ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

ウクライナ

「戦争のできない国」と「国防意識」

ウクライナ南部の拠点都市ヘルソンからロシア軍が撤退し、報道を見ると、市民がウクライナ国旗を身にまとって国歌を唄うなど、街はお祝いムードに包まれています。覆面ストリートアーチストとして知られるバンクシーがウクライナのキーウ近郊に現れ、幾つも…

「ロシア的人間」像

2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻戦争は8ヶ月となり、特にロシア側には「弾切れ」が指摘されるなど、物量的に厳しい局面にさしかかり、プーチン大統領の発言にも変化が見えます。1ヶ月前に発した部分的動員令には国内の反発が強く、出国者も激増した…

『亜鉛の少年たち』を読んで

副題は「アフガン帰還兵の証言」。 原著は1991年刊。日本語訳は、故・三浦みどりさんの訳で、1995年、日本経済新聞社から『アフガン帰還兵の証言』という題名で刊行されています。今回改めて、奈倉有里さんの新訳で、岩波書店から増補版(裁判記録付)として…

戦時下ロシア 「部分的」動員令の波紋

ウクライナ戦争で劣勢にあるロシア・プーチン大統領が「部分的動員令」を9月21日に出してから一週間。「部分的」という語が何となく引っかかって、勉強ついでに調べると、確かに«Частичная мобилизация (partial mobilization)»と言っているようなので、訳せ…

「即時停戦は『正義』か?」を読んで

ロシアがウクライナへの侵攻戦争を始めて半年になります。この間も関心を失ったわけではなく、報道を気にしてきたつもりですが、当初のようにどんな些細なことでもキャッチしようとする気持ちが薄らいだことは否定できません。それでも、身元が分からずに亡…

奈倉有里『夕暮れに夜明けの歌を』

活躍中のロシア文学研究者の半生を綴った評判のエッセイを読みました。著者は研究者としては若手から中堅どころととらえるのがよいと思うので、「半生」という語はまだ適切ではないかもしれませんが、本の最後に「かつての自分といまの自分はまったく別人と…

ある街頭演説 横浜・夏

昨日(6月26日)横浜で麻生太郎・自民党副総裁が街頭演説に立ち、若い人々へ向けて「自分の国を自分で守るという意識がない国はあっという間に終わる。……自分の国を守るために戦う……という意識が抑止力になる」ことを「頭に入れ」ておくように、と述べたとい…

ウクライナ戦争の終わり方 孫崎亨さんの話

ジャーナリストの神保哲生さんが識者にインタヴューする好評企画。今回は、元外交官で評論家の孫崎亨(まごさき うける)さんから話を聞いています。 戦闘が始まってはや4ヶ月、現下のウクライナ戦争はまったく終結が見通せません。神保さんの話ではなお1日100…

ロシアの良心たち

AFP BB News にロシアで反戦の声を上げる人たちの記事がいくつかあります。 5月22日付の記事で紹介さている画家のエレーナ・オシポワさんは、独ソ戦でナチス・ドイツによって2年半近く続いた「レニングラード包囲戦」を経験した女性で、これまでウクライナ侵…

E.シュリマン氏の講演

ウクライナの戦争を特集した岩波の『世界』の臨時増刊号を読んでいます。短期間によくぞこれだけの陣容をそろえたなあと感心します。確たる情報が十分にあるとは言えない中で、この執筆陣には、断言することを躊躇し留保したいと思いつつ、それでも何かを伝…

ソロモン諸島とウクライナ

昨日新聞を見ていたら、外報面に小さな記事がありました。 米政府代表団は22日、南太平洋の島国ソロモン諸島でソガバレ首相と会談し、ソロモン諸島が中国と結んだ安全保障協定に関して「事実上の恒久的な(中国)軍の駐留や軍事施設建設に向けた動きがあれば…

堀茂樹さんの話を聞いて

フランスの歴史家エマニュエル・トッド氏のインタヴュー記事が4月8日付の文春オンラインにあります。タイトル(「 日本核武装のすすめ 」)に「腰が引けて」しまってそのままだったのですが、話によると、内容の大半は傾聴に値するとのことです。オンライン…

「ウクライナのハチ公」から一週間

ちょうど1週間前、ロシア兵に殺された飼い主を玄関で待ち続けている秋田犬がいることを知りました。犬の名前は本当はリニというそうですが、「ウクライナのハチ公」の名で呼ばれ、写真や動画が拡散しました。3日後、新しい引き取り手が見つかったそうです。…

ヤニス・バルファキス氏に聞く

経済学者で元ギリシャ財務長官のヤニス・バルファキス氏のインタビュー記事を読みました。ギリシャの経済危機にあたって、その最前線に立ち、債務整理とEUやIMFらと交渉にあたった人で、何冊か日本語訳の著書も出ています。 「ピープルズ・プラン研究所」の…

河瀬監督の式辞のこと

暑くなってきたので網戸を入れることにしました。例年だと、5月の連休明けくらいにする「年中行事」なのですが、桜がまだ残っている4月にするのは初めてです。「主人」のいなくなった部屋のガラス戸にも一応……と思って、ガタゴトと付けていると、中から「お…

善悪二元論的報道へ

ロシア軍の侵攻から40日余が過ぎてウクライナ各地の状況が次々と明らかになり、世界中からロシア・プーチン政権を非難する声が上がっています。この目を背けたくなる惨状を見たら、誰でも当然のことと思います。ウクライナのゼレンスキー大統領は、破壊され…

ワクチン後遺症と死亡の検証を

昨日は病院で診察の日でした。先回検査の数値が悪かったので、少し心配だったのですが、今回は元に戻っていて一安心でした。先生から3回目のワクチンをどうしましょうか?と訊かれ、「もう少し様子を見たいのですが…」と返答しました。実は、先月妹が3回目を…

日中印3国による停戦仲裁を

今日は短く。 昨日ウクライナの衝撃的な状況が映像で紹介されていました。映像処理が施されているとはいえ、惨い映像には目を背けてしまいます。これは実画を見たわけではありませんが、後ろ手に縛られて射殺されたとか、遺体には地雷が付いていることもある…

戦争の役に立たない人/人の役に立たない戦争

マガジン9に雨宮処凜さんの「第588回:戦争と障害者〜「戦えない人」は戦時にどう扱われてきたか。の巻」という3月23日付記事があります。その中にこう書いてあります。引用をお許しください。第588回:戦争と障害者〜「戦えない人」は戦時にどう扱われてきた…

O.ファイジズ『ナターシャの踊り』

上下巻合わせて800頁を超える力作。原著は2002年刊行ですが、日本語訳が出たのは昨年2021年8月です。訳者の鳥山さんによれば、途中から巽さんと中野さんの二人に応援を頼んだとのことで、よくぞあきらめずに(抄訳にせずに)最後まで訳しとおしてくれたと、…

服部倫卓さんの解説

ジャーナリストの神保哲生さんのインタビューズ(2022年3月26日付)を見ました。この企画、ゲストの「チョイス」が素晴らしく、小生にとって、ウクライナとロシアの問題を考える上での貴重な情報源です。今回のゲストの服部倫卓(みちたか)さん(ロシアNIS…

ゼレンスキー演説を見て

昨日の夕方、テレビでウクライナのゼレンスキー大統領の日本(国会)向け演説を見ました。注目度が高かったのか、NHKも主要民放もみんなLIVE中継をしていて、放送していなかったのは、Eテレとテレ東と、あとは(小生の見ているチャンネルでは)千葉テレ…くら…

「隣国」ベラルーシのこと

昨日の夕方TBSの報道特集を見ました。キャスターの金平茂紀さんがベラルーシのルカシェンコ大統領にインタヴューしていました。ベラルーシ市民へのインタヴューの顔出し放映とか、チャベス(ヴェネズエラ)とエルドアン(トルコ)の写真の間違いとか、いくつ…

ロシアを去る人残る人

ウクライナから国外へ避難した人は300万人を超えたようですが、ロシアとロシアに同調するベラルーシから国外へ出た人も相当な数のようです(数字は様々ですが)。行き先はいろいろですが、EUやアメリカ、イギリス、カナダなどがロシア航空機の自国領空での飛…

プーチンとオリガルヒ

ロシアには「オリガルヒ Олигархи 複数形」と呼ばれる新興財閥がいます(ウクライナにもいます)。調べてみると、Олиг-(Олигo-)は、少数、少ない、を意味し、архиは、首長、主、大きい、などを意味するようで、「寡頭」と訳されることもあります。数少ない…

微力ながらプーチンを笑いとばす

今ロシアでは反戦の意思表示をするだけで警察に拘束されるようです。何も書いていない白紙のプラカードを持っているだけで連行された人がいましたが、唖然としました。「モス子@日露間で働くマン」さんが上げている下の動画も一瞬ギャグかと思いました。戦…

プーチン崇拝の精神的風土論について

ロシア文学研究者・亀山郁夫氏のインタヴュー記事を読みました。大変興味深かったのですが、部分的に承服できないところもありました。 3月13日付毎日新聞の記事から一部引用させてください(聞き手は大野友嘉子・記者)。ロシア文学者を「絶望」させたプー…

ロシアの人たちは今

今日は短く。 モスクワで反戦活動をしていて拘束された友人から聞いた話というのが連投Tweetされています。猫本喜子さんの3月12日付記事より。https://twitter.com/mandaiike_face/status/1502628186584391684これは貴重です。拘置所の警官の話: 「自分は言…

『戦争は女の顔をしていない』

NHKの「100分de名著」のシリーズでも取り上げられていた、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』が、再び読まれているという話を知りました。番組の講師役だった沼野恭子さんは毎日新聞の取材を受けて、「アレクシエービッチ氏は…

サフルール医師の話

3月11日。母親の命日でもあります。昨日お墓と仏壇に花を供えました。静かに故人たちを偲びたいと思います。 NGO団体を率い、故郷のシリアで医療活動に取り組んできたシリア系米国人、ザヘル・サフルール医師のインタヴュー記事を読みました。昨日「歴史は何…