ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

岸田劇場・第二幕 幕引きに四苦八苦

※タイトルを改めました。
 内田樹さんがtwitterに安倍国葬に反対する理由は、「この政治家が日本の国益を深く損なったと判断しているから」として、2年前に自ら書いた記事を引いています。既読感はありましたが、一通り読んで、改めて安倍氏の所業の罪深さを感じました。平たく言えば、安倍氏は、国民に道徳を説く(べき)権力者が、権力者であるがゆえに自身の道徳性は問われないというご都合主義(でたらめ)を国民こぞって受け入れさせた、そういう「教育」を「見事」に施したということだと思います。
安倍政権を総括する - 内田樹の研究室

……私たちは今はもう政治家であれ、官僚であれ、財界人であれ、指導者たちが「国民全体の福利」をめざして行動しているということを信じていない。彼らは自分の仲間、手下、支持者、縁故者、そしてもちろん自分自身の利益のためにその権力を活発に行使するが、全体の利益のためには行使する気がない。そのことを私たちはもう受け入れている。
「権力を自己利益のために使うことができるということが、『権力を持っている』ということである」というシニカルな同語反復を人々は「リアリズム」と呼んでいる。
 たしかにこの信憑は真実の一端を衝いてはいる。というのは、どれほど権力があっても、合理的な根拠に基づいて、適法的に判断を下す政治指導者は国民からは畏れられないからである。そのような指導者は尊敬され、信頼されることはあっても、恐怖の対象にはならない。私たちが畏れ、顔色を窺い、その内心を忖度するのは、あいまいな根拠に基づいて、首尾一貫性のない政策を、法律を無視して実行する政治指導者である。合理性も首尾一貫性も適法性も意に介さない態度を私たちは「強さ」と解釈する。
 安倍晋三は政治指導者に道徳的なインテテグリティを求めてはいけないと国民に繰り返し教え込んだ。それは別に安倍が個人的属性としてきわだって邪悪な人間だったからではない。「権力者が畏怖されるためには道徳的インテグリティはむしろ邪魔になる」ということを彼がどこかで学んだからである。つねに正直であることよりは嘘を織り交ぜることの方が、つねに論理的であるよりはしばしば没論理的であることの方が、次の行動が予見可能である人間であるよりは何を考えているかわからない人間であることの方が、権力基盤は安定するという経験知を彼はどこかで身に着けた。
「勝ったものは正しかったから勝ったのだ。多数を制した党派は真理を語ったので多数を制したのだ」という現実肯定のことを現代人はいま気の利いた世間知だと思い込んでいる。実際に私が国政について発言をすると「じゃあ、あなた自身が国会議員に立候補して、自分で国政に関与すればいいじゃないか。それができないなら黙っていろ」というタイプの「批判」が来る。
「権力批判は自分自身が権力者になってからしろ」というのは言い換えると「現在のシステムを肯定して、そのルールに従ってキャリア形成を遂げて、システムに完全に適応するまでシステム批判をしてはならない」ということである。「現状批判したければ現状肯定しろ」という悪魔的なロジックを彼らは弄んでいるわけだけれど、それがでたらめであるということにいまの日本の若者たちはもう気づいていない。……

 うろ覚えですが、むかし教員をしていた頃、生徒に経済学者・浜矩子さんの「アベノミクスはアホノミクス」という記事を読んで論評、というと大げさですが、意見を書いてもらったことがありました。金融・財政政策を一通り勉強したあとなので、授業のまとめの意味を込めたつもりでしたが、タイトルの刺激性(攻撃性)に反応したのか、一人の生徒が「何もやらないよりはマシ」とだけ書いていたのを思い出します。含意はわかりませんが(その程度の政策であって、評価に値しないという意味かも知れませんが)、「現状批判」や「権力者批判」につながることは最初から考えないという回答のように思えました。こういう反応が主流かどうかは何とも言えませんが、内田さんが言うように、「勝ったものは正しかったから勝った」という妙な理屈にとらわれている人が決して少なくないというのは、学校で働いていた頃に小生も感じていたことです。

 しかし、2年前に安倍首相が辞任した当時と、今は政治状況が一変しています。一般にはほとんど知られていなかった統一教会と、安倍氏自民党の昵懇ぶりが明らかになったことで、権力者たちが「国民全体の福利」「全体の利益」のためよりも、自分自身、自分の仲間、手下、支持者、縁故者らの利益のために権力を行使するという図式が、実はそう単純ではなく、外国勢力のカルト集団とウィンウィンの関係があることもわかってきました。さすがに多くの国民もこれには驚愕していると思います。

 統一教会的な世界観が憲法改正や「子ども家庭庁」問題に色濃く反映されているのではないかという疑念は、もう「疑念」ではなく確定的事実と言ってもいいくらいですが、他にも、たとえば、皆野未來さんがTweetしていますが、北朝鮮のミサイル発射と安倍政権とのつながりもどうなのか。統一教会文鮮明北朝鮮金日成が義兄弟の契りを結び、反共団体のはずの統一教会共産主義国家のはずの北朝鮮とつながっていたという驚くべき事実は、すでに報道されているとおりですが、これは統一教会を介して安倍氏北朝鮮とのパイプをもつことをも意味しているわけで、政権が苦境に立ったり国政選挙の前になると、タイミングよく北朝鮮からミサイルが発射されたことについては、裏でつながっているのではと前から揶揄されていましたが、これは実は冗談や陰謀論ではなかった可能性大です。これで、安倍氏の「国葬」をとり行うというのは、何かのまちがいか、あるいは、それは「売国葬」ではないのか、と言いたくなります。
皆野 未來🇯🇵🇵🇹🍰(a.k.a.mikuchan)🐤🐧🇹🇼 on Twitter: "安倍晋三政権下 https://t.co/DZwNJES1ST" / Twitter

 8月31日、国会前に4,000人もの人が集まりました。
「“国葬”閣議決定撤回を」反対の市民グループ 国会前で集会 | NHK | 安倍晋三元首相 銃撃

――国葬に反対する人々が連日国会前に押し寄せている状況に動揺したのか、岸田首相はついに国会で自ら「説明」すると言い始めました。もちろん、いくら一方的に作文を朗読して、「丁寧な説明」だと称しても、盆休み前の記者会見のごとく、質問にも応じずに逃げ去れば、アリバイどころか、かえって事態が悪化しかねません。
 かように葬儀委員長は幕引きにドタバタしていますが、「愛国葬」か「売国葬」か、「悲劇」か「喜劇」か、岸田劇場・第二幕は始まったばかりだと思います。





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