ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

続 国葬問題

 政府が安倍氏国葬をすると言い出したとき、こんな疑惑だらけの大嘘つきを国葬にする必要はないと思いました。しかし、その一方で、歴代最長政権の首相だったから国葬にふさわしい、などと説明されると、多くの人は、そりゃそうかな、と思うかもしれないとも思いました。特に、10代、20代の若い人にとって、物心ついてからの8年の世相は記憶に強く刻印されます。「偉大な総理大臣」と言われたら、そうだよね、と。特に、長さだけその前後と比較したら、そんな気がしても不思議はありません。世の趨勢を眺めても、若い世代ほど、国葬賛成の意見が強い。
安倍氏「国葬」賛成42% 反対49% 世代で差、40代境に賛否が逆転 熊日S編アンケート(熊本日日新聞) - Yahoo!ニュース

 しかし、先日父親の法事や供養で、20代の甥っ子や姪っ子など、若い親族と話してたら、「必要ない」とバッサリでした。さすが叔父さんの「血筋」というわけではなく、昨今報道されている自民党統一教会のズブズブな関係の中心人物が安倍氏だったことに強い不信感があるようです。

 8月16日の新宿の国葬中止を求める集会・デモを伝えた東京新聞の記事に「都内で計画されている主な国葬反対集会・デモ」の一覧が表になっていますが、これに関連する興味深いTweetを目にしました。是非引用をお許しください。
安倍元首相国葬 都内で反対デモ 鎌田慧さん、沢地久枝さん、佐高信さん、落合恵子さんら呼び掛け 新宿駅周辺で:東京新聞 TOKYO Web
ころから on Twitter: "本日の東京新聞(8月17日朝刊)社会面に「都内で計画されている主な国葬反対集会・デモ」の一覧が掲載されました。 これは、とっても大きなニュースです! これが、なぜニュースなのか、ちょっとした昔話を含めてお伝えします(以下、文責木瀬)→ https://t.co/yh2WsqvGl6" / Twitter

かつて、わたしは2003年の米軍によるイラク空爆に反対するデモを主催する一人でした。
そして、数多くのメディアから取材を受けました。当時は市民による「デモ」などを黙殺し続けていた日本経済新聞までも写真入りで報じてくれたことは、いまでも強く印象に残っています。
そうした中、ある意味当然のごとく東京新聞の記者にも取材されました。
そして、デモの趣旨や規模を話した最後に、記者にこうお願いしました。「今週末にデモがあることを報じてくれませんか?」と。
その時の答えもまた忘れられません。
熱心に取材くださった記者さんは、こう言いました。
「デモがあったことを報じるのがメディアの役目。デモを開催し、人を集めるのがあなたたち(団体)の役目では?」と。
その時、わたしは憤るよりも、「ほんま、そうやな」と得心したのです。

そして、その後10年以上も「わたしデモする人、あなた報じる人」という役割分担が明瞭になりました。
が、2014年(だったと記憶しますが)のある日、神奈川新聞に革命的な記事が掲載されました。
そこには「○月○日、川崎のコリアン集住地域を標的にするヘイトデモが開催される。ついては、
すべての抗議者は現地に参集されたし」(大意)とあったのです。
これが革命でなくて、なにが革命でしょうか?
「起きたことを書く」という大義のもと、観客席から降りようとしなかった記者が、いままさにデモ(正確にはヘイトデモへのカウンターですが)を紙面で呼びかけたのです。
この呼びかけに応えた記者が複数いたことを、わたし(木瀬)は忘れません。
あれから8年。ついに、新聞が「反国葬集会・デモ」を事前に告知したのです。第二の革命と言っていいでしょう。
俵万智風に言うなら「あなたが観客席から降りたから、今日は日本のマスメディア覚醒記念日」といったところ。
メディアが「起きたこと」だけでなく「起きていること」を、さらには「起きようとしていること」を伝えることに、なんのためらいが必要でしょうか?
冒頭で東京新聞をたとえに上げましたが、ひとり東京新聞の問題ではありません。その証拠に、いまこうして東京新聞は新聞界のトップランナー
躍り出ようとしているのです。
メディア業界の一翼として、わたしたちも観客席あるいはソファに座ったままではない報道ができればと思います。
国葬を契機に弔意の強要がなされつつある今、この社会のメディアとしての役目を果たしていきたいと願い、昔話を終わります。(き)

 「革命」かどうかは今後の他の新聞メディアの動向にもよるのでしょうが、しかし、あのNHTK(日本放送統一教会:私的命名)も、ついに生稲晃子参院議員が萩生田衆院議員とともに選挙前に旧統一教会関連施設を訪問していたことを伝え、少しだけNHK(公共放送)に戻った感じがしました。メディアも世論に揺さぶられています。

 この国葬問題、現在の日本の民主政治の象徴というか、結節点となってきた感じがします。作家の島田雅彦さんのインタビュー記事には、こう書かれています。
特集ワイド:要人暗殺描いた小説「パンとサーカス」著者・島田雅彦さん 国葬、透ける自民の保身 政治と宗教の癒着、追及を | 毎日新聞

……政治的な意見を言いにくい昨今の風潮の中、島田さんは積極的に発言を続けている。ツイッターにも、しばしば政権批判を投稿する。その原動力を尋ねると、「文学者も戦争協力をした暗い過去を持っているので、時の権力者の顔色をうかがったりせず、我が道を行くのが理想です」と返ってきた。
 そんな問題意識は小説にも投影されている。「特に今、10代や20代の自民党支持者が多い。第2次政権時代に8年近く首相の座にいたので、彼らは物心ついた時からずっと安倍さんの顔を見てきた。もし自民党的な事なかれ主義が内面化されているとしたら、誰も異議申し立てをしなくなる。現状の日本を絵解きし、この絶望の国をリセットするような作品を書かなければならないと思ったのです」
 今年3月に刊行した長編「パンとサーカス」のテーマはずばり、世直し。米国にひたすら追従し、内部で不正がはびこる政府に変革を迫る目的として、政権中枢にいる要人の暗殺が描かれている。賛否を呼ぶ大胆な設定の中で、随所に見られるのが現実政治を思わせる表現だ。「与党」については、こう書かれている。<半分が世襲議員で、極右系の宗教団体の全面的支援を受けている>
 作中では、世直しの手段としてテロが選択される。現実では断じて許されないことだとしながらも、島田さんは実際に起きるかもしれない恐れを抱いてきたという。「政治の劣化が極まれば、社会も荒廃します。将来起きうることを予想し、社会の変容をシミュレーションし、心構えを促すのがフィクションライターの仕事です」
 小説が世に出てから3カ月半後、実際に起きたのがあの銃撃事件だった。ネット上では今、「事件を予言していた」などと島田さんの作品を評する声が上がっている。その反応について、「こんな予言が的中しても、いいことは何一つありません。暗い予言は外れた方が、社会にとってはいいに決まっていますから」と複雑な心情を吐露する。
 銃撃事件では、旧統一教会によって容疑者の家庭が崩壊し、その恨みが安倍氏に向かったと報じられている。島田さんはその見立てに反論するつもりはないとする一方で、単に動機や背景を私怨(しえん)という視点だけで捉えるのは不十分だとも考えている。はっきりと、「これは政治テロです」と言い切るのだ。
 「事件がもたらした影響を考えれば、そう認めるべきだと思います。政治と宗教団体の不適切な関係があらわになり、政治不信が一層深まり、社会不安が募ったのだから、政治家は露呈した現実を直視することが求められます」

 だが、現状は追及というにはほど遠い。自民党は党としての調査を否定し、岸田文雄首相も「それぞれ丁寧に説明するのが大事」などと繰り返すばかりである。メディアも一枚岩になって、真相を解明しようとしているとは思えない。そんな中で島田さんが危惧するのが、9月27日に行われる安倍氏国葬を境に問題の幕引きが図られる事態だ。「自分たちの保身に国葬を利用しようという自民党議員の不謹慎な意図が透けて見えます」。島田さんはそう語りつつ、「ただし」と続けた。
 「その思惑は結果的に外れると思います。国葬は、政権が反社会的なカルト教団と持ちつ持たれつだったという恥ずべき実態を世界に発信する機会になるからです。海外メディアは日本のメディアのように忖度(そんたく)しません。国葬の費用対効果は絶望的に低いでしょう」
 各種世論調査によれば、国葬に反対する声はおよそ5割を占める。強行したとしても自粛ムードにはならず、反対世論が一層過熱することになる、と島田さんは感じている。それでも、国葬後の社会の雰囲気を正確に見通すことは難しい。厳粛な空気が広がれば、幕引きされる可能性もやはりゼロではない。
 今回の銃撃事件は断じて許されないことである。だが、その遠因に政治の不作為があったとしたら、看過すべきではない。そう考える島田さんは、教団との関係をなし崩し的に「なかったこと」にしようとする政治家の動きを何より懸念するのだ。
 「ここで問題を徹底的に追及、検証し、過去の不正、遺恨を改めておくことが、第2、第3のテロを防ぐ最も有効な手段になります。それは、無謀な戦争に突き進んだかつての過ちを繰り返さない努力とも重なる」

 現実を予見した小説家の、未来への警句である。


 岸田首相は現在夏休み中とのことですが、22日に公務に復帰して、さて、世の風景が違って見えるかどうか……。



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