ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

Not guilty と Innocent

 「違法ではないけれど道義的な責任はないのか」――日本の政治家が何か「事件」をしでかすと、野党議員やメディア界隈でよく聞くフレーズです。先日の高市首相のカタログギフト問題を、本人の「弁明」に沿ってこの文脈で語るのは的外れだと思いますが――政治資金の使途として趣旨に反し、違法と思うので――「違法でない」と「道義的責任がない」という語の違いは、英語のNot guilty と Innocent の違いに似ている感じがします。その関係で言えば、日本の政治家諸氏が、自分は Not guilty だから Innocent だとにおわすような語法を続けるのはいかがなものか。これを認めると、「違法でなければ(認定されなければ)何をしてもいい」ということになりかねませんし、その「違法性」自体作為的です。混同を許してはならないと思うのです。

 「イノセント」と言えば、余談ですが(思い出したので)、米国のビリー・ジョエルが昔ヒットさせた曲にも Innocent が出てきます。1983年にレリースされた An Innocent Man という曲は、アルバムのタイトルにもなっていて、メロディーは好きだったのですが、

 ……君の叫びを聞いたっていい だって、僕はイノセントな男だから
 ……I’m only willing to hear you cry Because I am an innocent man……

 と歌われても、イノセント Innocent という語は、当時「潔白な」とか「純粋無垢な」という意味だと思っていたので、前後の意味がよくわかりませんでした(この歌が昔の恋人に傷つけらて人間不信に陥った女性を慰め励ます歌らしいと理解したのは、ずっと後です。今改めて歌詞を見ると、女性に向かって(だけ)語りかけているというよりも、モノローグのような感じもします)。それにしても、自分はイノセントな奴だから(安心安全ですよ?)と言って近づいてくる男ってどーなの、という感じは否めませんけど(笑)。
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 辞書を眺めると、Innocent の語源についていろいろと書いてあります。元々の意味は「無害」「害を与えない」で、そこから、「無実」とか「(子どものように)純真、無邪気」「潔白」などの意味が派生したようです。

 でも、キリスト教の世界では、人はみな「罪人」でそれぞれが罪を背負って生きている、だから悔い改めないといけないという根本教義があるはずです。とすれば、自分は Innocent だという単語を口にした瞬間に羞恥を感じたり、待てよ、と躊躇する人がいてもおかしくないと思うのですが、現実的には、「罪人」論の教義に、総論で賛成はしても、各論になるとちょっと厳しい。だいたい自分を「罪深い」と思いながら生きるのは楽しくないでしょうし。けれど、著名人や政治家は、一般の人と立場が違うのですから、何か事が起こって、自分は Not guilty どころか Innocent だと言い張るのであれば、周りが納得のいく説明や証明があってしかるべきです。

 まず、米国のトランプ大統領。いろいろとありますが、中でもエプスタイン問題です。これは、自分は Innocent との主張――かなり前にエプスタインとは関係を断ったという釈明――とは裏腹に、調べれば調べるほど、怪しさが増してきます。エプスタイン・ファイルと呼ばれる捜査資料について、すべてを公表することになっているのに、未公開の文書が存在するというのも怪しい。このまま司法省が開示請求にこたえず、何が何でも見せないとなったら、これは事実上大統領はクロだと言ってるのと同じです。もっと言えば、真相がばれるとまずい(誰かさんに弱みを握られていた)から、イラン攻撃を始めたとなったら、これはもう即刻弾劾どころか、戦争犯罪人として裁き、懺悔に懺悔をさせても全然足りません。
「イランへの攻撃」は疑惑隠しだったのか…「少女人身売買」エプスタインについてトランプが口にしていた大ウソ | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
トランプに戦争させたイスラエル〜エプスタインの工作の影 | のら猫 寛兵衛

 高市首相も同じです。彼女は旧統一教会との関係を質されてもことごとく否定していますが、状況的にイノセントで押し通すのは無理、ほぼクロでしょう。「文鮮明、韓鶴子? 誰ですか? 初めて聞きました」とか、世界日報が統一教会系の新聞だと知らずにインタビューを受けたとか、その程度の緩く散漫な「情報収集力」、というより普通の人以下の知性しか働かない「無垢」な人間が、政界でのしあがっていくことなどありえません。それでは普通の社会生活を送ることだって危ういでしょう。無垢で無関心な人はこうした連中の餌食にされかねないのですから(でも、彼女の場合、ある意味、望んで統一教会の「餌食」にされてる面もあるから、ウインウインというべきですが)。
東京高裁が統一教会に解散命令。高市早苗首相は統一教会の世界日報に5回もインタビューを受けたのに「旧統一教会の関係とは知らずに取材を受けた」とまだ白々しい嘘。 - Everyone says I love you !
「教義を初めて聞いた」高市早苗氏 旧統一教会について“知らない”連発…オリラジ中田は「一切調べてなかったのが驚き」と追及 | 女性自身

 経験上、人間はうそをつくとき、何かしら不自然なことをするように思います。急に大きな声を出したりとか(←トランプ)、妙にカマトトぶったりとか(←高市)。

 イノセントでないのにイノセントだと言いはる人、罪を犯しても悔い改めない人たちも、神から罰せられないと「不公平」です。もうひとつ言えば、ユダヤ教やキリスト教の人たちは、ムスリムの人たちに比べると、全体として神から「優遇」され過ぎで、これもまた相当に「不公平」な感じです。同じ神じゃないんですかね――小生は死んだ親以外への「信仰心」はありませんが、たまには「民の声」が神の耳にも届かないものかと、祈りたい気持ちです。



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