ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

安倍氏の国葬問題

 朝日新聞の川柳が話題になっているそうです。本ブログでも引用した7月16日付の7撰ですが、全体として亡くなった安倍氏国葬方針を風刺するもので、フッと笑うレベルの話だと思うのですが、人によっては笑うどころか激高しているというのですから、いやはや……。そういう方は時事川柳など見なければいいのに、と思います。もし、安倍氏がらみの話題で自分は昂奮しやすいたちだという自覚のある方は、安倍氏にタダ酒を提供することで知られるサントリー胡麻麦茶でも飲んで、血圧を130以下に下げてから(CMコピー)ご覧になることをお勧め致します(上がってから飲む方がいいかもしれませんが)。朝日川柳も映倫のPGー12やR15+のような「信者鑑賞制限」が必要になる日が来るのかもしれません(笑)。
朝日川柳 西木空人選:朝日新聞デジタル

 下に付いているたかまつななさんのコメントもズレた感じです。「政治的な評価と暗殺(ご冥福をお祈りする)をわけて考え」ようと呼びかけてる人が、どうして故人の冥福を祈ることと国葬をわけて考えられないのか、疑問です。「投稿された方にも誹謗中傷などが及んでいないかと心配で、このようなコメントをすることもさらに追い討ちをかけてしまうのではないかと悩んだ」って、悩んでるのに誹謗中傷を誘導するようなことを書いてどうするんですか、と思います。

 自民党の茂木幹事長は昨日19日、国葬について国民の間で賛否が分かれているという指摘に対し「……国民から国葬をすることについて、いかがなものかという指摘があるとは認識していない」「野党側の主張は、国民の声・認識とは、かなりずれている」と述べたということです。絶えない献花の行列を見ると、安倍氏の冥福を祈る人が多いとは思いますが、だから国民の大多数が国葬に賛成しているととるのもどうかと思います。それこそ、冥福を祈ることとと国葬は分けて考えるべきです。うがった見方を承知で言えば、昨今明らかにされている旧統一教会関連団体と自民党との関係からすると、弔意や献花の行列にも少なからず「動員」がかかっている、つまり「やらせ」「さくら」の可能性だってありえます。

安倍元首相の国葬めぐり「野党の主張はずれている」 自民・茂木幹事長(フジテレビ系(FNN)) - Yahoo!ニュース

 問題は、茂木氏が国葬の法的根拠について「内閣府設置法で、内閣が国の儀式を所管すると明記されている。政府が閣議決定を根拠として国葬を行うことは、法律上も全く問題ない」と言っているところです。またまた出てきた「閣議決定」ですが、時の内閣の意思確認が、安倍政権以降、超法規的命令のごとく様変わりしています。これは法治国家のやることではありません。
 立憲民主党の議員で憲法学が専門の山花郁夫氏が「国葬」について解説しています。国葬は、政府がやると決めたからやるではなく、やるのであればきちんと法律をつくらなければならない、明治憲法下ですら「国葬令」という勅令(法律)があった、と書いています。以下、7月17日付記事の要約です。

「国葬」について|山花郁夫|note

 明治憲法には国葬令という勅令があった。勅令は、帝国議会が議決した法律ではなく、天皇が直接発する命令・法令を指す。
 日本国憲法のもとでは、国会が「唯一の立法機関」だが、明治憲法のもとでは、立法権天皇に属し、帝国議会はそれに「協賛」するにすぎなかった。だから、法律とは別に天皇が発した勅令という法形式も並立していた。大正15年に定められた国葬令もその一つだ。
 戦後、日本国憲法の制定・施行により、明治憲法下で通用していた命令の整理が行われ、必要と思われるものについては、日本国憲法のもとで「法律」の形をとることが決められた。国葬令は、天皇・皇族とならんで「國家ニ偉功アル者」についても国葬にすべき場合があると定めていたが、日本国憲法制定後、当時の内閣あるいは国会は、国葬令を内容的に存続されるべきと判断しなかったと解される。存続されるべきとするならば、憲法に適合的な内容で法律にしていたはずだが、そのような形跡は見受けられない。国会が廃止した法律内容を、行政組織法を根拠として政府が実施することは許されないはずである。
 もし、国葬を実施するのであれば、かつての国葬令のように、だれが対象となるのか、だれがその判断をするのか、などが法律で定められていることが必要だ。法律に基づいて、国葬を実施する、という判断をしてはじめて、茂木氏の言う「国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務」として内閣府の所掌事務になるのであって、内閣府設置法国葬の根拠法となるというのはかなり解釈に無理がある。戦後、先例として吉田茂元総理の国葬があるとされているが、その際の根拠法は内閣府設置法ではありえない(当時、内閣府なる行政組織は存在していなかった)。
 明治憲法から日本国憲法になり、国会を唯一の立法機関として法治主義が確立された。明治憲法のもとですら、対象や判断主体を定める国葬令という法形式が存在していたのに、現行憲法ではこのような法律の根拠は不要だというのは不自然ではないか。

 しかし、もっと根本的なこと(だと思うこと)を言うと、そもそも安倍晋三氏は国葬に値する故人なのかということです。国会で118回嘘をついたという一事だけでも、国葬をするのは憚られます。118回の嘘というのは、噂話や捏造ではなく、安倍氏本人も認める確定された事実です。これで国葬をするということは、国会は嘘をついてもいいところだと国家として認めることになります。そんな前例をつくっていいのかということです。政治家をはじめ、この国は嘘つきを奨励する国なのでしょうか。




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