外交関係の良し悪しは、国家間の関係とはいえ、人間同士のやることですから、個人の関係とその蓄積に左右されるでしょう。首脳同士の仲が良ければプラスでしょうし、かりに多少折り合いが悪くても、一般市民やモノのレベルで互いの行き来があり、その意味で関係が「緊密」ならば、大騒ぎすることはないかもしれません。
しかし、今の日中関係は、首脳同士は「険悪」で、人とモノの行き来も限定的です。過去に何度も「最悪」と称された時期を経ての今日ですが、経済面に限れば、ここ20年くらいでは、尖閣問題のときよりも冷え込んでいるかもしれません。
高市首相はここのところ首脳会談に忙しく、先週の19日、韓国で李在明 イジェミョン 大統領と会談したのに続き、28日には来日中のフィリピンのマルコス大統領とも会って、安全保障上の協力を強化することで合意したと伝えられています。韓国やフィリピンと良好な関係を保つことに異議はありませんが、しかし、どう考えても、現状で真に会談が必要な相手は中国なのでは、と考えざるを得ません。肝心の「本丸」には近寄れないので、「二の丸」、「三の丸」で我慢している、というより、閉ざされた城門が開くまで外で待たされている状況に近いかもしれません。
対中経済で日本に「不況」をもたらしたきっかけは高市の「台湾発言」です。習近平 シージンピン 国家主席は高市のこの発言(認識)について、相応の謝罪か取り消しを目して自ら動き出さない限り、関係修復をする気はないと思われます。嫌中で満足している人たちは別ですが、大きな経済的損失を被ったままの人たちには、「こちら(日本)は門戸を開いてます」などと、相手の出方をうかがっている段階ではないと、強く言いたいところでしょう。
韓国の李大統領との「シャトル外交」は順調のようですが、「女性自身」の記事によると、その「順調」さの背後にはこんな心理が働いているという「憶測」もあります。
高市首相 韓国・李大統領と“過剰な親密ぶり”の裏で…米中首脳会談の成功に激怒していた | 女性自身
……高市首相に近い永田町関係者はこう語る。
「5月19日の日韓首脳会談は、トランプ米大統領が中国の習近平国家主席と会談した直後に行われました。高市さんは米中首脳会談が成功に終わったことに対して、激怒していたのです。
北京の人民大会堂前で習主席が出迎えて手を差し出すと、トランプ大統領も何度か両手を添えながら握手。双方とも難題は棚上げしていたものの、友好ムードを演出していました。さらにトランプ大統領は帰国後、『中国訪問は大成功だった。歴史的な瞬間だった』などと、記者団に成果を強調したのです。
そうした2人の姿を見た高市さんは不満を隠さず、非常に不機嫌だったといいます。3月に訪米した際は、トランプ大統領に抱きついてまで親愛をアピールしていただけに、“裏切られた”といった思いがあったのではないでしょうか。
その直後に日韓首脳会談で親密ぶりを見せていたことについて、周囲の関係者からは“トランプ大統領への当てつけだったのでは”といった声も上がっているのです」……
これは周囲や記者の「憶測」ですから、何とも言いようがありませんが、対中関係が好転しない分の反動はあるでしょう。高市の夫の故郷・福井県のメガネフレームを李大統領にプレゼントして、大統領が試着すると「似合う! 似合う!」と大喜びし、代わりに大統領のメガネを借りて自分でかけて、写真撮影をうながしていた、とか、共同記者会見で高市が「次回は日本にお越しいただいて。(場所は)温泉にしようかな」などと語った(実際、次の会談場所として「カラオケのある温泉旅館を探している」そうですから)との話があります。ちょっと舞い上がり気味ですが、これは「デート」ではなく、外交ですから、今後、徴用工問題、竹島問題など、関係を疎遠にしかねない問題が持ち上がったときに、そんな感覚で「勝負」というか、良好な関係を維持できるのかどうか。
蛇足ですが、「高市激怒」といえば、オーストリア訪問の帰りの機内でこんな一幕があったという投稿も目にしました。情報の出所が定かではないので、真に受けてよいのかどうか。でも、普段の様子からはありそうなことではあります。
https://x.com/takesiyama/status/2059780102964322315
日中関係とは直接関係ありませんが、昨日の新聞にちょっと興味を引かれる記事がありました。今週の半ばに経済産業省と外務省の幹部がロシアを訪問したというニュースをTVで見た覚えがあります。その時は、ん!? と思いつつ、先のことまで考えていませんでしたが、昨日記事を読んでいて、納得するとともに、政府内に外交の統括役というか、「目利き」がいないのではないか、という感想をもちました。長くなるので、要約プラス引用です。
日露:訪露、揺らいだ政府 「成果なし」参加企業嘆き | 毎日新聞
<記事の冒頭部要約>
今回、日本の訪露団と面談したのはロシア経済発展省、産業貿易省、経済団体で、政府は事前に、大手商社や重機メーカーら日本企業に役員クラスの参加を求めたそうです。しかし、事業内容を数分説明した程度で、関係者によると、「行って得られたものは何もなかった」「ロシアに頭を下げてお願いする案件はないが、政府から声がかかったため、仕方なく参加した」「訪問を主導した経産省との関係悪化はビジネスの面から避けたかった」ということです。
<以下は記事からの引用>
……そもそも政府はなぜ訪露を計画したのか。ロシアによるウクライナ侵攻後、日本は欧米とともに経済制裁を科している。一方で、日本の大手商社が参画するロシア極東での石油・天然ガス開発事業「サハリン2」は制裁の対象外だ。
中東情勢の緊迫化で、政府内には「エネルギー調達の観点から日本はロシアとの関係は切れないし、やりとりするのは当然だ」(経済官庁幹部)として、ロシア産資源の調達維持・拡大を期待する声もある。
しかし、5月中旬にロシア外務省は今回の訪問を「無意味だ。日本政府がロシアに残る日本企業の利益を真に守りたいならば、政治環境を整備することだ」などと反発していた。
訪露の意義が根本から揺らいでおり、結局、今回の訪露ではサハリン2など個別事業について議論はなかったという。
ある参加企業はは「米国のトランプ大統領によるロシアとの関係修復の動きが見られた中、日本政府として企業のロシアでのビジネスをお膳立てしたかったのだろう」と政府の意図を推し量る。その上で「今のロシアに大きな投資をしたい企業があるのか」と疑問視する。……
……今回の訪露を巡っては政府の情報発信も迷走した。今月8日に毎日新聞などが政府と企業による訪露の方針を報道すると、翌9日に経産省のⅩ(ツイッター)のアカウントが反応した。「政府がロシアに経済訪問団を派遣するとの報道があるが、そうした計画はない」と投稿し、明確に否定した。
ただ、直後に二つの投稿を連投し「5月末にも政府職員が出張し、ロシア側と意思疎通を図る方向で調整中。関係企業の同席をあり得る」などと官民での訪露を事実上認めた。
一方、内閣広報室のⅩアカウントは経産省の一つ目の投稿のみ引用し「経産省が『そうした計画はありません』と発表した」と露骨な火消しに走った。このアカウントは、経産省出身の佐伯耕三内閣広報官が運用している。
日米欧が協調してロシアに経済制裁を科す中、野党党首からの「日本の外交姿勢との整合性が問われる。誤ったメッセージになりかねない」などの批判を意識したとみられる。
政府による一連の投稿を受け、Ⅹ上では「誤報」などと報道機関への批判が上がったが、「いかにも官僚的なごまかした言い訳」など政府の発信を批判するコメントも相次いだ。
最終的に赤沢亮正経産相が26日の記者会見で幹部職員のロシア出張を認めた。ふたを開ければ、13の企業・団体幹部が同行しており、事実上の経済訪問団だった。
政府による一連の情報発信のまずさに参加企業は嘆息している。訪露した企業関係者は「呼びかけ役だった経産省がⅩで自ら火消しに走って驚いた」とあきれながら、こう付け加えた。
「政府と訪露しても企業名が出て評判を落とすリスクしかなかったし、今回のような訪露は当分ないだろう。企業は日ごろから頻繁にロシアに行っており、政府を通す必要性なんてほぼないのだから」
首脳の外交パフォーマンスの裏で、官僚の方は実務をしっかりこなすはずだと思っていたのですが、これは何とも惨憺たる内容です。「高市外交」などと呼べる「体系性」はおそらくないと思いますが、この失態は現政府が首相も官僚も緩んでいる証拠のような気がします。
ブログでも何度か書いているように「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」とか、大言壮語はいいから(というか本人も口にしなくなりましたが)、まず対中関係の改善にエネルギーを注ぐべきと思います。
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