ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

ソロモン諸島とウクライナ

 昨日新聞を見ていたら、外報面に小さな記事がありました。

 米政府代表団は22日、南太平洋の島国ソロモン諸島でソガバレ首相と会談し、ソロモン諸島が中国と結んだ安全保障協定に関して「事実上の恒久的な(中国)軍の駐留や軍事施設建設に向けた動きがあれば、相応の対応を取る」と強く警告した。
米、ソロモン諸島に強く警告 中国の軍事拠点化なら「相応の対応」 | 毎日新聞

 過去の記事を調べてみると、ソロモン諸島では去年(2021年)の11月26日に、首都ホニアラで暴動が起き、建物が放火され、商店では略奪が起きたという記事があります。ああ、そう言えば…と、少し思い出したのですが、11月28日付記事には、こうあります。

……首都ホニアラで24日、中国との関係を強めるソガバレ首相の退陣を求める抗議デモが暴徒化し、一部が議会に侵入したり建物に放火したりした。チャイナタウンの商店では略奪が起きた。オーストラリアの公共放送ABCは27日、現地警察の話として、焼け跡から3遺体が見つかったと報じた。
 首都機能が一時まひし、ソガバレ氏は安全保障条約を結ぶオーストラリア政府に支援を要請。同国の警察や軍が治安回復に当たり、混乱は26日までに沈静化した。警察は27日、デモや暴動、略奪に関わったとして100人以上を拘束したと発表した。
 抗議デモは、台湾や米国とつながりの強いマライタ島の住民が主導し、ガダルカナル島にある首都で実施した。
 ソガバレ政権は2019年9月に台湾と断交し、中国と国交を樹立。この政策転換を巡り国内は今も二分されており、デモにつながった。中国の支援で進むはずだったインフラ整備の遅れや、長引く貧困・失業への不満も背景にあるようだ。「中国との関係を強めるソガバレ首相の退陣を求める抗議デモが暴徒化」した。……抗議デモは、台湾や米国とつながりの強いマライタ島の住民が主導し、ガダルカナル島にある首都で実施した。
 ソガバレ政権は2019年9月に台湾と断交し、中国と国交を樹立。この政策転換を巡り国内は今も二分されており、デモにつながった。中国の支援で進むはずだったインフラ整備の遅れや、長引く貧困・失業への不満も背景にあるようだ。……

ソロモン首都で暴動、3人死亡 親中国の首相への退陣デモ暴徒化 | 毎日新聞

 その後、12月下旬には、ソロモン諸島は中国の警察当局者6人を受け入れることで合意し、中国はヘルメットや盾、警棒などの装備品も提供。3月には、中国と安全保障協定の締結を進めていることが明らかになり、ちょうど1週間前の4月19日、正式に締結したと発表されました。米政府代表団による冒頭22日の「相応の対応」をとるという発言(警告、いや脅迫)は、これを受けてのもののようです。

 何やらきな臭さが漂いますが、このソロモン諸島の状況は、現在のウクライナ情勢にあてはめれば、中国はNATO(米国)、米国はロシアに置き換えることができ、構図が “反転” します。ソロモン諸島に軍事介入するような事態は絶対に避けて欲しいと思いますが、しかし万が一にも、そこまでエスカレートしたら、今度はアメリカ軍が「侵略軍」ということになります。

 これは、アメリカの言語学者で「御大」のノーム・チョムスキーにインタヴューした動画を見ていて、いっそう強く感じました。さすがチョムスキー、衰え知らずの知力には敬服します。その声が聴けて感激しました。翻訳の労をとってくれたマキシムさんにも感謝、感謝です。一部、文字に起こしたものを、引用させてください。

知の巨人、ノーム・チョムスキー!「ウクライナ戦争とアメリカの巨大な欺瞞」―全世界必見の動画!【日本語字幕付き】 - YouTube

 ――興味深いのは、ゼレンスキーが、特にアメリカや西ヨーロッパのメディアからもてはやされていることです。さらに過去の歴史的人物になぞらえて、一種のヒーローのように「戯画化」されていることです。そして、メディアが、しばしば彼の発言を切り取って、最後まで戦い抜く反抗的な指導者のように「意図的に」見せようとしている点です。しかし、その行間を読み、ウクライナの交渉担当者の発言や、和平の条件について迫られたゼレンスキーの発言を読むと、彼はあなたが指摘した要因、つまり交渉で(戦争を)終わらせなければならないことを非常に強く意識しているように見えるのです。そして、ゼレンスキーを祭り上げたこの神話を永続させるために、米国と欧州のメディアが意図している役割についてお聞きしたいのです。このメディアの手法は、ウクライナの交渉担当者やゼレンスキーがニュアンスに富んだ話し方をしているときに、その真剣さを損なわせているような気がするのですが。ウクライナ自身が受け入れると言っている条件に耳を傾けようとせず、一種の戯画を作り出そうとする意図があるように思えるのです。

 チョムスキー:そうですね、全くその通りです。メディア報道を見ると、ゼレンスキーが政治的解決の可能性について述べた、非常に明確で明白で真剣な発言のほとんど…、特に重要なのは「ウクライナの中立化を受け入れる」との彼の発言は、文字通り報道されませんでした。そして、ゼレンスキーをウィンストン・チャーチルになぞらえたり、その型に当てはめようとした議員や人間によって、彼のもつ本質は脇に追いやられてしまいました。もちろん彼は、ウクライナ人が生き残れるかどうかを気にかけていることは明らかです。それゆえ、事実、交渉の基礎となり得る妥当な提案を次々とロシアに打ち出しているのです。
 政治的解決の内容や、だいたいの方向性は、ロシアとウクライナ双方で以前からかなり明確になっているということに注意しておく必要があります。実際、もし以前からアメリカがそのことを検討する気があったならば、今回の侵略は全くなかったかもしれません。侵略前にアメリカには基本的に2つの選択肢がありました。ひとつは、先ほど説明したような強硬な姿勢を貫くことで、交渉を不可能とし、戦争に発展させることです。もうひとつは、利用可能な選択肢を追求することでした。実は、戦争によって可能性は弱まっているものの、その基本的条件はかなり明確なので、まだある程度は実現できる場合もあります。
 ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は、侵攻のはじめに、ロシアには2つの主要な目的があると発言しました。それはウクライナの「中立化」と「非武装化」です。もちろん「非武装化」といっても、すべての武器の所有を放棄するわけではありません。NATOとの相互作用により、ロシアを標的にした「重火器」武装を排除するということです。ラヴロフのことばが意味するのは、ウクライナをいわば「メキシコ化」することです。メキシコは世界において自分の道を選ぶことができるごく当たり前の主権国家です。しかし、もしメキシコが、中国が主導する軍事同盟に参加して、先端兵器や中国製の武器をアメリカとの国境に配備したり、人民解放軍と共同軍事作戦を実施したり、中国の指導者から訓練と最終兵器を受け取るなどという状況がもし起きたとしたら、アメリカは絶対に許しません。実際、そんなことは考えられないので、あえて誰も口にしませんが、もし、そのような動きが少しでも起こったら、次に何が起こるかすぐにわかるから、話す意味はないのです。つまり、考えられないということです。基本的にラヴロフの提案は、こう言っていると考えると、もっともらしく解釈できるでしょう。「ウクライナを『メキシコ化』してしまおう」、そしてそれは実現可能なオプションではあったのです。しかし、アメリカは自分自身が「そんなことは絶対に許さない」と考えていることを、ロシアに対してやろうとしたのです。……

 戦争前ウクライナNATOの関係者が入り込んでいたのは事実です。ソロモン諸島に中国の警察官が入り込むのもこれと同じことです。今後ソロモン諸島が中国の「基地化」されるかどうかはわかりません。しかし、もし、アメリカがソロモン諸島に「介入」したとしたら、こそこそと見映えが悪くならないようにやるのかもしれませんが、形はどうあれ、やろうとすることはロシアと本質的には同じでしょう。
 世間では、他人に適用する原理原則を自分には適用しない人のことを偽善者と言いますが、ソロモン諸島ウクライナを比べて、アメリカに偽善のにおいを感じるのは、それほど不自然なことではないでしょう。そのアメリカに追従するだけの日本は言わずもがなです。





↓ よろしければクリックしていただけると大変励みになります。


社会・経済ランキング
にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
にほんブログ村