ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

政治家はカルトとの関係を断つ気があるか?

 父親の一周忌が近づき、自宅で法要をするので、昨日から庭木の剪定を始めたのですが、今日は朝から雨ぶりで気持ちを挫かれそうになりました。それでも、昼前に雨は上がったので、早めに昼ご飯を食べて、昨日の続きを始めました。夕方前には何とか終わり、ホッとしてニュースを眺めていると、岸防衛大臣が旧統一教会に選挙を手伝ってもらったと述べたという話が出てきました。
岸防衛相、旧統一教会メンバーと「付き合い」認める 選挙手伝いも | 毎日新聞

まあ、安倍晋三氏の実弟岸信介の孫だけに、それはそうだろうなあと思いましたが、一人ひとり個別に「カミングアウト」(公表)して、矛先が拡散するよう仕向けるような姑息なことをしないで、自民党として全容を明らかにして、今後は統一教会との関わりを根絶しますと宣言するくらいのことができないのだろうかと思っていたら、何と、茂木幹事長から「期待とはまったく逆」の発言が出てきて驚きました。旧統一教会とは「自民党として組織的関係がないことをしっかりと確認している。党としては一切関係ない」「社会的に問題が指摘されている団体。個々の国会議員についても、立場を踏まえ(旧統一教会との関係は)厳正かつ慎重であるべきだと注意を促したい」と述べたというのです。
旧統一教会 茂木幹事長「自民党としては一切関係ない」 | 毎日新聞

 これはどこかで聞いたような話だなあと思いました。ああ、桜を見る会前夜祭の話に似ているなあと。参加者(約800人)が個別にホテルニューオータニと契約しているから、安倍事務所は政治資金収支報告書に金銭の出入りを記入する必要はないし、領収書は個々に向けて発行されたものだから、その写しを出せと安倍事務所がホテル側に求めるのは困難だ…云々(でんでん!)というやつです。茂木幹事長は、党所属の国会議員が個別に旧統一教会と付き合ってるんで、党は一切関知していない、と(だから、旧統一教会 “汚染” と言ってもよい実態の全容を、自民党として明らかにする義務も必要もない。よって、今後も関係を断つ気はないという趣旨でしょう)。その場がしのげればいいという、人をバカにした話です。こういうのも安倍氏の「政治的遺産」なのかもしれません。

 しかし、数を考えてほしいです。一人二人なら、そうも言えるかもしれませんが、現在報道でリストアップされた自民党国会議員だけで約100人はいます。
旧統一教会と「関係アリ」国会議員リスト入手! 歴代政権の重要ポスト経験者が34人も(日刊ゲンダイDIGITAL) - Yahoo!ニュース

 7月26日現在、自民党所属の国会議員は全部で381人だそうですが、その1/4以上の議員が何らかの関わりをもっているのだとしたら(初めて知ったら)、普通は党として調べるのが先です。元教員なので、例が特殊で申し訳ないですけれど、もし、普通の公立学校で生徒の1/4が宗教団体でも何でも特定の団体に加入していたことが判明したら、どういう経緯でそうなったのか普通は調べるでしょう。調べもせずに、学校は一切関与してませんなどと「宣言」してしまったら、それは何かおかしい、斡旋でも紹介でも、何か隠しごとをしているのでは……と、かえって疑いをもたれます。学校でなくとも、会社でも、役所でも、どこでもみんなそうでしょう。なぜ、自民党だけ、それで通ると思うのか、通そうとするのか。先の国葬発言といい、茂木幹事長は「マインドコントロール」にかかって、もはや現実が見えなくなっているのでは、とさえ思えます。

 毎日新聞つらなりで、作家の平野啓一郎さんの7月24日付のインタヴュー記事を読みました。実は、目にしたのはこちらの記事が最初だったのですが、安倍氏の銃撃事件と「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)の関わりについて、こう述べています。同感です。

「政治と宗教 日本の恥部にふたをするな」 平野啓一郎さん | 毎日新聞

「人命が奪われたことは、決して許されることではない。しかし、事件は反社会的な活動が指摘されてきた宗教団体と政治家の関係という日本の政治の恥部に触れています。私的な怨恨(えんこん)というものを超えて、事件が持つ意味に目を向けるべきです」
 団体は1980年代ごろからいわゆる「霊感商法」との関わりが指摘されてきた。対して政治の側はといえば、団体関連の行事に国会議員が出席したり祝電を送ったり、関係が深いとされる媒体に国会議員のインタビューや座談会の記事が大きく掲載されたり、関係が深いとされる個人から寄付を受けたりと枚挙にいとまがない。銃撃事件に絡み、安倍氏が団体の関連組織に寄せた動画メッセージを容疑者が視聴していたことも判明しており、容疑者は「家庭をめちゃくちゃにした団体を、安倍氏が国内に広めたと思って狙った」などと供述している。
 ところが、メディアには事件直後から安倍氏を礼賛する報道があふれる。本来ならさまざまなことを切り分けて考えていくべきなのに、全てがないまぜになっている、と平野さんは懸念している。「容疑者がなぜ事件を起こしたのかを冷静に見ることが大事です。その過程で、なぜこの団体が日本で拡大したのか、そこに政治の関わりがあるなら検証することを避けて通ってはいけない。しかし、徹底した真相究明が必要という声はとりわけ与党の政治家からは上がっておらず、論点のすり替えが起きているのが実情です」

社会の構造的問題に目を向けて
 平野さんは事件の真相解明には「手段」と「なぜ起こしたか」を分けて考えるべきだと話す。「容疑者が教団の悪を告発し、自身の憎悪を表現する手段として、殺人を選んだことは間違っています。しかし、彼がなぜ事件を起こすに至ったのかは、日本の社会が構造的に抱えている問題をはらんでいます。それを理解することは手段を肯定することにはなりません。彼を単純に『悪魔』化して、問題に蓋(ふた)をしてしまえば、カルトの被害者の救済も再発防止も不可能です」
 さらに言えば、宗教団体の教義、すなわち「目的」に踏み込むことは難しいが、教団名を隠しての勧誘など布教活動の「手段」については規制も必要だろう――。平野さんはそうも言うのである。団体については、財産を寄付させるといった「手段」を巡って多数の民事訴訟が提起されてきたことは周知の事実である。被害者救済に取り組む「全国霊感商法対策弁護士連絡会」は18年、国会議員や地方議員が団体の集会や式典で祝電を送るなどしていると指摘した上で、こうした行為が「問題のない団体であるという『お墨付き』として利用される」と、関与しないように求めてきた。
 容疑者の半生に目を向けると、母親が団体の活動に明け暮れたため、幼い頃から放置されていたらしいことも分かってきた。「僕は文学者だから、彼の境遇があまりにも理不尽で、悲惨なことにやはり注目しました。なぜ事件に至る前に彼を救済できなかったのか。救済されていれば、事件は起きなかったでしょう」
 皮肉なのは、団体は教義で「家族の絆」を掲げてきたにもかかわらず、今回の事件が起きたという点だ。これは与党政治家、なかんずく保守派が主張してきた価値観とも重なる。
 「事件は家族が壊された結果です。これを批判しない保守派は、日本の何を保守しているのでしょうか? そもそも家族はうまくいけばいいですが、現実には多くの家族が問題を抱えている。家族内で問題が起き、対処できない時は、個人を救うことが必要です。容疑者も『家族の絆』という思想では救われなかった。彼が救われるには、個人が尊重される思想と制度が必要だったはずです」

政治家とカルト、関係清算が不可欠
 安倍長期政権の検証も必須だろう。平野さんいわく、公文書の改ざんや破棄、国会でのうそ、解釈改憲など、国会を軽視し政治への信頼を徹底的に破壊してしまった。国民は分断され、内政が行き詰まる度に中国や韓国を敵視したことでヘイトが横行した。「辞任すべき問題を起こしても職にとどまり、政治家にとって責任は『取る』ものでなく『痛感する』ものへと変質してしまった。地に落ちた政治倫理をどう立て直すのか、考えねばなりません」
 平野さんは「国葬」にも反対の立場である。「安倍氏の政治が残したものは今後、冷静に分析されるべきです。国葬というセレモニーで美化してしまえば、検証作業に大いに支障が出る。法的根拠の欠如も問題ですが、政治が冷徹な検証にさらされることで国家が発展すると考えるならば、誰であれ、民主主義国家では政治家の国葬はふさわしくない」。平野さんは熱っぽくそう説いたのである。
 「繰り返しますが、必要なのは犯行前に容疑者を救うことでした。再発防止のためには全容を解明し、立法措置も必要となるでしょう。国会が健全に機能するためには、政治家とカルトとの関係清算が不可欠です。近年はカルト宗教の問題を報じてこなかった大手メディアの責任も大きい。今後の追及を願っています」。……




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