ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

京都・大山崎町のこと

 京都の南部に山崎の合戦の地として知られる大山崎町があります。宇治川沿いの京都競馬場から見ると、さらに西、桂川、木津川と合流する辺りです。関西の人にとっては、町の北側に天王山があることもあって、馴染みがあるかもしれませんが、東の人間には、「大山崎」の名前だけでは、すぐに場所がイメージできない人が多いと思います。小生もそうでした。
 この大山崎町で、この前の日曜、10月16日に町長選挙と町議会選挙があったそうです。これはあえて「驚くべきこと」と言いたいのですが、町会議員の当選者12人のうち共産党所属が4人もいます(その他、自民が3人、公明が1人、あとは無所属)。議員の1/3を共産党が占める議会がこの国にあるというのはちょっと想像がつきません。当選した町長は無所属ですが、過去には自民党所属だったことがある人です。この人を共産党が支持し、自民・立憲(前回のみ)・国民・公明が相乗りで推薦した候補(現職)を前回、今回と、2度にわたって破って当選しています(今回、共産党は公式には支持していないようですが)。
大山崎町長選 現職の前川光氏が再選|NHK 京都府のニュース

 こんなTweetを見ました。
ちだい(選挙ウォッチャー) on Twitter: "共産党が議席の3分の1を占める異常な議会となっている大山崎町は、共産党のせいで、町が発展してしまっています。多くの自治体で人口が減少している中、大山崎町は人口が増えており、ちょっとした明石市のようなことが起こっています。あと、学校給食が自校式で美味しいです。実にけしからんです。" / Twitter

 興味をおぼえたので、町のHPをのぞいてみました。特に目を引いたのは、平成18年(2006年)から3代にわたる町長の「交際費」の使途(支払日・支出先・内容・金額)が掲載されているところです。小生の住まう自治体首長も毎月の交際費の使途をHPに載せていて、最近はどの自治体でもこうした情報はオープンにしているようですが、前任者・前々任者のものまで載せているところはかなり珍しいと思います(「支出先」の情報開示についても、都市部の自治体はともかく、地方の自治体の場合はまだまだです)。国で言えば、内閣官房報償費などは旧態依然として中身がまったく開示されていないに等しいのですから、田舎の自治体よりも遅れています。

 ちだいさんのTweetには、「学校給食が自校式で美味しいです」とありましたが、これは非常に重要だと思います。2000年代、全国的に各自治体が人件費の削減に執心した結果、学校の調理員を減らしたり、自校調理方式をとりやめて広域化したり、業者委託に切り替えたりしたために、学校給食のしくみが大きく改変され、全体的に給食の質が低下しました(それでもこだわりをもってがんばっているところはあります)。子どもたちにとって、学校で温かくておいしい昼ご飯がちゃんと食べられるというのは教育内容にもかかわる重要事です(子ども食堂を引き合いに出すまでもなく、一日三食、食べられない子どもたちが増え続けているのですから)。

 産経は4年前、大山崎町の(前回の)町長選挙共産党支持の候補が勝利したことについて、こんな記事を載せていました(2018年10月27日付)。
共産が勝った理由 京都・大山崎町長選 統一選にも影響か - 産経ニュース

 平成14年から22年にかけて共産が議席を獲得している全国の市町村議会の中で、大山崎町議会は議席占有率が最も高く、18年の町長選では共産の推薦候補が当時の現職を破った。しかしそれ以降、町長選は2回連続で敗れていた。
 今回の選挙では元自民党員で草の根運動を展開していた前川氏に対し支持を表明。最大の争点となった公立保育所の廃止に反対する市民団体とも連携し、前川氏の後方支援に回った。
 共産府委員会幹部は「党の主張と前川氏の主張の一部が合致したからこそ支持をした。党としては政治の主人公は市民という認識があり、町民、前川氏、党で町政を変えようとする意識が芽生えていた」と話す。
……同町長選で山本氏の選挙運動を中心的に支えた自民は、まさかの敗北に戸惑いを隠せない。府連幹部は「町長選は大丈夫という安心感もあり、上滑りの選挙戦だった」と振り返る。
 それを踏まえ、「統一地方選大山崎町長選とイコールではないが、大きく負けると参院選に影響する。各候補者が地元に根ざす活動をして、自民の原点である地方に立ち返るべきだ」と気を引き締めた。

 「原点が地方にある」としたら、中央(政府)のやり方に合わせるばかりが地方政治ではないと、自民党の人だって声を上げられるはずです。亡くなった翁長雄志・前沖縄県知事は元々は自民党所属でしたが、共産党など他の政党の支持を受けて政府と向きあいました。自民党員や保守系の人の中にも、「国賊」発言はともかく、現状、いくら自民党本部が決めたことだからといっても、これではまずいと思っている人は少なくないでしょう。まして「記憶もない、事務所に資料もない(捨てた!)、だから会ったかどうかわからない」などとまだ言っている大臣をクビにしない政党に所属していて、「恥ずかしい」と感じたり、良識が揺さぶられたりする人がいるのは当然だと思います。自民だろうが共産だろうが、いいものはいいし、悪いものは悪い――人々の感覚はだんだんそういう方向に近づいていると思いますが、なおつまらないイデオロギーを振りかざして、恐怖を煽り、投票させようとするのは、霊感商法と変わらないと思います。

 「自治体の給与、日本一高いのは京都・大山崎町」という記事も見ました(4月22日付)。これとて、もし大山崎町が住民に対して、手厚くミスなく行政サービスをする町政をしているのだったら(わかりませんが)許容できる範囲の数字です。もし、議論するならそういう方向からやらなければ、単に公務員叩きの悪意を利用しているだけで、これも霊感商法の延長でしかないでしょう。
自治体の給与、日本一高いのは京都・大山崎町 財政難の京都市も政令市6番目|社会|地域のニュース|京都新聞

 「霊感政治」は、統一教会問題とともに、ここで葬らなければなりません。「けしからん」大山崎町に学ぶべきところが大いにあるのでは、と思います。




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