ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「インバウンド」報道に思うこと

 今日は短く。
 今年の秋は寒暖差が大きく、天候もまずまずの日が続いたためか、家の周りの楓(まだ1/3くらい)や銀杏が紅葉していて、毎日楽しく眺めています。昨日、土日に北関東を旅行してきたという妹がお土産を届けてくれたのですが、あちこち色づいた紅葉を堪能してきたようです。コロナで多くの人が長いこと遠出を辛抱してきたことを思うと、景勝地で見事な紅葉を見られるなら、旅行支援も確かにありがたいことではあります。

 夕方テレビを見ていると、テレ朝の「スーパーJチャンネル」で、外国人観光客が日本の紅葉を愛でる様子が紹介されていました。中の一人は「これを見るために日本に来たんだ(日本語訳)」と言ってましたね。国別で言うと、昨日11月7日の放送では、最初にインタヴューに応じた組(夫婦?)がオーストラリア、次がイギリス、以下、アメリカ、イギリス、スペインでした。記憶では、4日前の11月3日の夕方にも、同趣旨の放送があり、その時は、順番は曖昧ですが、確か、ドイツ、オランダ、アメリカ、スウェーデンフィンランドだったかと思います。彼ら彼女らが来日して、日本の各地の紅葉を眺めたのは事実でしょうが、外国人観光客の報道としては、やはり偏りがあるのは否めません。

 参考までに、月が異なりますが、観光局による9月のデータを見ると、総数206,500人(昨年同期は2,272,883人!)のうち最も多いのは韓国(16%)で、以下、ヴェトナム(15%)、米国(9%)、中国(〃)、インドネシア(4%)、フィリピン(〃)、タイ(〃)の順になっています。2022年の1月から9月までのデータを見ても、最も多いのはヴェトナム(19%)で、以下、韓国(11%)、中国(〃)、米国(7%)、インドネシア(6%)、フィリピン(5%)の順です。11月になってこの傾向が大きく変わっていることもないでしょう。
訪日外客数・出国日本人数データ|統計・データ|日本政府観光局(JNTO)

 ということは、「インバウンド(外国人訪日旅行)」の現状を取り上げるとしたら、外国人観光客の「国籍」は「欧米」ではなく「東アジア、東南アジア」中心が「妥当」なはずです。しかし、取材段階か編集段階か、いずれかにある種の「意図」が働いて、こう言っては言い過ぎかもしれませんが、「事実」が歪められて伝えられていると思います(欧米系の外国人しか紅葉を見に行かないのなら別ですが)。その背景を想像するに、韓国やヴェトナムの観光客に日本の紅葉を賞賛してもらうより、欧米の観光客から褒められた方がうれしいという、妙な(屈折した)自尊心が働いているようにも思えます。
 もっとも、取材する記者側からすると、外見上(遠目には)韓国やヴェトナムの人と一般の日本人観光客は区別が明瞭ではないのかも知れません。あるいは、手持ちの外国語として英語だけで手っ取り早く取材をするとしたら、欧米系の観光客にあたる方が「安全確実」というのもあるかも知れません。しかし、もしかりに、そうであったとしても、そういうのは視聴者側にとってはどうでもいメディア側の都合です。

 その一方で、国内のコロナ感染者はじわじわと増加傾向を見せています。加えて、東京都庁前で毎週土曜日に催されている無料食品配布会の利用者が、先月末に600人を超えたというニュースを見ると、ますますテレビ報道による現実の「切り取り方」が能天気に思えてしまいます。
「ないと生きていけない」…物価高で延びる生活困窮者の列 都庁前の食品配布に初の600人超え:東京新聞 TOKYO Web

 メディア、特にテレビ報道は明らかに世論を誘導します。欧米系の外国人観光客の声は取り上げても、都庁前に並ぶ人々のことを報道しないとしたら、姿勢として問題でしょう(小生が目にしていないだけで別途放送しているのかもしれませんが)。テレビ局として、報道人として、こうした事実とどう向きあうのか、社会に問題提起を続けてほしいと思います。




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