ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

株式市場は忖度しない

 昨夜(10月6日)「一月万冊」のなかで佐藤章さんが紹介していた記事がおもしろかった。東京市場の株価と岸田内閣成立までの経過との連動性が如実に現れている。投資家、特に海外投資家から岸田政権がどう見られているかがよくわかる。

 二番煎じになるが、10月6日付M&A Onlineより引用する。グラフに着目。

株式市場に「忖度なし」…なぜ岸田政権で株価が下落し続けるのか - M&A Online - M&Aをもっと身近に。

菅前首相が追い詰められると株価が上昇
…8月以降の株価の動きを見てみよう。政局絡みで株価が上昇に転じるのは8月23日から。前日の横浜市長選挙で菅前首相が強く推した小此木八郎国家公安委員長が、立憲民主党の推薦する新人候補に18万票もの大差をつけられて敗北した翌日だ。
「お膝元」である横浜市での惨敗に、菅前首相の自民党内での求心力は急速に低下。党内に「菅首相の下で今秋の衆議院議員選挙を戦えるのか?」との疑問の声が広がった。菅前首相の自民党総裁選での苦戦も予想され、総裁選前の衆議院解散・総選挙もありうると見られていた時期だ。
菅総裁のまま衆院選に突入すれば、自民党の大敗は避けられないと見られていたが、この日の株価は同480円99銭(1.78%)高の2万7494円24銭に上昇する。本来なら自民党が大敗すると株価の下落要因となるが、そのリスクが高まったにもかかわらず株価が上昇した。これは横浜市長選での敗北を受けた、自民党内での「菅おろし」を期待した動きだろう。

自民党総裁選前後の日経平均株価
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菅前首相の求心力低下を見て、横浜市長選の4日後の8月26日には岸田氏が総裁選への立候補を正式に表明する。株価は上昇したものの、それほど大きく動かなかった。同17円49銭(0.06%)高の2万7742円29銭に留まったのだ。その翌日には株価は下落に転じた。

投資家は岸田総裁による「自民党の変革」を疑問視
これは岸田氏が早くから総裁選出馬の意欲を見せていて意外性がなかったこともあるが、投資家に「岸田総裁で本当に自民党は変わるのか?」との懸念があったと考えられる。
投資家が「自民党の変革」に期待していることは、8月30日に菅前首相が党幹部の人事を一新し、二階俊博前幹事長を事実上更迭すると表明したことで明らかになった。
これを受けて、株価が同148円15銭(0.54%)高の2万7789円29銭に跳ね上がったのだ。安倍・菅政権を支えてきた二階前幹事長の「退場」を、株式市場が「自民党の変革」に向けた第一歩と捉えて好感した結果と言えるだろう。
しかし、この「二階はずし」が菅前首相の「致命傷」となった。菅前首相単独で自民党をまとめるのは難しいと見た有力議員たちが、そろって党幹部への就任要請を固辞。党幹部の人事刷新は不可能となり、万策尽きた菅前首相は9月3日に総裁選への不出馬を表明する。
これに市場は大きく反応。同日に同584円60銭(2.05%)高の2万9128円11銭へ上昇した。菅前首相の事実上の「辞任表明」は、株式市場に「自民党の変革」を確信させる材料となったのだ。菅前首相の不出馬表明で、高市早苗総務相河野太郎前行革担当相、野田聖子総務相らも総裁選に名乗りをあげ、岸田氏を含む4人の選挙戦となる。
中でも投資家が注目したのは河野氏だ。河野氏が総裁選出馬に向けて動き出すと株価はじりじりと値を上げ、9月10日の正式な立候補宣言で同373円65銭(1.25%)高の3万381円84銭に。4候補の中で、河野氏が最も「改革イメージ」が強かったためと思われる。

「変革」なくして「株価上昇」なし
9月21日に中国不動産開発大手・恒大集団の経営危機問題から株価は大きく下げたものの、24日に田村憲久厚労相河野氏支持を表明すると同609円41銭(2.06%)高の3万248円81銭と3万円台を回復する。この頃には自民党の派閥リーダーたちが河野氏の当選に警戒感をつのらせていると伝えられ、投資家の「河野政権誕生」への期待も高まっていたようだ。
だが、29日の総裁選は予想ほど河野氏の得票が伸びず、岸田氏の当選が決まる。すでに岸田氏優勢は揺るがないとの報道もあって、「自民党の変革」は遠のいたとの見方が広がり株価は下落。自民党新総裁の就任日に株価が下落してはまずいと日本銀行が忖度したのか、ほぼ3カ月ぶりとなる上場投資信託ETF)買い入れで701億円を投入したが、同639円67銭(2.12%)安の2万9544円29銭に急落する。
投資家の「意思表示」がはっきりしたのは、岸田新総裁が党四役を含む自民党幹部人事を発表した10月1日だ。麻生太郎前副総理兼財務相に近い甘利明前税調会長を幹事長に、安倍晋三元首相が総裁選で強く推薦した高市氏を政調会長に選ぶなど、自民党のいわば「守旧派」議員を重用した。
一方、「変革派」と目される河野氏は広報本部長に「降格」される。河野氏を推薦した石破茂元幹事長に至っては自身の派閥から閣僚が出ておらず、完全に「干された」格好だ。
こうした「変革派」の排除を嫌気して、株価は同681円59銭(2.31%)安の2万8771円07銭と下落。値下り額、値下り率ともに、ここ2カ月間で最悪となり、中国の「恒大ショック」よりも衝撃が大きかった。日銀はこの日も再び701億円のETF買い入れを断行している。
5日も株価は同622.77円(2.19%)安の2万7822円12銭と下げ止まらない。岸田首相の下で自民党が変われるのか?少なくとも投資家の評価は否定的なようだ。衆議院議員選挙は10月31日の投開票が決まった。総選挙が終わるまでは岸田政権が本格的な政策を提案し、議論するのは難しい。投資家の岸田政権への評価は当分「辛口」のままだろう。


 東京市場の株価(日経平均)は9月27日月曜から8営業日連続で下がっている。額にして2,700円余(約9%)の下落。TOPIX東証株価指数)も7%の下落。自民党新総裁の就任日に株価の下落を避けようと日銀が上場投資信託ETF)の買い入れに701億円を投入したが、焼け石に水だったというのは失笑ものである。

 もちろん株価の下落が岸田政権のせいだとばかりも言えないが、報道各社が発表した初の内閣支持率も低迷気味で、もしこれが下駄を履かせた「ご祝儀相場」の数字だとしたら、実情はさらに「低い」のか! という話になる。こちらの方は、経済政策の期待云々とは別の理由だろう。その原因は明らかだ。だが、どうにもしようがない。それが今の岸田政権ということか。このまま与党・公明党も何も言わずに心中するつもりだろうか?



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