ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

寺田総務大臣の進退と政界

 旧統一教会と故安倍晋三氏の深いつながりが世に知られてからもう4ヶ月近くになります。その間、安倍氏どころか、国でも地方でも、自民党を中心に多数の議員がこの教団と関係をもち、中には選挙支援と引き換えに政策協定を結んでいたことが明らかになるなど、教団の思惑に日本の政治がどこまで動かされていたのか、底の知れない恐怖感があります。9月頃には、識者の間でも、3ヶ月くらいで下火になるのでは、と沈静化をむしろ警戒する向きもありましたが、そんな気配は感じられません。これは「無尽蔵」ではなく「無尽壺」というべきか、後から後からスキャンダル続出で、これでは延々会期末まで国会審議でこのネタの追及に時間がとられてしまいます。本来は、特別委員会でもつくって別途全容解明をし、円安・物価問題やコロナ第8波への備えなど、喫緊の問題の検討にもっと時間を割かなければならないところです。

 ……という前提で言うと、旧統一教会とのべったりした関係を問われ、記憶喪失答弁で逃れようとした山際前経済再生大臣が辞任したのが10月24日。それから2週間が過ぎた今、次の矢面に立たされているのが寺田総務大臣です。こちらは話が壺から政治資金へと発展、後から後から不正が発覚し、その進退が注目されていますが、もはや「風前の灯火」のように見えます。

 しかし、長年永田町を取材してきた政治記者の鮫島浩さんの目には、寺田氏が今日、明日にも辞任するようには映っていないようで、山際大臣の更迭は、与党が立憲民主党を「ゆ党」に迎える布石(入口)、次の寺田総務大臣の辞任は自公立維の実質4党大連立=翼賛体制の関所(出口)、その先には、立憲・野田佳彦元首相を首班とする、消費税増税のための大連立政権があるとの見立てがあるようです。
 以下は、鮫島さんが主宰する「SAMEJIMA TIMES」の連載記事「政治を読む」の一部引用です。
山際大志郎大臣の更迭は立憲民主党を「ゆ党」に迎えるプレゼント、寺田稔総務大臣の首は自公立維4党体制確立の証のプレゼント?│SAMEJIMA TIMES
野田佳彦首班で「自民・立憲大連立」構想浮上!消費税増税へ大政翼賛体制〜宏池会、財務省、立憲民主党をつなぐ地下水脈│SAMEJIMA TIMES

統一教会問題を追及されながら何もかも忘れてしまった山際大志郎大臣。お茶の間ですっかり有名になったこのダメダメ閣僚を岸田文雄首相が守り続けてきたのは、野党からの追及を彼に一点集中させて政権全体への波及を防ぐ「弾よけ」として都合よく使ったからだった。
その山際大臣を岸田首相が一転して更迭したのは、彼が「用無し」になったからである。山際更迭の直前、自民党公明党立憲民主党日本維新の会の4党は、統一教会の被害者救済法案を4党で協議・決定する場をつくり、今国会で成立させることで合意していた。
この4党協議の枠組みが出来た以上、与野党交渉の主舞台は国会審議から4党協議の場へ移る。岸田首相にすれば、4党の水面下の協議を通じていくらでも野党を懐柔できることになったのだ。つまり、国会の表舞台での追及をもはやそれほど恐れる必要はなくなったのである。
むしろこれからの4党協議を円滑に進めるためには、立憲に国会論争の「成果」を献上し、立憲が世間から「与野党の談合だ」という批判を受けないように配慮することが必要だった。

<中略>

岸田首相が4党体制の入口で立憲に捧げたプレゼントが山際大臣の首としたら、今国会における4党協議の出口で差し出すのは、政治資金問題で追及されている寺田稔総務相の首ではないかと私はみている。国会最終盤に29兆円の補正予算統一教会の被災者救済法案を成立させる土壇場で、寺田総務相を更迭し、立憲に花を持たせるのではないか。
寺田総務相の政治献金問題は週刊文春が厳しく追及してきた。なかでも後援会の会計責任者が故人であったという事実は、政治資金収支報告書の信憑性を根底から揺るがす問題だ。
しかも総務省は政治資金を所管する官庁である。そのトップの大臣が自らに関する政治資金収支報告書で大きな疑念を向けられ、国民を納得させる説明ができないようでは、もはや地位にとどまる資格はない。即刻辞任すべきであろう。
岸田首相もそのくらいは承知している。ここから先は山際大臣と同じだ。「大臣の首」は貴重だ。それを差し出すタイミングはしっかり見極めないといけない。最も効果的な局面で首を切るのである。
これは補正予算や被害者救済法案が成立する国会最終盤の可能性が高いだろう。それまでは寺田総務相に「弾よけ」として居座ってもらい、最後の最後に立憲の国会論戦の成果となる「捧げ物」としてお務めしてもらう。山際大臣と同じ使い方である。
……
自公立維4党体制を確立する狙いが、最大派閥・清和会による自民党支配を終焉させ宏池会時代へ移行させることにあるのなら、さらには4党体制の究極の目的が財務省の悲願である消費税増税の実現にあるのなら、寺田氏は一役買うことには大きな抵抗を感じないのではないか。
いずれにせよ、国会最終盤に向けて立憲は山際大臣の次なるターゲットとして寺田総務相を吊し上げる「演出」に力を入れるに違いない。これは統一教会問題から徐々に世間の関心をそらす効果もあろう。

<中略>

立憲は共産、社民、れいわ新選組との野党共闘を見限り、反目し合ってきた維新と国会共闘で合意し、統一教会の被害者救済を名目に自公立維4党で政策を協議するテーブルを作った。すでに救済法案の今国会提出で合意し、他の野党を外して4党で物事を次々に決めていく「与ゆ党体制」が動き出している。
 国会で静かに始まった地殻変動をマスコミはほとんど報じていない。しかしこれは国会が与党一色に染まる大政翼賛体制への序章だ。息絶え絶えの岸田政権に立憲が救いの手を差し伸べたことで、当面は内閣総辞職衆院解散もなく、支持率低迷にあえぐ者同士が手を握る「与ゆ党体制」が続くだろう。その先に見えてくるのは4党による大連立だ。水面化で密かに構想されているのは、野田元首相を首班に担ぐ「消費税増税内閣」である。
(※「サンデー毎日」の記事の冒頭)

 財務省の一部にそうした構想をもつ人がいたとしてもおかしいとは思わないので、それはそれとして注意して見ていかないといけないとは思います。しかし、これは自民党にとっては「パイの分け前」を立憲にも譲るということを意味するわけで、できれば独占したいところを、公明党(だけ)は組織的な選挙協力が得られるから譲歩して連立を組んでいるのであって、政権維持のためだけに立憲に協力するなどということ(暴挙)を、果たして自民党の他派閥が許すだろうかという疑問があります。それは立憲側にとっても同じことでしょう。素人考えでは、むしろ、自民党が(一時的に?)割れてどこかと連立するという可能性の方があるように思うのですが……。




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