スペイン戦勝利を祝う首相と政府
今朝のテレビはスペイン戦勝利の話題一色ですね。大方は、二匹目のドジョウを期待しつつも、スペインに勝つところまではなかなか想像できなかったので、朝起きて結果を知って「ええっ!?」と思った人は多かったでしょう。小生はたまたま中継をテレビで見ていましたが、後半の決勝ゴールで、三笘選手がボールを拾ったあのシーンは、写真を見る限り、エンドラインに1センチかほんの数ミリかかっていたくらいで、多くの人はラインを割ったと思ったでしょう。勝負事には、いろいろなことが起こるものだと思います。
政府関係者の中にも喜んでいる人はいるのでしょうが、岸田首相などは、「よし、よし」と思い、これにあやかりたいと考える最たる一人のようです。わざわざ監督の森保さんに祝福の電話を入れたというのですが、まだ1次リーグ突破が決まった段階です。誰かに倣って人気取りをしていると、ますます底の浅さが露呈されないか(「決勝リーグ」などという文言が見えます)。それに、首相として国民を代表する気持ちがあるなら、政治資金の管理が出来ない大臣ほか政府高官(自身も含む)や、差別主義の妄想に取り憑かれてまき散らした数々の暴言を撤回・謝罪する気のない政務官なんぞを守ってないで、早々に役職から外す決断をし、もっと本務である国政で、そして国会の場で、その責を果たしてほしいものです。
岸田文雄 on Twitter: "森保一監督と田嶋幸三JFA会長に、直接電話をしました。日本国民に勇気と元気をもらいましたと感謝と祝意を伝えました。改めてW杯リーグ突破おめでとうございます。決勝リーグも期待しています。がんばれ日本! #サッカー日本代表 https://t.co/jFpvLnPajG" / Twitter
首相、杉田政務官の更迭拒否 「能力持った人物」と反論 | 共同通信
日本の政府関係者は、ある意味、つくづく「恵まれて」いると思います。経済力に見合った国際的な責任を果たすべき政治リーダーが現れることもなく、人権感覚を欠いた要人ばかりを次々に輩出して、外国の顰蹙を買っても、今回のW杯のように観戦した日本人がスタジアムのゴミ拾いをして、悪評の尻拭いをしてくれる。コロナ対策や経済政策などで、(ゴミ拾いのように)世界のお手本となるようなことはしないし、できないのに、サッカーの代表選手は強国2国を負かして、その潜在能力を発揮し、「日本、すごいじゃないか」と世界を注目させる。事情に通じた外国人たちは、何でこうした国民(の多く)が、あんな政府に文句を言わず、我慢しているのかと、不思議に思うでしょう。
今、戦後の日本の安全保障政策が大きく変わろうとしています。防衛予算は大幅に増額される見通しで、その上、自民党が主張する(危機と認識した場合)相手のミサイル発射拠点などを叩く基地攻撃能力の保有を公明党が了承し、今日、自民・公明の与党合意が成立するといいます。
反撃能力保有 きょう合意へ 自民・公明の実務者協議で | TBS NEWS DIG (1ページ)
相手の基地に対する攻撃能力を「反撃能力」などと称し、本質をぼかしていますが、相手から攻撃される前に、「危機が差し迫っている」と言って、こちらから攻撃するのもありだというのですから、これは「機先(先制)攻撃能力」でしょう。攻撃された事実がなくても相手を攻撃するのですから、「専守防衛」でもありません。「安保法制」から6年にして、日本は自ら戦争を始める体制へ移行しようとしています。
3年前の12月4日にアフガニスタンで銃撃されて亡くなった中村哲さんは、憲法9条を持つ日本の平和的なイメージに何度も助けられてきたと言っていましたが、そのイメージが今後変えられていくことになるのでしょうか。
しかし、メディアはサッカーの報道に忙しく、全体として、「機先(先制)攻撃」をこれとは逆の「反撃」と言いくるめる政府に追随し、その広報役に甘んじているのは否定できません。12月8日が近づいてきたこともあり、サッカーの熱狂報道を見ていると、これが80年前の開戦の「熱狂」と重なるとは言いませんが(実際、見ていないので)、しかし、書かれたもの、記録されたものを見る限り、やはりその不安は拭えません。
メディアも国民も、試合後にスタジアムのゴミ拾いをして自国民が賞賛されたことで満足していてはいけないと思います。
そしてまた、このお祭りは、4年前にお祭りを開催した国が、現在進行形で隣国と戦争をしている最中にやっているという事実も、折に触れて思い起こさないといけないのでしょう。
<追記>いつもお読みいただきありがとうございます。事情があって、今後更新が滞るかもしれません。ご承知おきください。
杉田水脈氏の「不適材不適所」改めて…
昨日参院予算委で塩村文夏議員が杉田水脈・総務大臣政務官に過去の「発言」について質問している様子をテレビで見ました。杉田氏の過去の発言を網羅的に取り上げていましたが、常軌を逸したひどさですね。特に、これは知らなかったから余計に驚き、嫌悪しましたが、2016年、スイスで開かれた国連女性差別撤廃委員会に参加したときの杉田氏のブログには信じられない文言があります。
秋葉大臣問題と杉田政務官の“過激発言” 追及強める野党
杉田水脈政務官、かみ合わない答弁繰り返す 過去の差別発言問われ [岸田政権] [自民]:朝日新聞デジタル
「発言」自体、公的立場の有る無しに関係なく、感覚を疑うものですが、その言い訳が「4年も前(の話)」とか、「当時は一般人だった」とか、「今は内閣の一員だから」とか、「今の自分とは別の人格がしたことだから責任はない」という「理屈」で片付けられるものなのか。
これは「記憶が甦った」発言ですっかり有名になった山際前大臣の「言い訳」を超えていると思います。少なくとも、山際氏の場合は、記憶は失われても、人格は過去も現在も維持されているようでしたから。それでも、そんな記憶力で大臣が務まるのか、病院で診てもらった方がいいんじゃないかと批判を浴び、揶揄もされたわけで、杉田氏もまた病院で診てもらうのが適当かも知れません。もっとも、病院からは、いくら「議員特権」でも、コロナ患者の急増で今それどころじゃないです、と断られそうですが。
昨日は東京地裁で、同性婚を認めない現行制度は「違憲状態」にあるという判決もありました。
同性婚認める法制度ないのは「違憲状態」 東京地裁判決 | 毎日新聞
まだ高裁、場合によっては最高裁へと進む可能性もあるので、現段階では何とも言えませんが、この件に限らず、個人の尊厳を求める声は世界のうねりであり、法制度にも行政にもそれを反映させることが求められています。しかるに、「男女平等は、絶対に実現し得ない、反道徳の妄想です」(国会本会議の壇上発言)ほか、信じられない「妄想」を披露し、ほぼ撤回・謝罪もしない人物を、わざわざ政務官にし、その任命理由を問われて「適材適所」と答えるのですから、ここまで来るとこれは岸田首相本人の進退問題ではないかと思います。
ついでに言えば、杉田氏にこのまま政務官を務めさせることは国の品格にかかわることで、この国会質疑の記事にメディアが「女性議員同士のバトル」などと、見せ物的、傍観的、冷笑的なタイトルをつけることには不快な感じがします。議員の質問の背後には、小生も含め、多くの人たちがいるのですから。
厚労省「キャリア」の中途採用
昨日コロナ・ワクチン接種と死亡者増の因果関係をめぐる国会議員の勉強会のことに触れましたが、会に呼ばれ、時に罵声を浴びていた厚労省の官僚が、権限を有する立場の人でなく、「上司」から「行け」と言われて無理やり駆り出された若手職員のように見えて、気にかかりました。
今日、新聞記事を見ていたら、厚労省が若手・中堅の離職者が相次ぐ中、初めて「キャリア」中途採用を実施する旨の記事を見ました。同じことは、すでに財務省や経産省でも行われているということですが、上のような若い官僚たちの姿を見ると、やっぱり、というか、むべなるかなと思います。これは国政の屋台骨を支えるべき人材がいなくなるという深刻な事態です。
厚労省初、「キャリア」中途採用を実施 若手・中堅の離職相次ぎ | 毎日新聞
厚労省が「キャリア」中途採用 離職者が相次ぎ:東京新聞 TOKYO Web
しかし、この中途採用が将来の幹部候補の採用(形式的組織防衛)が目的で、組織の体質や仕事内容の抜本的見直しに目を向けないとしたら、事態は悪化していくばかりでしょう。官僚の仕事は政策の立案だといいながら、実際は、政治家の見苦しい国会答弁の作文や、世間からの苦情への対処術ばかりで、本務らしいことにほとんど関わることなく、連日「午前様」という状況だったら、優秀な人材が集まるとはとても思えません。幹部候補の人員補充さえできればいいとなったら、ますます資質の疑わしい人たちばかりになって、悪貨が良貨を駆逐するような事態になるのでは、と思えます。
今年の5月17日付「NHK 政治マガジン」の記事が霞ヶ関の官僚たちの現状を取り上げています。
24時間働けません! 若手官僚8人が探った霞が関の実態 | NHK政治マガジン
令和でも24時間戦えますか?
「時間無制限で仕事ができる人が評価される」
「床では寝られない」
「絶望」の原因のもう1つ「長時間勤務」には生々しい証言が並ぶ。
特に出産や育児といったライフステージとタイミングが重なる女性からは深刻な訴えが目立った。
「妊娠中にもかかわらず睡眠時間は3、4時間。母胎への危機を感じた」
「『24時間戦士』が前提の組織で、出産や育児でそうはなれなくなり、自分は必要とされていないと感じた」
内閣人事局が令和2年秋時点の国家公務員およそ5万人の働き方を調べたところ、20代のキャリア官僚のおよそ3割が「過労死ライン」とされる月80時間を超える残業をしていた。
メンバーで内閣人事局の谷口健二郎さんも法律の改正を担当していた際、半年にわたり月300時間を超える残業が続いたという。週末の出勤に加え、平日でも帰宅できるのは2日だけ。残り3日は明け方に自腹で新橋のサウナに行き、体を休めて再び出勤していた。過酷な実態を振り返る。
内閣人事局の谷口健二郎さん
「20代はそれでも駆け抜けられたが、30代は違う生活を送りたいと辞めた同僚もいた」
なぜ長時間勤務が発生するのか。
慢性的な人手不足に伴う業務の増加に加え、「国会対応」が一因になっている。総理大臣や閣僚が国会で行う答弁案は、質問に関係する省庁の官僚が作成を担当する。質問する国会議員からあらかじめ内容を聞き取る「質問取り」という作業を行い、答弁作成を担当する部署に割り振る。
すべての質問が出そろった時刻は前日の午後6時46分
質問の通告は与野党の申し合わせで「質疑の2日前の正午まで」だが、内閣人事局の調査では、令和2年の臨時国会ですべての質問が出そろった時刻は、全省庁平均で前日の午後6時46分。午後8時以降のケースは36%に上った。「レク」と呼ばれる国会議員への政策などの説明も対面が前提で、その結果いつでも対応できる「24時間戦士」が求められ、従来の人手不足もあって仕事と家庭の両立ができないとの声が多く聞かれたという。
谷口さんは「男性の比率が高く、家庭のことは奥さんに任せきりでひたすら仕事を続けるという幻想がいまだに残っている。24時間対応できることが大事で、効率よく働いているかは評価対象になっていない」と実感を口にする。
辞めたいと思っても周りの職員に恵まれれば、気を取り直すことも過去にはあったかも知れませんが、配置転換が早くて人間関係が深まる前に次々と部署が替わってしまっては、それも難しいでしょう。
悪辣で能力不足な大臣や政務官の秘書みたいな仕事から早く解放してあげられないものかと思いますが、そのためには、ある程度自分の力で答弁できる資質のある人が大臣にならなければならないし、任命する側にもそういう資質がなければならないし……という普通の組織体だったら当然のことが、そうなっていないという(国会で、事前通告がない質問には答えられません、などと、大臣や政務官が堂々と言う国が他にあるんでしょうか?)。
結局これもそういう政治家を選べない我々総体の問題ということでしょうか。
<追記>昨晩都立大学のキャンパスで起こった傷害事件の被害者について、確かNHKは最初「大学の職員」と報じていましたが、社会学者の宮台真司さんであることを知って驚きました。こんなことは絶対許してはいけません。宮台さんの回復を祈ります。