ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

山際大臣は辞任したけれど……

 記憶はしないけど予知はする。自身の不都合な過去は忘却するが、不都合な未来は前もって的確に言い当てることができる――昨日の衆院予算委で、新たに出てきた旧統一教会幹部との集合写真を示され、「ご自身で予言を的中させましたね」と立憲の後藤祐一議員から先週の答弁(「これから新しい事実が出てくる可能性がある」)を皮肉られた山際大志郎経済再生担当大臣。昨晩とうとう岸田首相に辞表を提出しました。当人のこの間の答弁の惨さは特筆ものですが、そもそも8月の内閣改造で、萩生田氏ら他の壺大臣とともに閣外に去り、再任されるはずではなかった人物をわざわざ任命し、ここまで引っ張ってしまった岸田首相の責任は重大です。

 山際氏は主に「経済再生担当大臣」という肩書きで紹介されますが、他にも「新しい資本主義担当大臣」・「新型コロナ対策・健康危機管理担当大臣」・「全世代型社会保障改革担当大臣」・「内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)」などを兼務しています(驚くべきことです!)。こんなにいくつも兼任していて記憶があいまいでは仕事にならないと思えば、ふつう文書は保存するでしょうに(みんなやってることです)、事務所の人に言って、1年ごとに前年の資料をすべて処分させるというんですから、どんなスーパー大臣なんでしょうか! 「新しい資本主義」やコロナ対策は、記憶があいまいな方がいい仕事ができるってことでしょうか?(過去の「古い」資本主義を気にしない大臣が語る「新しい」資本主義って、何? まあ、他人任せだからいいんでしょうかね)
 辞任後のぶら下がり会見でも「資料を1年ごとに大体かたづけてしまってきたので、どうしても自分自身で過去の出来事を調べられない状況にあった」などと懲りずにまだ同じことをくり返していましたが、このような人物を組織の頭において、腰を据えて国策の議論をするなど到底困難です。

 岸田首相はどうして山際大臣をここまで引っ張ったのでしょうか。
 宮武領さんがブログ「Everyone says I love you !」の10月24日付記事に書いています。引用をお許しください。
【どんだけ往生際が悪いねん】山際大志郎大臣がやっと辞任。統一教会と「付き合いがそれほど深くなく、自分の中に記憶が残っていなかった」(呆)と最後っ屁。岸田首相の無能無策の象徴で、任命責任は重大だ。 - Everyone says I love you !

……岸田首相が山際大臣を更迭できなかった理由は、山際氏の辞任を認めてしまうと「辞職ドミノ」になるからだと説明されていますが、それだけではないでしょう。
 2021年9月の総裁選で、岸田首相が最後に勝てたのは安倍晋三麻生太郎甘利明の3Aの力があったればこそ。
 そして、麻生派の重鎮でありながら麻生派河野太郎候補ではなく岸田首相を推すことをいち早く決めた甘利明氏に、岸田首相が頭が上がらず、最初に幹事長に模したわけですが、その甘利氏の弟子とさえ言われる山際氏を入閣させ首も切れなかったというのが本当のところです。
 しかも、安倍首相でもできなかった原発の新建設さえ認めるという岸田首相の超原発推進路線の中で、甘利・山際両氏という原子力ムラの住人が非常に重要な役割を果たすはずだったのでしょう。
こんな記憶力のない大臣に経済再生なんか担当できるわけがない。福島原発事故のことも忘れたんだろう。まず自分の記憶を再生しろ。
原発新増設でついに牙を剥き出しにした岸田文雄首相。統一教会との癒着がミエミエだった山際大志郎経済再生担当大臣を再任したのも、原子力ムラ住人の甘利明氏の一番弟子と言われる原発推進派だからだ。

 右派の支持を取り付けたいという私利私欲で安倍国葬を強行して、日本の政治を分断し停滞もさせた岸田首相。
 この山際大臣を筆頭とする統一教会癒着議員たちを放置していることで、どれだけ日本の政治に支障をきたし、国会と国民のエネルギーと時間を無駄に費やしたかわかりません。
 山際大臣をここまで引っ張ったのが辞職ドミノを嫌がってでも、原発推進のためでも、結局、岸田首相の自己都合のためだけのことでないですか。
 こんなに内閣総理大臣にただなりたかったというだけの我利我欲だけがあって、首相になって何か市民のためにしたいことが全くない総理大臣は有害無益です。
 辞職ドミノというなら、岸田内閣の総辞職までいかないと、とばっちりを喰らいっぱなしの我々有権者が可哀そうすぎます。
<以下略>

 山際大臣の選挙区は神奈川18区ですが、調べてみると、2009年の衆院選挙では落選しています。統一教会との接点は、それ以前も催し物に祝電を送る程度のことはあったにしても、結びつきが格段に強まったのはこれ以降だと思われます(この点、萩生田氏とよく似ています)。ジャーナリストの横田一さんはこう解説しています。 
【横田一の現場直撃 No.186】◆山際辞任、野党攻勢拍車 ◆謎は深まる下関市立大 ◆長崎知事選刑事告発受理 221024 - YouTube

 横田集合写真で旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の韓鶴子ハン・ハクチャ総裁の隣に並ぶほどの親密な仲ということは、政策協定を含めてどれほどの関係があったのか、細田衆院議長と同じくらい近しい関係だったのではという話もあります。彼は去年の衆院選では、野党系候補が一本化されず、維新と立憲の候補で票が割れたので、当選できましたが、野党候補二人の票数を合計すると逆転されていました*。
*注)山際(自民)120,365票  三村(立憲)90,390票  横田(維新)41,562票
 つまり選挙の地盤が盤石とは言えないわけです。そこで統一教会に近づいていったのではないかということですね。(番組動画の)冒頭で紹介した参院井上義行議員とよく似ています。井上さんは前回の選挙では落選したんですけど、今回(2022年)の選挙は統一教会の支援を受け、8万票くらいあると言われている票が上積みされて当選しました。その見返りに、支援集会で同性婚反対を言っていたということなんですね。これ(新聞1面)は朝日のスクープで、教団が自民党議員と結んだ「政策協定」ですが、こういうものを結んでいたんですね。

 升味統一教会が選挙支援に際して出した)「推薦確認書」をNHKが報道してますが、項目をまとめるとこんな感じになるんですね。

  推薦確認書
 ▼憲法を改正し、安全保障体制を強化すること
 ▼家庭教育支援法と青少年健全育成基本法の国会での制定に取り組むこと
 ▼同性婚合法化などに関しては慎重に扱うこと
 ▼「日韓トンネル」の実現を推進すること
 ▼国内外の共産主義勢力などの攻勢を阻止すること
 ■ 平和大使協議会及び世界平和議員連合に入会
 ■ 基本理念セミナーに参加

 横田これが確認(約束)されると、教団信者から選挙で全面的に応援してもらえるということですね。そうすると井上さんの集会にあるように、勝つことは善であり、負けることは悪であるという宗教的な教えがかかった選挙運動をやって、運動員が朝から晩まで全力投球で働き、(推薦候補の)当選のために尽くすという選挙支援を受けられることになるんですね。

 過去は知らぬが未来の見える男・山際大志郎大臣は辞任しましたが、この先、大臣が何人辞めてもそれで終わりにはなりません。統一教会の意思がどんな形で自民党議員を動かし、日本の国策を左右していたのかはまだ底が知れません。なお解明が必要だと思います。 



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