読売ジャイアンツの阿部監督の辞任に驚いた人は多いと思います。ほんとうに世の中、一寸先は闇と申しますか、関係者には一夜にして目の前の風景が一変したことでしょう。
一昔前だったら家族の痴話のレベルですが、今はDV(家庭内暴力)に対する世の視線が敏感なことを痛感させられます。元々は阿部監督が娘にカッとなって暴力に及んだのがきっかけですが、それでも、警察に逮捕されるまでの過程には、いくつもの岐路があったでしょう。娘がAIに対応を質問しなかったらどうなっていたか。娘の相談を受けた児童相談所が警察に通報しなければどうなっていたか。そしてまた、警察は逮捕以外に選択肢はなかったのか。それぞれが「最善手」だったかどうかはわかりませんが、その時々のそれぞれの持ち場で「忖度」なく「合理的」な判断があったのでしょう。しかし、それらが積み重ねられた結果は、誰も幸せにしない結末となった。昭和の時代の出来事だったら、せいぜいが謹慎でしょう(逮捕されることもなく、翌日もベンチに入って試合の指揮をとっていたかもしれません)。今後も暴力自体が肯定されることはないと思いますが、ある側面では、AI時代の怖さというか、(機械的)合理性への警句のような出来事に思えました。
巨人・阿部前監督辞任問題 相談はしたいけど警察に通報しないでほしい意思を示したら対応は変わったのか: J-CAST ニュース【全文表示】
巨人・阿部慎之助監督の逮捕 暴行を受けた長女が児童相談所に通報...「ちょっと珍しい事例」と弁護士: J-CAST ニュース
しかしながら、ノスタルジックに昭和の方がよかったなどと言いたいわけではありません。ただ、政治やジャーナリズムの分野に限っては、今よりも昭和の方がもうちょっとましだったと思えることはあります。たとえば、今で言えば、高市首相の中傷動画問題とその追及です。土曜のAERAの記事の見出しは「テレビ・新聞も報道し始めた……」です(失笑)。この件は国会で野党の質問が続いていますが、主要なTVや新聞の扱いは相変わらず「小さなまま」です。
上のAERAの記事の中でベリーベスト法律事務所の三葛敦志弁護士はこう述べています。
テレビ・新聞も報道し始めた高市首相陣営「中傷動画」問題 元国会議員秘書の弁護士が語る「アウト」と「セーフ」の境界線 (AERA DIGITAL) - Yahoo!ニュース
……「少し前から、選挙がネットのおもちゃにされる現状が続いています。さらにネット関連には相当なお金が動いているようです。自民党総裁選は公職選挙法の適用を受けませんが、衆院選など適用対象の選挙でも、ネット上の動きに対しては現状ほぼ無力です。投稿される内容も年々過激なものになり、虚偽の内容も少なくありません。私は2021年まで山尾志桜里氏の議員事務所で働いていましたが、当時ネット上にあふれていた言動ですら、今から見ればまだマイルドでした」……
……「名誉毀損や侮辱、虚偽の事項を広める行為は当然違法になり得ます。実際、世の中に氾濫する政治系の動画のなかには刑法の名誉毀損罪や侮辱罪にあたるようなものも相当程度あると感じます。一方、公人である政治家に対する言動は名誉毀損や侮辱に当たるかどうかのハードルはかなり高くなる。今回報じられているような『プロのクレーマー』とか『国を壊した素人』、あるいは『売国』『(当選したら)日本が終わり』という内容ならば、本当に高市陣営が主導していたとしても内容自体は表現の自由の範疇と考えられ、違法にはなりづらいでしょう」……
……「大量の動画を作成・運用する費用はもちろん、こうしたネガキャン動画では、金銭を投じて爆発的に拡散するように『ブースト』をかけていると思しき例も少なくありません。政治活動において、一般的な動画制作やSNS戦略としてお金を支出すること自体は違法ではありませんが、そのお金はどこから出ているのかは問われます。例えば裏金から支出され、収支報告もされていないようなことがあれば、当然違法性が出てきます」
……「現状の制度では、政治活動として使えるSNSやネット広告費は事実上青天井に近く、一定の歯止めを考える必要はあるでしょう。また、日本では政治動画や政治広告を誰が出稿しているのか見えにくく、ステルス広告も多くあるようです。個人を装っていたり、匿名で投稿されたりしていたものが実は陣営主導だったということもあり得るわけですから、やはり透明化していく必要があるでしょう。また、別の論点として、選挙期間中はSNS動画の収益化を停止する仕組みや、AI生成動画に明確な表示を義務づける制度も検討されるべきだと思います」
高市が答弁すべきことは、自分と自分の事務所が低俗な中傷動画の作成を第三者に依頼したかどうかはもちろんですが、それよりも、ネット広告のあり方や事実上青天井になっている広告料にどう歯止めをかけるべきかで、現状では金を出せる側が大々的にネガティブ・キャンペーンをはれば、選挙で圧倒的に有利になるわけですから、こんな不公平を是正する方が、総理大臣として取り組むべき重要度が高いでしょう(自分の疑惑隠しばかりに夢中で、自身の立場がわかっていません)。
もっとも、PR戦略に高市がつぎ込む資金は桁違いで、2024年の総裁選では石破が40万円程度だったのに対し、高市は何と8,000万円だったといいます(目がテンになります)。
総裁選の宣伝費で高市陣営は石破陣営の200倍! とてつもない格差を石破前総理はどう考えていたのか(全文) | デイリー新潮
いったいこんな大金をどこから……? そう考えただけで、高市にまつわるスキャンダルは芋づる式につながっていきます。阿部監督の辞任報道にこれほどのエネルギーを注げるのに。この扱いのギャップには、普通に考えたら驚くほかありません。
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