ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

本気で怒るよりどころ

 先週発表された読売新聞とJNN(TBS)の最新の世論調査によると、岸田内閣の支持率は30%台で、内閣発足以降最低を更新したとのことでした。
  ※( )内は前回との増減
2022年11月 電話全国世論調査 質問と回答 : 読売新聞オンライン
内閣支持率が最低更新 初の40%割れ JNN世論調査 | TBS NEWS DIG (1ページ)

◇読売新聞(4~6日実施):支持36%(-9)   不支持50%(-4)
◇JNN (5・6日実施):支持39.6%(-3.1) 不支持57.7%(-3.8)

 政党支持率自民党は下げていますが、その分野党が上がったかというと、そうでもなく、読売の調査では、その多くは「支持なし」に吸収されたかたちです。

◆読売新聞
 自民33%(-7) 立憲6%(+1) 維新5%(0)
 支持なし43%(+6)
◆JNN
 自民33.7%(-0.7) 立憲 6.2% (+0.4) 維新 6.7% (+0.5)
 支持なし39.7%(+1.6)

 内閣支持率と(与党第一党の)政党支持率の和が50%を下回ると政権が倒れるという「青木の法則」に従えば、岸田政権はまだ「安泰」の域にあるのかも知れません。葉梨法務大臣の辞任(更迭)を受け、今週以降に発表される内閣支持率はさらに下がるかも知れませんが、「岸田おろし」の動きにつながるようには見えません。

 葉梨大臣の更迭に際しては、野党はもちろん、自民党内からも公然と辞任要求が出されて少し驚いたのですが、逆に言うと、どうして自民党内で「自由」に(安心して)批判の声を上げられるのか。岸田政権のガバナンスが弱いからだと言えば、それまでですが、4月に補欠選挙が予定されているとはいえ、大きな国政選挙がないことは非常に大きいようです。

 神保哲生さんの「VIDEONEWS」の対談(11月1日収録)で、ジャーナリストの角谷浩一さんはこう話しています。
 ※( )内は神保さんのことば。
角谷浩一×神保哲生:政権が機能不全でも直ちに岸田降ろしが起きないわけ - YouTube

 この動画は1日の収録ですけど、昨日の夜、岸田さんは二階さんと会食していて、(連日党幹部と会ってますね)内閣を支えるという確約をもらって、「岸田おろし」が始まらないように、保険をかけ始めているようですけど、極端に言えば、二階さんを含め、今岸田さんに物申せるのは、二階、菅、麻生だけなんです。そのほかの人で、岸田さんに何かものを言えるポジションの人はあまりいないんですね。(安倍さん亡き後はね)そうすると、この3人が「いいよ、支えるよ」と言えば、岸田さんはあまり怖くないんですよ。
 [昨年9月の菅政権時]菅さんのときには選挙が近かったので、菅さんじゃ勝てないという議員心理が働きました。岸田さんと菅さんを比べてどうかということを言う人がいますが、比べても意味がないのは、選挙があるか・ないかによって、国会議員は政局を作る気になるかどうかのマインドがまったくちがってくるんです。つまり、今、岸田さんをおろすメリットがない。だから、岸田はダメだダメだと言うよりも、岸田を支えると、派閥の親分たちに仁義を切れば、岸田を支えるよと[言ってもらえ]、で、支えてもらえることになりましたというセレモニーが大事なんでね。(それをアナウンスしてもらわないといけないですね。そうすると、下の議員たちも親分が何もなかったと言えば、しばらくはこれで行くという意味なんだと受け取ると)
 そういう意味では、ポスト岸田がいないことと当面選挙がないことがわかっているということ。その理由は、[次の衆院選の新しい区割りとして]10増10減をまとめたけれども、自民党の候補者選定の落とし込みがなかなか簡単ではないということもあって、いつでも選挙どうぞ、というわけにはいかない。和歌山・山口の新区割りは確かに焦点だけれども、その前に補選がある。つまり、現行の選挙区割りで補選をやらなければならない。世耕さんと二階さんがせめぎ合っている和歌山と、安倍さんが亡くなった後、候補者不在になっている山口の選挙区をどうするのか、この二つの選挙区の問題はなかなか簡単には答えが出ない。来年の4月までには決めなければいけないんだけれども、これをはっきりさせるまでの時間稼ぎはできる。そうすると、年内はともかく、一週間かそこら[国会を]延長したとしても物足りないだろうと。年明け初めに国会を開いて、予算を何とかすればいいと考えれば、今、岸田さんをおろすメリットはあまりないというのが自民党の総意だと思うんですね。ですから、支持率が下がって怖くないわけではないけれども、こんなに支持率が下がってどうするんだと感じている人は、実はあまりいない。
 それから、政党支持率を見ると、自民党の支持率が[大きく]下がっていないし、調査によっては上がっているところもある。つまり、岸田政権の内閣支持率は下がるけれども、自民党の支持率は横ばいか、上昇しているということは、統一教会問題、物価高、燃料費の高騰、円安と、いろいろなことを抱えていても、国民は、何に怒っているのか、あまりはっきりしないんですね。怒っているエネルギーにつながらないのは、自民党の支持率が落ちないだけではなく、野党の支持率も[ほぼ]まったく上がらない。立憲民主党と維新が今国会では一緒に闘って、ことに山際さんを更迭させることについて、立憲民主党は国会が始まる前からグイグイと言ってきたわけで、立憲民主党が言い続けたから、ついに山際さんが辞めたという状況はできてるけれども、次の政党支持率を見ても、さして変わらないのではないか。確かに、個別の問題では、「統一教会の調査をもっとちゃんとやるべきだ、地方議員にも対象を広げるべきだ」とかいろいろ言っているけれども、岸田政権の支持率が下がっても、自民党政党支持率が下がらないとしたら、国民はそんなに本気で怒ってはいないということではないかと。でも、じゃあ、ここで怒らないでどこで怒るのかと思うんだけれども……。

 本気で怒るかどうかを国民総体で一括りにするのはなかなか難しいのですが、ある統一教会の二世信者が高額献金の取消にかかわる新法の成立など、被害信者の救済に向けた発言を続ける力のよりどころとして、自分に子どもが生まれたことが大きなきっかけになっていると述べていた記事をどこかで読んだことを思い出しました(出所が不明ですが)。これは自分の子どもだけではないでしょう。亡くなった親や子、親しい友人の弔いのためなら、自分のこと以上に発奮するところが人間にはあります。自分も似たような経験をした覚えはあります。自分と目の前にいる人だけでなく、いない人、将来現れる人のためにも、人間は動けるような気がします。本気で怒るかどうかは、そういう気持ちになれるかどうかだと思いました。





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