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日常と世相の記

東京五輪「打ち切り」の可能性

東京五輪、選手村クラスターで前代未聞の「打ち切り」になる?
――ずいぶん「刺激的」で大げさな見出しである。人によっては「悪意」を感じるかも知れない。しかし、すでに選手村からは少なくとも61人のコロナ陽性者が出ているとされている(日に日に増えるのではなかろうか)。選手村が公式上「閉じた空間」だとすれば、昨年春に話題となった豪華クルーズ船の「ダイヤモンド・プリンセス号」を連想させる。いや、選手村の場合、人の出入りがあるわけだから、条件的にはさらに悪い。テニスの全豪オープンをまねて、今回採用された「バブル」方式なるものが、本当に感染症の専門家の監修を受けてつくったものなのか大いに疑問である。

 M&A Online7月19日付の記事より。

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「バブル」崩壊すれば、選手村で2万人の感染爆発も
東京五輪では、選手や関係者の宿泊先と競技会場を大きな泡で包むようにして外部と隔離する「バブル方式」を採用。政府は五輪関係者と一般市民をバブルで空間的に隔絶することにより、双方の接触を避けて「安心・安全」な大会が開催できるとしている。
しかし、すでに一部の大会関係者が選手村から勝手に外出していることも伝えられ、バブルに「穴」が空いているとの懸念が出ている。選手村がある東京都では、17日に新規コロナ感染者数が1410人と急増。バブルに穴が開けば、最大の懸念は選手・関係者から一般市民への感染ではなく、一般市民から選手・関係者への感染だ。
なぜなら選手村を中心とするバブルはウイルス感染がない「無菌」であれば強力な防壁になるが、バブル内にウイルスが入り込むと感染の連鎖を起こす「密閉空間」にもなる。日本で初めてコロナ感染の脅威を知らしめた大型クルーズ客船と同じ構造だ。
この大型クルーズ船では乗客・乗務員3711人中、2割近い712人の感染が確認されている。オリンピック・パラリンピックで選手・関係者計約10万5000人が来日する予定だ。全員が同時に選手村にいるわけではないが、一時的にでも滞在時期が重なれば全員に感染が連鎖するリスクがある。
仮に大型クルーズ船と同じ感染率だとすると、オリンピック・パラリンピック開催期間中に選手村だけで2万人を超える感染爆発が発生する計算だ。大型クルーズ船と違ってワクチン接種者という「防護壁」もあるが、「デルタ株」はワクチン接種者にも感染すると報告されている。接種者は感染しても重症化しにくいが、無症状のままウイルスを拡散するため油断はできない。

選手村で「デルタ株クラスター」が発生したら…
一般市民との接触による感染を完全に防げたとしても、海外からやって来る五輪選手や関係者がバブル内にコロナウイルスを持ち込めば同様の事態になる。7月1日から17日の間に選手を含む五輪関係者から45人の陽性者が出ており、17日には1日としては最高の15人の感染が確認されるなど、開会に向けて増加気味だ。
しかも現在の感染の主力は、若年層でもワクチンを接種していないと重症化しかねないデルタ株だ。6月に国際オリンピック委員会IOC)は来日する五輪選手や関係者などのおよそ8割が、大会までにワクチン接種を完了するとの見通しを示した。
が、ワクチン接種の報告は自己申告で、接種証明書を添付する必要はない。そもそもIOCは選手にワクチン接種を推奨しているが、義務ではない。接種するかどうかは個人の自由だ。トップアスリートだけに、ワクチンの副反応で最終調整に影響が出ることを懸念して接種を拒否する選手も少なくない。
選手村は相部屋なうえに、選手や関係者、スタッフが1カ所にひしめき合う過密空間だ。ワクチン未接種者が多ければ、感染拡大は避けられない。それを見越してか、政府と東京五輪パラリンピック大会組織委員会はコロナ感染者の濃厚接触者と判断された選手について、試合開始前6時間以内のPCR検査で陰性ならば出場を認める方針だ。
当初、濃厚接触者と判定された選手は最大6日間は出場を認めないとしていた。しかし、五輪関係者の感染が次々と明らかになり、従来の対応では大会が維持できないと判断したようだ。一般の濃厚接触者にはPCR検査が陰性でも自宅などで14日間の待機を求めており、極めて異例の対応となる。
ただ、選手村でクラスターが発生し、陽性者が大量に出てくれば試合どころではなくなる。大会を維持するために、さらにルールを「陽性者でも発熱などの症状が出ていなければ出場を認める」と緩和することも可能かもしれない。だが、これには対戦相手が感染を恐れて強く抵抗するだろう。とてもでもないが実現しない。

五輪史上初の「大会打ち切り」も
そうなれば東京五輪は会期中に「打ち切り」となる可能性が極めて高そうだ。近代オリンピックの夏季大会は1940年の東京大会を含めて過去3回中止しているが、開会後に打ち切られた大会はない。東京大会はこれまで3回決まったが、成功したのは1964年の1回だけで、1回は中止、1回は前代未聞の打ち切りという悲惨な結果に終わる懸念が出てきた。
もしも選手村でクラスターが発生すれば、一般市民も無事では済まないだろう。コロナ陽性者は「選手村で療養」というわけにはいかない。陽性者は選手村を出て、指定されたホテルなどで療養することになる。さらに若年層でも重症化するデルタ株だけに、発症して入院する選手や関係者も出るだろう。
東京は現在コロナ感染の第5波に見舞われており、過去最大の感染者を出した2020年12月から2021年1月にかけての第3波を超える勢いで新規感染者数が増大している。感染拡大が止まらなければ、ホテルなどの療養施設やコロナ患者を受け入れる病床が逼迫(ひっぱく)するのは必至だ。
そこに選手村から大量の陽性者や発症者が流れ込んでくるとなると、医療崩壊を起こしかねない。入院先が見つからず自宅などで死亡する事例も、5月末までに全国で500人を超えた。難しいのは誰を受け入れるのかの選別だ。
日本人を優先して選手を受け入れなければ、民族・人種差別だと国際世論から批判されるだろう。国の代表である五輪選手がそのような扱いを受ければ、送り出した国で日本の印象は極めて悪くなる。選手村で待機中に死亡者が発生すれば「事故物件」となり、五輪・パラリンピック終了後の分譲引き渡しでのトラブルも起こりかねない。
反対に選手を優先して日本人を受け入れなければ、ただでさえ五輪開催に否定的だった国内世論から「外国人のスポーツエリートを優先するのか」と猛反発を受けることになるだろう。「開会時にはコロナ感染も下火になっている」と期待していた政府にとっては、最悪のタイミングで迎える五輪となるのは間違いない。


「濃厚接触者」なるレトロな考えにいまだに拘泥する日本の識者にも疑念と軽蔑のまなざしが向けられている。日本でコロナは飛沫感染が主だという前提を崩せない理由は何なのか? 特にデルタ株は空気感染を前提としなければ対策の立てようがないのではないか。

 組織委は当初隠していたが、南アフリカのサッカー選手の中に陽性者がいることがわかった。南アは明後日の日本の初戦の相手だ。他の選手は「濃厚接触者」扱いとなり、一般の日本人なら2週間隔離し、検査を繰り返して様子見というのが「原則」だが、そんなことをしていたらオリンピックが終わってしまうということだろうか、「原則」を崩して、試合6時間前以内の検査で陰性であれば試合に出場可能にするという。
 こうした恣意的な運用を、感染症の専門家たちはどう見ているのか。見て見ぬふりをするのだろうか。こうした杜撰な運営とデタラメが繰り返されれば、選手村で感染爆発が起こるのは避けられない気もしてくる。史上初の「打ち切り」というのもありうる話ではなかろうか。



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