ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

マイナカードの人権侵害

 政府が今月、2024年秋に健康保険証とマイナンバーカードを一本化させ、健康保険証を廃止すると発表したため、マイナンバーカードは事実上義務化されたという話になっていますが、かなり大きな問題を含んでいると思います。ネットで集めた情報だけ見ても、こんなに粗い施策で大丈夫なのかと感じます。正気の沙汰とは思えないという専門家も少なくないのではないでしょうか。

 選択的夫婦別姓の裁判でも知られるIT会社・サイボウズの社長、青野慶久さんが2年前(2020年)の9月20日付のnoteでこう書いています。この2年で状況が変化したところもありますが、付記も加え、一部改略しながらの引用をお許しください。
いろいろおかしいマイナンバーカード|青野慶久@サイボウズ|note

 ……「マイナンバー」と「マイナンバーカード」は別物です。マイナンバーは国民の出席番号みたいなもので、ない方が不便だと思います。でも、それを使うために、新しくプラスチックのカードを全国民に発行して持たせる必要がありますか? しかも、発行や更新の手続きが複雑すぎませんか?
私の知識不足・勘違いもあるかもしれませんが、おかしいと思うところを列挙してみます。これを機に議論が活性化することを期待しています。

・そもそもマイナンバーカードの目的がよくわからない。身分証明のためなら運転免許証や健康保険証でよくね?行政手続きのためなら普通にID発行してネットでやればよくね? そもそも何が問題なの?
・カードに書かれたマイナンバーが漏れるとまずいらしい。漏れるとまずいのに印刷するの? みんなで便利に使うための番号じゃないの?
・カードには、名前や住所や顔写真など他の個人情報もプリントされる。落としたら個人情報がダダ漏れ。デジタル化する気ある?
・だから、付属のビニールのカードケースを使って個人情報を目隠しする。仕様としておかしすぎない?誰かツッコんでくれなかったの?
・でも、そのカードケースだとQRコードが見えるので、読み込めばマイナンバーが漏れる。お、おい!
・費用がかかり過ぎ。もう一兆円くらい使ってない?
 → その後、8,800億円使っていることが明らかに。
 → さらに1兆8000億円の予算が...。誰も止められないデスマーチ
・一兆円を無駄にした住基ネットの失敗が活かされてない。学ぶ気ある?
マイナンバーシステムの管理項目が、住民記録システム(住民票)や戸籍システムとかぶっている。いい機会だから統合して効率化しようって話にならなかったの? それとも無駄が好きなの?
・ということは、日本の貴重なIT人材が、このおかしなシステムの開発に大量投入されている。日本のIT化の未来は暗い...
・4種類のパスワード(「利用者証明用パスワード」「署名用パスワード」「券面事項入力補助用パスワード」「個人番号カード用(住民基本台帳用)パスワード」)を目的に応じて使い分ける。それ、忘れる人が続出するよ。
マイナンバーカード利用者証明用パスワードを3回連続で間違えると、マイナンバーカードが使えなくなって、本人が自治体の窓口にわざわざ行って紙で手続きをする必要があるらしい。こわい。持ちたくねー!
・生体認証を使えない。やっぱり4種類のパスワードを覚えるしかないのかー。仕方ないからメモに書いてマイナンバーカードと一緒に持ち運ぶか...あれ?
……
・海外に転出したら返納。えっ、返す必要あるの?
・引っ越しをして住所記入欄が一杯になったら再発行。どんなデジタル?
マイナンバーは目的外で利用すると違法。ごめん、マイナンバーを活用して欲しいと思ってる?
マイナンバーカードに運転免許や健康保険証を集約しようとしている。返納や再発行が必要で目的外利用禁止のカードに集約するだと? 生活できなくなるぞ!
・有効期限は自分で手書き。もう意味不明。
自治体に業務の負荷をかけ過ぎ。発行・再発行だけでも大きな負荷。でもって、月数百万枚しか発行できないそうよ。自治体職員を殺す気?
 → そのくせ発行率が低い自治体に制裁を加えるらしい。そもそも自治体の窓口にめちゃくちゃ負担をかけといて何様なの?
・カードの電子証明書は5年に一度、更新しないといけない。全国民にこの作業をさせるの? 自治体の業務負荷は?
・そんなにマイナンバーカードを配りたかったら、中央で発行して郵送すればいいのに。それで法律上の問題があるのなら、法改正すればいいのに。あなたたちは立法権を持った国会議員ですよね? 国全体に無駄を増やしてどうする。仕事しよう。
……
追記(2022/10/10)
このnoteを書いてから2年が経過しました。投入される税金の額が加速しており、「負け戦から撤退できないから、加速度的にダメージが大きくなる」が現実のものとなってきました。
そして、ついに健康保険証を廃止する話も出てきました。
すでに広く普及している健康保険証を廃止し、普及していないマイナカードに置き換えるという壮大な無駄です。これは次世代の方々にとって大きな負債になるでしょう。大変申し訳ないです。
国家の個人認証インフラという目的で考えれば、健康保険証や運転免許証の延長で済んだ話です。一部のシステム会社や広告代理店、そして一部の政治家や官僚の利権や保身のために進められているのだと思います。

 冒頭のマイナンバーとマイナンバーカードが別物という指摘は重要です。マイナンバーは国が国民個々人に付けた番号です。カードがなくても番号は分かります(だいぶ前に全国民宛に「通知カード」が郵送されています)。小生にとっては、年1回、確定申告のときに必要になるだけです。では、そんな人間にまで、なぜカードを持たせたいのか。青野さんが書いているように、「そんなにマイナンバーカードを配りたかったら、中央で発行して郵送すればいいのに」というのは当然の疑問です。「通知カード」なんていう紛らわしい紙片ではなく、最初からマイナンバーカード自体を送ればよかったのです。ここがポイントです。政府にとっては、たぶん、どうしても個々の国民に申請させる必要があるのでしょう。人は自由に居所を変えます。役所からしたら、捕捉しきれないので、それを避けるには自ら申請する形にして、異動のたびに申請させるのがよい。しかし、問題はどうやらそんなレベルでは済まないようです。

 らんさんが10月19日付のTweetでこう解説しています。これも部分引用をお許しください。
https://twitter.com/ranranran_ran/status/1582572382228992000
マイナポータル利用規約 | マイナポータル

法的な位置づけとしてマイナンバーカードは
◉マイナポータルと言う【紐付けサイト】を利用する為の【ツール】なの。
つまりマイナンバーカードを持つという事は
◉マイナポータルを利用する【申込み】に等しいの
で…たぶん!皆が分かってないのは
◉【申込書と契約書】の法的違い

◉契約書は殆どの場合。双方(国と国民)に責任が乗じる。また。契約書の内容を変更する場合は双方が話し合って了解しなければ変更できない。
◉申込書は殆どの場合。別途定める規約書に記載さえしておけば。利用者(国民)に全損害を押し付けられる。規約書は【国が常に自由に】変更可能。
で…添付画像を見て欲しい。これはマイナポータルの【利用規約】の序文。

マイナポータル利用規約
 マイナポータル(以下「本システム」という。)が提供する各種サービスを利用された方は、下記の利用規約に同意したものとみなします。

(目的)
第1条 本利用規約は、デジタル庁が運営する本システムの利用に関し、システム利用者に同意していただくことが必要な事項を定めることを目的とします。

つまり。利用者たる【個々の国民の申込み】によってサービスが実行される形態を採用している。
故に…今後の規約変更は
◉国会を通さずに自由に変更できる
この恐ろしさが。貴方に分かる?

続きを見てみよう。第3条

(システム利用者の責任)
第3条 システム利用者は、自己の責任と判断に基づき本システムを利用し、本システムの利用に伴って生じる以下の情報及び利用者フォルダを適切に管理するものとし、デジタル庁に対しいかなる責任も負担させないものとします。
一 やりとり履歴
二 わたしの情報
三 お知らせ
四 手続の検索・電子申請
五 その他、システム利用者が閲覧、取得し管理している電子情報……

笑ってしまうが【国民】とは書かずに【システム利用者の責任】とある。そして…
◉自己の責任と判断に基づき本システムを利用
◉デジタル庁に対していかなる責任も負担させないものとします
とある。つまり
◉汎ゆるリスクを申込み者(利用者)が背負わされる

で…次が凄い。第4条
マイナポータル利用者(=マイナンバーカード申込者)は。
内閣総理大臣に対し
◉自己の本人確認(認証)情報が
◉いつ・如何なる時でも
◉自由に開示・閲覧される事に
◉同意したものと見做される。

マイナンバーカードを申し込むってのは。そう言う事なのさ。
要するに。マイナンバーカードの申込みは。
内閣総理大臣に対し
基本的人権の一部を放棄します。
と宣言する事に限りなく等しいの。
基本的人権の放棄だから申込みでなければならず。内閣総理大臣でなければならないわけ。
それを今回。河野太郎デジタル大臣が実態的に義務化した。……

 カードの強要はまさしく人権侵害です。他人頼りですが、この面からも、マイナカードの問題は国会でもっと議論されるべきだと思いますし、このまま通してはいけないもののはずです。



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