ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

盛山文科大臣をめぐる記事

 昨日の毎日新聞の「日曜くらぶ」に掲載されている2つのコラムに偶然同じ政治家のことが取り上げられていました。編集者的には、重複するのは好ましくないという思いがあるかもしれませんが、事が事だけに敢えて掲載したというところでしょうか。
 まず、俳優・松尾貴史さんの記事「ちょっと違和感」。3回に2回くらいは政治がらみの松尾さんの「違和感」が綴られますし、毎週楽しみにしながら読んでいるので、小生としては特に「違和感」はありませんが、もう一人の、心療内科医の海原純子さんの記事「新・心のサプリ」の方は、政治家の名前が出て来ることはあまりないので、これはある意味「深刻」な事態と受け止めています。問題は、その「深刻」さを当事者達がまともに受け止める気がないということです。

松尾貴史のちょっと違和感:文科相の重責 「過去はともかく」では済むまい | 毎日新聞
新・心のサプリ:情けない発言=海原純子 | 毎日新聞

 松尾さんの記事から一部引用すると、
……宗教法人の解散命令請求を申し立てた文科省のトップが、問題になっている宗教団体と密接につながっているという異常さを、与党の議員は屁(へ)とも思っていないのだろうか。
 盛山文科相は、旧統一教会の関連団体との事実上の「政策協定」に当たる「推薦確認書」に署名したかどうかについて国会で追及されると「記憶にない」を10回以上も連発するなどして逃げている。しかし、証拠(自身の署名入り)の「推薦確認書」の写真を見せられると「うすうす思い出してきた」などと答弁をしたり、あるいは「内容をよく読まずサインしたかも」などととぼけたり。その翌日には「記憶にない」との答弁に戻ったりと、頭の中が混濁しているようだ。こんなに記憶力がなく、書類の内容をよく見ずにサインをしてしまうような人物が、大臣でいていいわけがない。
 岸田首相による「過去の関係はともかく、現時点では当該団体と一切関係がない」などというかばい方は、あまりにも稚拙かつ乱暴だろう。暴力団との密接なつながりがあっても「もう付き合わないから」と言って公的な重責を担う人がいたら、問題なしとはならないだろう。ましてや、現在大問題の焦点になっている宗教団体が相手なのである。政治家は「過去の関係はともかく」で済まされる仕事ではない。
 そして今度は、旧統一教会と盛山文科相がまだつながっていることが早々と明らかになってしまった。教団系の機関誌「世界思想」が毎月、神戸市にある盛山氏の地元事務所に「無料で」届けられていることが分かった。旧統一教会の関連団体から衆院選で推薦状を受け取っていたとされる問題を巡り「旧統一教会との関係は既に断ち切っている」と否定していたのは真っ赤な大うそではないか。機関誌の受け取りは「記憶にない」では言い逃れられない。
 しかしそれでも、与党と維新は盛山文科相不信任決議案を否決した。……

 他方、海原さんは、こう書いています。
 1986年に施行された男女雇用機会均等法の成立など日本女性の地位向上に力を尽くし「均等法の母」と呼ばれた赤松良子元文相が2月はじめに亡くなった。
 その日の新聞には現在の文部科学相盛山正仁氏が2021年の衆院選で旧統一教会側と事実上の「政策協定」に当たる推薦確認書に署名したとされる問題が掲載されていた。報道によると、「サインしたかもしれない」と述べたという。ただこの発言は、その後「記憶が全くない」と修正されている。
 なんだか情けない感じがしたのは私だけではないと思う。たくさんの人と会っていると記憶にないことはあるだろう。記憶力がどんなに良くてもすべての人を覚えていることなどありえない。ただ仕事上の大事な契約相手となると話は別だ。
 政策協定は政治家にとり最も大事な自分の基盤だと思う。自分の考え方、自分の生き方の基盤になるものだ。そんな大事なことを覚えていないというのはどういうことだろう。
 人間の記憶には限界がある。本当に覚えていないなら考えられる理由はいくつかあるがひとつは、政策協定より大事なことに意識が集中して政策など二の次になっていた場合だ。政策より大事なことというのは何だったか、というと選挙の支援をしてもらうことだろうか。理由はどうあれ大事な政策に関する内容を忘れる人が大臣なのか、と思うと情けない気持ちになってきた。
 同じ日の紙面で赤松元文相の訃報を知り、当時、政治に対して私たちは、希望と期待をもっていたなあと思い出していただけに、このままでいいのだろうかと思った。……

 盛山文科相不信任決議案が否決されたので、「負け惜しみ」というか「腹いせ」ついで言うと、政治的な「損得?」を考えれば、このまま盛山大臣に大臣を続けてもらっても、野党側にとって「損」にはならないかもしれません。万一、盛山大臣や文科省がウラで統一教会に有利に働くようなことをしでかせば、「それ、見たことか!」と批判できますし、統一教会側からは今後も盛山大臣、岸田首相、その他関係議員の過去の醜聞を暴露する情報リークが続くでしょう。ダメージは今後も引きずられていきます。
 盛山大臣を「続投」させるのは、野球でストライクが入らないノーコンのピッチャーを替えず、四球・押し出しが連続していくようなものです。勝負に関しては相手チームは全然困りません。ただし、それでは選手はやる気が失せますし、観客もそんな試合は見たくもないでしょう。監督がピッチャーを替えない限り、まともな野球の試合にはなりえません。それでも観客の関心を散らしながら(ゲームからそらして)、ピッチャーを替えない監督というのが今の岸田首相なのでしょう。

 松尾さんは、「子どもたちの教育について最も責任ある立場に、こんな人物を就かせ続ける岸田首相も無能と言わざるを得ない」とキツい一言で結んでいます。「無能」というのが、言いすぎでもないと感じたのは、先日の衆院予算委で、答弁に立った鈴木財務大臣が、政治資金収支報告書に記載されず、政治活動に使わなかった収入について、納税するかどうかは、「疑義を持たれた政治家が……判断されるべき」と述べたというニュースを見たからです。まったく常識を疑う発言です。これも任命したのは岸田首相です。
鈴木財務相 政治資金問題 “納税行うかは議員が判断すべき” | NHK | 政治資金
鈴木財務相「納税行うかは議員が判断すべき」発言に怒り爆発の人続出。「国民も納税は自己判断でいいってこと?」 | ハフポスト NEWS

 むかし、1989年の東欧革命後、ポーランドで行われた総選挙の集計の(たぶん)途中経過の模様を映す衛星中継を見ていた時、いわゆる「与党」候補の当選がゼロで驚いた記憶があります。この国で、そんなことは起こらないのかも知れませんが、そういうことにでもならないと、自民党はこの腐敗・堕落を自ら正せないのだろうかと思ったりします。

 海原さんの結びの言葉も引用させてください。
 改革と前進することができたのは政治家の決断と変えようとした一般人の声があったからだと思う。
 いま報道で見聞きしている答弁は政治に対する希望を失わせる内容ばかり。こんな時代、自分なりにできることは、「それはダメです」と声をあげることかと思う。



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