昨日(8月9日)、8月5日に続く2回目の「国葬問題」に関する国対ヒアリングがありました。
まず、「国葬」に要する費用です。これは予備費で賄うとされていますが、補正予算を組まずに予備費から出すのでは予算の使途を国会が事前にチェックできません。「国葬」は災害などによる緊急事態ではありえません。8月9日付東京新聞にこの点の指摘があります。
安倍元首相の国葬費用「国会通さず税金使うのは間違い」 予備費支出に批判の声「災害とは違う」:東京新聞 TOKYO Web
◆財政民主主義の理念に反する
安倍氏の国葬は9月27日に行われる。費用は明らかになっていないが、各国から首脳級の参列も予想され、多額を要するのは必至。政府が半額を負担した中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬(2020年)は、首相経験者の葬儀としては過去最高の約1億9000万円だった。
税金などの詳細な使い道は、国民の代表者で構成される国会の議決に基づいて決めなければならないというのが「財政民主主義」の原則だ。一方、政府が国葬の財源に充てる方向の予備費は、憲法87条が「予見し難い予算の不足に充てる」目的で、あらかじめ使途を定めず計上することを認める予算。内閣の判断で支出し、使った場合は国会の事後承諾を得る仕組みになっている。
ただ、制度の主眼は自然災害など急を要する事態に備えることだ。野党からは「災害対策などに予備費執行はあり得るが、国葬はわけが違う。国会が関与すべきだ」(立憲民主党の泉健太代表)などと疑問の声が上がる。中曽根氏の合同葬にも同様に予備費が使われており、野党は批判していた。
◆臨時国会では政府の説明なし
7月22日にあった国葬実施の閣議決定から当日までは2カ月以上あり、政府が補正予算案を編成することも可能だったとみられるが、参院選を受けた先の臨時国会は新たな参院議長らの選出だけで3日間の会期を終えた。政府による説明は閉会中審査に持ち越されたが、日程は決まっていない。
公文書改ざんなどを含む森友学園問題に関する著書がある大川一夫弁護士は「多くの国民が反対しているのに、国会を通さず税金を使うのは財政民主主義の点でも間違っている」と主張する。……
元財務官僚で明治大の田中秀明教授(財政学)は「国葬の基準を事前に策定しなかったのは政府の怠慢であり、直ちに策定すべきだ」と強調する。
その総額は中曽根氏の合同葬を参考に2億円弱という話ですが、おそらくそんな額では収まらないでしょう。
安倍氏国葬の費用「2億円弱が指標」と内閣府 野党ヒアリング詳報 | 毎日新聞
菊の花だけで2千万円!安倍元首相の国葬に消える血税約37億円 | 女性自身
これは、コロナ対策やオリンピックなど、最近の政府が行う、ないし支援する施策に共通する「中抜き」事業のにおいがします。だから、国会審議を必要とする補正予算ではなく予備費なのでしょう。
ヒアリングには、「国葬(儀)」を閣議決定だけを根拠に実施するのは、行政権の逸脱ではないかと指摘する部分もありました。動画よりかいつまんで引用します(26分過ぎより)。
国対ヒアリング「国葬問題」「旧統一教会と政府与党との関係」 - YouTube
小西・参院議員:(「国葬儀」とは何かについて)岸田総理は7月19日にこう答えているんですが、「閣議決定を根拠として、行政が国を代表して行う」と。ここで言う「国」には国民や国会は含まれるんですか?
富永・内閣府国葬儀事務局参事官:えー、ちょっとそこは……。
小西:私が訊いているのは、主権者である国民と、みなさんがやろうとしている「国葬」ないし「国葬儀」との関係なんです。唯一の国民代表機関であるわれわれ国会との関係です。これを答えられないんだったら、「国葬儀」は何か、ってことが永遠に謎のままになります。それを今答えられないということ自体、岸田政権がいかに国民と国会を無視しているかという証拠です。私は内閣府の総務課長から「国というのは、当然国民や国会が含まれるとしか考えられません」と説明を受けています。であるなら、国民や国会が行う葬儀が「国葬」のはずです。にもかかわらず、内閣の判断(閣議決定)だけで、安倍氏の国葬儀を行うと決めていいんですか? その法的根拠は何ですか?
富永:それはまさに「行政の作用」として行うという認識ではないかと。
小西:行政のあり方を決めた「内閣法」という法律があって、その1条2項ですね。「内閣は行政権の行使について、全国民を代表する議員からなる国会に対して連帯して責任を負う」とあるんですね。だから、「国葬」「国葬儀」は内閣が行う行政権の一環ですから、これを行うにあたっては、当然国会に対して責任を負うわけですね。国会を含む国家の葬儀をするのに、なぜ内閣の判断だけでそれが許されるのか、説明してもらえますか?
富永:これは「行政の作用」として行うわけですが、国会への説明というのは、それはそれで(別途)あるものと……。
小西:国会に対する説明ではダメで、憲法による原則というのは、法律によるんだということですね。内閣は、国会が定めた法律に基づいて行政を行わなければならない。……
「行政の作用」――何かまた、妙な単語を持ち出してきましたが、「立法作用」や「司法作用」など、「国家の作用(権力行使?)」の一構成部分を「国家の作用」に格上げして、恣意的に行政裁量の幅を拡げ、曖昧な全能(オールマイティ)感をもたせているように思います。結局のところ、「国葬」を行う根拠は、具体的な法律ではなく、岸田首相の判断以外にはないことになります。最近の世論調査では、「安倍氏国葬」に反対する意見や疑問をもつ人は、国民の半数を超えています。世論の賛同の裏付けのないことを首相の判断で行おうというのですから、これはもはや「民主主義国家」でも「法治国家」でもなく、「人治国家」でしょう。
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