ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

五輪中止を決めるのは誰か?

 巷に日本が五輪中止を言い出せば「違約金」をとられるという話がある(ようだ)が、作家の本間龍さんによれば、「開催都市契約2020」(東京都、JOCIOCの3者間で締結した契約、合意書)には中止したときに、開催都市がIOCに「違約金」を払うという取り決め、条項は一切ないという。
 調べてみると、契約上、中止を判断する権利をもつのはIOCだけとなっていて、今回のコロナ禍のように、大会参加者の安全が保てないと判断されればIOCは中止を決定することができ、それによって生じる損害を賠償する責任はIOCにはなく、東京都やJOC、大会組織委員会が「第三者からの請求、訴訟、……から IOC 被賠償者を補償し、無害に保つものとする」と書かれている。<Ⅺ. 解除―66. 契約の解除>
(https://www.2020games.metro.tokyo.lg.jp/hostcitycontract-JP.pdf)

 「違約金」とは書いてないが、中止の判断(決定)によってIOCに向けられる「損害賠償請求」には、東京都他がIOCになり代わって対応するべしと書いてあるように読める。もしかすると、「違約金」とは、このことを言っているのかもしれない(それにしても、他の条項を含めて、なぜこんなにIOCは優遇され、開催国、開催都市側に不利な内容なのか、その不公平さに疑問をもつ)

 4月15日付朝日新聞の記事は、(「違約金」ではなく)「賠償」のことに触れている。部分引用する。

IOC以外が五輪中止判断なら…日本に賠償請求の可能性 - 東京オリンピック [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル

……開催都市契約に詳しい弁護士の松本泰介・早大准教授は、「開催都市契約書には開催義務を免除する条項も、不可抗力条項もない。IOCが契約を破棄しない限り、日本側には開催義務がある」と指摘する。
 不可抗力条項とは、当事者に責任がない理由で契約を実現できなくなった場合に、どちらの責任にもならないよう明記する取り決め。国際的な契約では含まれることが多いが、五輪の開催都市契約にはない。
 そのうえで、「IOC以外が中止を決めた場合IOCが日本側に損害賠償を請求する可能性がある。裁判になった場合、損害額の全額が日本側の責任と認められるとは限らないが、まったく責任がないということにはならないのではないか」と話す。
…………
 松本准教授は「五輪の開催都市契約の内容はIOCが有利。パンデミックのような事態でも不可抗力条項がなく、開催都市側が延期でしのげば追加費用を払わされ、中止に追い込まれると損害賠償を請求される可能性がある。そんなリスクを負ってまで五輪を開催したいという国はますます少なくなるのではないか」と指摘している。

太字は当方が施した。

 これでは、日本側から「無理だから中止したい」とは、なかなか言い出しにくいというのはあるかもしれない。
 しかし、中止を決められるのがIOCだけだとすると、上の引用中の「IOC以外が中止を決めた場合」という前提はズレている可能性がある。「開催都市契約2020」には、予見できない不当な困難が生じた場合、大会組織委員会IOCに「合理的な変更」を考慮するように要求することができる、と書いてある。<Ⅻ. その他 ―71. 予測できない、または不当な困難>「合理的な変更」とは、ここでは「中止とか延期」のことになるが、かりに大会組織委員会橋本聖子会長が中止の申し入れをしたとしても、それを受け入れるかどうかは、あくまでIOCの独自判断だとも書いてある。やはり、最終的に中止を決定できるのはIOCしかないようだ。

 4月17日付のデモクラシータイムスの一コマで、ジャーナリストの川村晃司の言ほかの引用が以下。

現実味帯びる「五輪中止」発言 やはり来た!コロナ第4波 WeN20210417 - YouTube

 川村私が聞くところによると、中止になるとして、IOCが一番望んでいるのは、保険金がきちんと下りるかどうか、だと。世界においてまだパンデミックが収まっていない、この感染状況の中で東京五輪をやるのは無理ではないかとWHOが言うことによって中止になるのであれば、IOCに保険が下りるということになっていて、結局ビジネス的に言って、IOCが一番もうかる(得になる)形で五輪を中止にしたいという思惑があるんじゃないかと思いますね。
 司会・高瀬これ、何というか、無責任の体系みたいになってますよね。三すくみじゃないけど、我々が責任をもって決めるんだというんじゃなくて、みんなお互いを見ながら、WHOは何て言うかとか、IOCはどう言うかとか、日本はどうなのとか。


 できうるのは、WHOがどうあれ、まず、日本側がIOCに中止を要請する。「賠償」問題は確かに怖ろしいが、オリンピックの開催が日本のコロナ感染の「促進」要因になってしまっている以上、このまま猛進すれば重症者はもちろんのこと、国内死者も1万人をはるかに突破してしまう。これは世界の脅威でもありうるわけで、世界中のさらなるパンデミックやウィルスの変異拡大を助長しかねないこの催しを、こんなかたちで開催しても、世界の人々から支持・歓迎されるはずもない。これを受けて、IOCは一刻も早い中止の決断をするしかないのでは。そう望む。





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