝えられ、その前にはベッセント米財務長官から『リフレやめよ』とクギを刺されました。水面下では日米当局者が丁々発止で議論しているようですが、市場に対して日米の協調体制を強くアピールせざるを得ないのがホンネでしょう。11月の中間選挙に向け、トランプ政権が過度な円安・ドル高にナーバスになっていることへの配慮とも受け取れます」(金融ジャーナリスト・森岡英樹氏)
 ただ、いくら「リフレではない」と糊塗したところで、サナエノミクスが仮面をかぶったリフレ政策であることに変わりはない。違うのであれば、欧米並みの積極的な利上げに踏み切れるはず。そうして金利差を埋め、円安に「待った」をかけ、庶民を苦しめるインフレを解消すればいい。
 高市首相は経済オンチな政策を見直すどころか、コトここに至って小手先のゴマカシ。市場に「私はリフレじゃない」は通用しない。

(2ページ目)消えないアベノミクスの亡霊…城内実経財相が強弁「リフレ政策終了」は単なる言い逃れ|日刊ゲンダイDIGITAL
……「城内大臣の発言は言い逃れに過ぎません。何を言おうと、高市政権の金融・ 財政政策の本質がインフレ促進かつ円安ホクホクであることに変わりはないからです。アベノミクスとは金利環境が違うという一点だけをもって、『リフレではない』と主張するのは無理があります。米国からリフレ政策の再考を迫られたから打ち消しているのでしょうが、根本的な政策修正を図ったわけではありません。リフレではないと言うのなら、2%の物価目標を超えるインフレが4年も続いているのに、なぜデフレ脱却を宣言しないのでしょうか」(経済評論家・斎藤満氏)

■再び1ドル160円突破も
 いくら城内大臣が言い繕ったところで、市場は「責任ある積極財政」に歴史的な円安・債券安で応じているのが事実。為替相場は1ドル=158円台の円安水準に張り付き、25日の債券市場では長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが一時、3.115%に上昇(価格は下落)した。
「円安とインフレの修正を求める米国の『宿題』に、高市政権が出した答えは言い逃れなので、これでは市場も変わりようがない。欧米が利上げを急ぐ中、日銀だけが後手に回っています。金利差が意識され、再び1ドル=160円を突破するのも時間の問題でしょう」(斎藤満氏)

 他人に発言させて、旗を振ってきた自分は何も言わないというのも卑怯な話です。来週から国会がはじまることでもありますし、当然高市本人に質さなければなりません。もっとも、自分は自身を「リフレ派」と呼んだことは一度もない(キリッ!)とか(←いかにも言いそうですよねぇ)、話を矮小化して言い逃れをし、じゃあ何をもって「リフレ」というのかと、中身を説明する段になったら、他人に説明させちゃう。で、質問者が、いや、総理に聞いてます、総理に聞いてます、って言っても、予算委員長は絶対に高市に答えさせない、とか――何かもう想像ができますよね(深い嘆息)。

 追記しますが、万一、リフレ政策をやめて、利上げを容認となれば、清水さんが言っているように、国債の利払いは増えるし、住宅ローンを抱えている人はもちろん困るし、企業も借入の利息が跳ね上がって収益を圧迫されるでしょう。連鎖して勤労者の賃金に響くのは不可避です。他方、リフレ政策を続ければ、イラン情勢等にもよりますが、円安は一段と進んで、物価高は止まらないでしょう。どっちにしろ、庶民には難儀な話です。
 こうした厳しく難しい状況におかれている今の日本。周囲の必ずしも友好とはいえない国々と丁々発止、何とか付き合いながら、国民をまとめていかなければならないのに、支持者の歓心をひけばOKの宣伝工作を続け、国民が分断されようが何とも思わず、おまけに軽挙妄動――最初にこの人を選んだのは自民党ですけど、選挙で大勝ちさせたのは国民総体。こんな難局で国のかじ取りを委ねるべき指導者かどうか、もっと多くの人が考えないといけないと思います。

※以下もご参照ください。
高市首相はリフレ派ではなかった?トランプ大統領も円安を問題視、高市政権が直面する路線転換の圧力 【前編】円買い介入は年間27兆円、日銀は1.25%へ利上げ、それでも止まらない円安と米国からの圧力(1/5) | JBpress (ジェイビープレス)
「リフレの女王」はその看板を下ろせるか、円安と金利上昇が迫る「責任ある積極財政」の厳しい現実 【後編】食料品の消費税減税だけで年5兆円、膨らむ国債費と利払い費、高市政権を待つ年末予算の難路(1/5) | JBpress (ジェイビープレス)



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「野党」のない国で

 中道改革連合が結局空中分解して、公明党系は元の鞘に戻り、立憲民主党系は元に戻るに戻れず、「民主改革の会」とその他に分かれ、後始末のために清算人一人だけは残って、政党交付金の残額11億7,000万円を受け取る――これを嘆きと怒りをもって見ている国民は相当数と思われます。「人のうわさも75日」は自民党が得意としてきたところですが、同じ手を使って、国民に都合よく忘れてもらおうと思っても、それは困難と言わざるを得ません。

 昨日のブログでは、米重さんの言う「高市首相の『自信』の現れ」論をやや否定したかたちになりましたが、実は米重さんの指摘には当たっている面が多分にあって、野党が勢力結集に失敗し、多弱な野党がさらに弱体化している有様では、高市首相が自民党さえ押さえておけば、何をやっても大丈夫だろうと高を括るのは、また当然と思えます。

 好き勝手な高市内閣にブレーキをかけるかたまりが存在しない――つまり「野党」がない状態を危惧する声は、(身内の!)自民党支持者のあいだからも上がっているようです。「一月万冊」の澤田晃宏さんは、朝日新聞の世論調査を受けて、こう言っています。朝日新聞のweb記事が肝心の部分が有料で見られないので、引用します。
https://www.youtube.com/watch?v=zic5UYISD7k

……朝日新聞が9月26・27日に世論調査をしておるんですが、野党がないという、この「日本の絶望」が数字でパキッと出てきたので、冒頭にご紹介したいと思うのですが、自民党以外に(自民党に)対抗できる政党が必要だ。これ、かみ砕いて言うと、「野党」が必要だってことなんですが、朝日新聞の世論調査によると、84%の人が自民党に対抗できる強い野党というのを渇望しておってですね、数字の中身を見ていくと、ちょっとびっくりですけど、支持政党を持たない、自民党支持ではない無党派層に至っては、83%の人が、自民党にきちんと対抗できる政党が必要だと思ってる、そこまではわかると思うんですけど、……自民党支持者の中で、自民党に対抗できる政党が必要だと思っている人の割合がですね、……78%と。これ異常事態だと思うんですよね。高市政権が誕生して、これちょっと強硬保守の色合いが強すぎると、自民党の中の穏健保守と呼ばれている人たちの中に、高市さん、ちょっとこのまま「暴走」したらヤバいんじゃないかということで、健全な緊張感が必要だと。自民党支持者の中で聞いても、「野党」が必要だという人が8割もいるということなんですよ。……

 澤田さんも言ってますが、自民党に対抗できる政党が必要だと答えている人が84%いて、その「目の前に自民党の対抗馬」として「民主改革の会」が現れても、70%の人は「そんなもんに期待していない」と答えているわけです。それでは、別に「野党」としてかたまりになる政党はあるのか、と言ったら、はなはだ心もとない。というか、現状では、それは「ない」と言うしかない。

 別の「一月万冊」で、ジャーナリストの今井一さんはこう言っています。
https://www.youtube.com/watch?v=kTkr0iVGNJc〈25分40秒過ぎあたりから〉

 今井 ……反高市の勢力で、旧民主党系の人たちがあの体たらくだし、れいわ(新撰組)もあんなふうになっちゃったし、共産党もなかなか急上昇はしないし、だったら、政党や議員の皆さんに託して、あんたたち頑張ってくださいって言ってる段階ではないと思うな。やっぱり一人ひとり、主権者国民がやれることをやっていかないとダメだと思います。やれることはいっぱいあるんですよね。もちろんポストで高市批判いろいろと投稿するのもいいんだけど、もっとやれることいっぱいあると思う。たとえば、自民党本部に電話するとかね。ファックス流すとかね。いろいろやれることをやったほうがいいと思いますね。
 北欧なんか行くとね、政府とか行政の長がおかしなことをすると、次の日は市役所にあふれんばかりのファックスが来るとかね。それからメディアに対しても、忖度や斟酌する報道ばっかりしてたら、すかさず編集局に電話がかかってくる。皆さん、意外かもしれませんけど、大手の新聞社に対して、みんな読者80万とか100万とか抱えているじゃないですか。200万部の読者を抱えている新聞社が、抗議の電話とかお褒めの電話を毎日何百件ももらっているかといったら、全然もらってませんから。せいぜい一日に一件か二件あるかないかです。それくらい日本人って働きかけがない。
 僕ね、昔、日本経済新聞の編集局でアルバイトしてたんですよ。そのとき言われたのは、たまに電話かかってくるんです。あるいは手紙も来るんですよ。僕は流通経済部ってところでアルバイトしてたんですけど、そしたら、そのときデスクに言われたのは、「今井君さあ、電話が一本来たら、100人の人がそう思ってる。そんなふうに不愉快に思ってるとか、不信に思ってると。そう受けとめないといけないんだよ」「この人、一人じゃないよ。一本電話があったら、最低でも100人、10本あったら1,000人」。手紙は(1通で)1,000人って言われてたの。当時インターネットなんかないから、時々手紙を送ってくれる人もいて、「貴紙を拝読いたしました。こんなふうに書かれてましたけど、これはおかしいんじゃないですか。これは事実ではないんじゃないですか。たとえ事実であっても、こういう言い回しはよくないんじゃないですか」って。電話は(ある意味)簡単だけど、手紙にわざわざ書いてきたら、それは相当数の人が同じようなことを考えていると思って対応しないといけないと言われたんですよ。
 僕ね、AERAの「現代の肖像」って創刊
(1988年)から続く企画を担当してきたけど、当時25万部か30万部くらい発売部数があって(現在は約4万7,000/実売約2万7,000)、読者からどんな反応があったかというとね、電話とか手紙でよかった、ファックスでよかったという人ね、3人か4人しかいません。あるいは、けなす人もね。3人ほめる人がいたらね、編集部はもう大喜びです。それくらいメディアって視聴者とか読者の反応に敏感なんですよ。だから、威力業務妨害みたいなことをする必要はないから、いい報道があったら褒める、いい番組、いいニュースがあったら、ちゃんと褒める、「今日の報道はよかった。高市の問題をきっちり突いていた」と。一方で、それ、どう考えても忖度・斟酌やろ、と思うことがあったら、きちんと批判するということを、我々一人ひとりがやっていかないと。政党に高市の独走を止めろって言っても、現状では、野党にその力はないと思う。……

 政党や議員、TV局や新聞社に電話や手紙っていうのも初めてやるとハードルが高そうですが、でも振り返ってみれば、初めてデモに参加して公道を歩いた時もそうでした。一方、社会に向けて何かを発信している人や機関が、世間の反応を気にするのも確かでしょう。アクセス数とか「いいね!」の数とか、(小生を含め)それで商売をしているわけじゃない人でも見てしまいます。

 魯迅は(というか、日本の人には、竹内好さんが、と言うべきかもしれません)「絶望が虚妄であるのは、まさに希望と同じだ」と書きました。この程度で「絶望」などと言っていたら、笑われてしまいそうです。 




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「地味」な内閣改造は「自信」の現れか

 今月半ばの内閣改造について、おもしろい視点の記事を目にしました。JⅩ通信社代表で、TVの選挙報道などでもおなじみの米重克洋さんは、主要閣僚をそのまま留任させ、斬新さを欠く今回の内閣改造の「地味」さは、高市首相の「自信」の現れではないかと言っています。9月24日付の記事からの引用です。
「内閣の顔は私だけ」:改造の「地味さ」は自信の表れ | nippon.com

……今回の閣僚人事について、政治を取材する多くの知人が「地味な人事」と口にする。高市内閣の支持率は、政権発足1年近く経過してもなお比較的高水準を維持している。過去の内閣のように、低落傾向の支持率をテコ入れするための「刷新感」を(ママ)演出は必要ない。したがって顔ぶれの地味さこそ「自信」の現れと見ることができる。
 前の石破茂政権では、コメの価格が高騰していた局面において江藤拓農林水産大臣(当時)の発言が問題視され、更迭に追い込まれた。その際、石破氏は小泉進次郎氏を後任の農水相に起用し、刷新感を打ち出そうとした。小泉氏は備蓄米の放出など思い切った政策手段を講じて連日コメ価格引き下げの先頭に立ち、内閣支持率はFNN・産経新聞調査で前月比5ポイント回復するなどの効果があった。参院選前の重要なタイミングだったため、石破氏としては人事を通じて支持率のテコ入れを図る必要があった。
 だが、今の高市政権には同様のニーズはない。そのためか、若手のホープを大抜擢したり、女性閣僚を多数登用したりといった「見せる人事」をしていない。高市内閣の顔はどこまでいっても「私自身」という自信の現れでもあろう。
 また、来年9月の自民党総裁選を見据えて、ライバルになり得る林芳正総務相を閣内に残さなかったことでも、自負が見て取れる。首相とは政策思想を異にする林氏が在野で自らの支持基盤を強化していけば、高市首相の無投票再選の可能性は低くなり、「高市VS.林」の構図が現実味を帯びてくる。それでも高市氏は十分に勝てると考えているようだ。
 今回の改造では、いわゆる裏金問題(派閥パーティー券をめぐる政治資金収支報告書の不記載)の当事者であった議員が、問題発覚後初めて入閣した。政治とカネの問題は、2024年の衆院選で自民党が単独過半数割れし大敗を喫するに至った大きな不信の源だった。最近も福岡県議会で不祥事が相次ぐなど、自民党政権と政治とカネの問題は改めて注目されやすい素地がある。にもかかわらず、政策を推進するには選挙の洗礼を受けた議員を登用していくとの説明で乗り切れる、という強気の人選だ。
……

 「強気」というのは、たとえば、制限速度40㌔の道路を100㌔のスピードで驀進する車の運転手がいたとして、「怖いからスピードを落としてよ、事故を起こしたら大変だし、警察に捕まるかもしれないよ」と心配する助手席の人に、「大丈夫、大丈夫、自分は今まで事故を起こしたことはないし、捕まったこともないから」などと虚勢をはる類の「強気」でしょう。これを本人が信念や「座右の銘」としているかどうは知りませんが、経歴詐称もどきで名を上げて以来、数々の誤りを正さないまま還暦を過ぎてしまった人物ならでは、とも思えます。

 それに、最初からこうした人事をするつもりだったら、「強気」という評価でいいかもしれませんが、少なくとも7月の段階では、財務大臣や党の幹事長は、別の人にやらせるつもりだったでしょう。どう見ても「御大」と相談して、自身の腹案の「旗色」が悪くなってから方針転換をしたわけですから、内閣の顔は「自分自身」であることを自負しているにしても、これを「強気の人選」とか「自信が垣間見える人事」と呼べるかどうか、疑問なしとしません。

 問題は、米重さんも言及している農水大臣です。簗氏は裏金議員の先陣を切って閣僚入りするわけで、首相がこのポストに彼を入れてきた意図は何か。簗氏は比例復活組。5年前には、LGBTに関する法案を議論した際、「生物学的に自然に備わっている『種の保存』に抗ってやっている」などと発言し、批判されたこともあります。そのせいかどうかわかりませんが、最近の選挙では、自身もそうだし、自身が応援する地元の選挙でも、対立候補に勝てていません。首相に政治的立場が近い人物だけに、多分に「論功行賞」的ですが、農水大臣ポストを選挙の一助くらいには考えている可能性もあります。

 でも、農政は今大変な局面にあります。地元の千葉県でいえば、ほとんど雨ばかりだった9月、実っているのに刈り取りができないまま、水没し、倒れてしまった稲の収穫を断念する農家も相次いでいます。印旛沼の堤防決壊のニュースは衝撃的でしたが、水田の惨状は想像できると思います。コメの価格も暴落している中、コメ農家は非常に厳しい状況に立たされています。米国産の生ジャガイモの輸入解禁も問題含みで、生産農家にとっては取り返しのつかない打撃を被る恐れ大です。つまりは、農水相は継続と刷新の両方が問われる重要ポストになっています。財務相や外務相は国政の「骨格」かもしれませんが、その理屈で言うならば、農政担当だって現状留任でよかったのではないかと思います(鈴木前大臣が最適だとは思っていませんが)。

 抜擢と言えば、国対委員長に村井英樹氏を当てたのが「斬新」と言えなくもありませんが、早速首相がなるべく委員会に出ないで(答弁しないで)済むように画策しています。民間のシンクタンクの提言などと、さも「中立」を装っていますが、自民党の元議員が所長を務めているわけで、ほぼ「自作自演」、これをいち早くⅩで公に発信するのは、首相の歓心を買いたいだけでしょう。
国会答弁が嫌いで逃げて逃げて逃げて来た高市早苗首相が、自民党国対委員長に「首相の委員会出席は原則不要」を掲げる村井英樹氏を大抜擢し、ますます国会から逃げる気満々だ。 - Everyone says I love you !
シンクタンク、首相の国会出席「原則不要」 自民村井氏がX投稿 | 毎日新聞

 首相も本当に「自信」があるのなら、国会に出て疑問や反対意見には順序だてて説明・反論すればいいだけの話です。それが総理大臣の仕事ですから。首相が自身の「自由(裁量の)時間」を増やして、できるだけ国会に出ないようにし、官邸に引きこもって、何をしようというのか?
――単に爆睡したいだけなんじゃ(笑)。





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