ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「日本に来ないでください!」

 コロナ感染の第4波突入に東京都知事は「東京に来ないでください」と言っていたが、4月19日付の水島朝穂さん早稲田大学)のホームページに、ドイツ語圏新聞に向けた東京五輪の中止を呼びかけるアピール文(4月2日付)の紹介がある。自身を含む20人の日本の学者や知識人によるもので、題名は「どうか日本に来ないでください!」(Kommen Sie bitte nicht nach Japan!)となっている。

 訳文を部分借用して下に引用することをお許し願いたい。今、これをお読みの方は、是非、全文をご覧いただきたい。

平和憲法のメッセージ

……東京都、日本政府、IOC、そしてIPCは、外国からの観客を受け入れないことにしました。旅行産業はがっかりしているようですが。とはいえ、選手は来ます。コーチやトレーナー、そして取材関係者も来るでしょう。その数は数万にはなるはずです。飛行機に乗る前の隔離、飛行場での検査、また母国での検査証明の提示などなどの予防措置を取ったとしても、感染の危険がゼロになるということはまず考えられません。その上、日本の市民でワクチンを接種したのは、目下のところたったの0.8パーセントに過ぎません。主として医師と看護関係者、それに近いうちにアメリカに行く予定の菅総理です。ヨーロッパもアメリカも納入契約にもかかわらず、ワクチンに関しては自分たちの手元にとどめ、輸出を渋っているためでもあります。それゆえ、来日した関係者のたとえ一部であっても、ウィルスを吸い込み、そのまま自国に持ち帰る可能性はきわめて高いと言わざるを得ません。結論としては、今夏のオリンピックとパラリンピックが日本国内およびグローバルに感染の爆発的増大につながることになりかねません。オリンピックおよびパラリンピックは、やってはなりません。問題なのは人の命そのものです。国家の威信や経済的利益などは二の次のはずです。われわれはスポーツ関係者の理性に訴えたいです。また選手団を派遣する国々の世論に、この記事の場合にはドイツ語圏諸国の世論に訴えたいです。どうか日本に来ないでください!
スポーツにおいて実績を積んでいる国々のどれかひとつが、パンデミック状況を考慮して、選手団を派遣しないという思いきった決定をするならば、それはかならずや諸国民の間に連鎖反応を生み、JOCIOC、JPC、そして東京都も、譲らざるを得なくなるのみならず、オリンピックとパラリンピックを―それが選手の方々にはどんなにつらいことであろうとも―少なくともこの夏に関しては、やめるべきだという認識に至るはずです。


 オリンピックが「平和の祭典」であるなどと「そもそも」論を持ち出すまでもなく、世界の趨勢がお祭りに人を出せる状況になっていないことは明らかで、外国から見物に来る人を入れないで開催するという独善的な判断を下した時点で、これはもう「世界」の祭典ではなくなっている。

 イギリスの「ガーディアン」紙(電子版)は4月12日付の社説で「五輪開催を進める必要があるのか」と、東京五輪の中止を訴えているという。
英紙が東京五輪中止を主張「開催を正当化できるか自問する必要がある」

 4月17日のアメリカ・ホワイトハウスでの記者会見で、ロイターの記者から「公衆衛生の専門家は、日本が五輪を開催する準備ができていないと指摘している中、開催するのは無責任ではないか?」と質問されたスガ首相は “完全無視” という非礼な態度をとった。しかも、「コロナに打ち勝った証し」と言い続けてきた五輪開催について、この日は「世界の団結の象徴」と述べた。これもまた独善的だ。世界と団結する気があるなら質問に答えるべきだ。

 水島さんは、別に、福島原発の汚染水の海洋排出に対する各国の関心の高さも伝えていて、
4月13日の海洋放出決定は「五輪の終わり」のとどめのようなメッセージとなったのではないか。特にドイツでは、直言「「幻の東京五輪」再び」で紹介したように、「東京2020:放射性オリンピック」に反対する署名運動も存在する。
 と述べている。

 放射能汚染水を海洋排出するのとコロナ禍に五輪開催に狂奔するのと、もっと言えば、記者の質問をガン無視するのは、すべて根が同じだと思う。世界=他者とともに自分があるという認識がない。周りに感謝の気持ちを忘れない式のいつもの美意識はどこにいったのか。やはり、他人に言う(強要する)だけで、自分は関係ないのだろうか。

 その象徴的な出来事がアソー副総理兼財務相の言動である。こういうことを放言する政治指導者の国で世界の祭典をやるべきではない。
「(中国の報道官が)『太平洋は日本の下水道ではない』と言ったそうだが、じゃあ中国の下水道なのかね。みんなの海じゃないのかねと思うね。」


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