ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「教団国家」の「正統」と「異端」

 Twitterを見ていて共感したことばがが幾つかあります。
 まず、岩下啓亮さんの昨日7月12日付のTweet。引用をお許しください。
https://twitter.com/iwashi_dokuhaku/status/1546546076949573633

国が「納税しろ、納税は国民の義務だ、消費税減税などもっての他だ、もっと増税するぞ、年金も国保も削減するぞ」と国民に強圧メッセージを送るのはなぜか、この数日間でようやく腑に落ちた。つまり国はこういいたいのだ、「あなたの所有する財産を一つ残らず国に寄進しなさい、全部だぜんぶ出せ」と。

優秀な学生を囲いこむ一方で、貧しい家庭から容赦なく搾り取る。政権与党が推進する「この国のかたち」とは、カルト宗教団体の構造と酷似している。安倍氏は首相時代に「税収というのは国民から吸い上げたもの」という認識を示しているが、吸い上げられた側の痛みなど一顧だにしない点も統一している。

搾取の構造が鏡で映したようにそっくりモグラではないか。その癒着を追及するのがマスコミ本来の役割ではーー
いや、違うな。
マスコミも構造の一役を担っている。テレビ番組は視聴者を消費者としかみなさない。もっと買え、買えば幸福になるとのメッセージをのべつ幕なしに放送している。一連托生だ。


 個人的に「腑に落ちた」ことをもう一つ連ねると、同日付の中野昌宏さんのtweetもそうです。これも引用させてください。
https://twitter.com/nakano0316/status/1546545430032678912

……外国の脅威を煽り、高価な武器を買い揃えさせようとするのって霊感商法ですよね?


 安倍氏が撃たれて亡くなった事件をきっかけに、安倍氏本人だけでなく、自民党(諸議員)と宗教団体、とりわけ旧統一教会との密な関係がだんだん表に出てきています。この点で、鈴木エイトさんの仕事は貴重です。
統一教会と安倍元首相の関係とは - ブッチNEWS(ブッチニュース)

自民党議員、国際勝共連合50周年大会に複数名が出席。旧統一教会系政治組織と与党議員の関係 | ハーバービジネスオンライン

 選択的夫婦別姓同性婚などは典型的ですが、その世界観が自民党の個別の政策に色濃く反映されているように思えます。しかし、問題は個別政策に限らないかも知れません。
 参院選の最中に自民党議員が連発した暴言・失言の類いのひとつに、山際大志郎・経済再生相による「野党の人からくる話は政府は何一つ聞かない」(7月3日 八戸の街頭演説)というのがあります。山際氏はその後の記者会見で、「誤解を招く発言になった」と釈明しましたが、謝罪・撤回はしていません。

 9日のデモクラシータイムスのなかで、政治学者の白井聡さんはこう言っていました。
テロを許すな! 安倍氏襲撃 参院選前夜、大討論!! 生活と国防、憲法、エネルギー… WeN20220709 - YouTube(39分頃より)

 ……本当に度しがたい、許しがたい発言です。これ、要するに議会政治の否定なんですよ。お互いに話し合って、意見をぶつけあって、合理的な解決を見出していくというのが、議会政治の根本的な考え方で、それは日本で議会が開設される前、そんな昔から、原理として大事ですねと、言われていたことです。五ヵ条の御誓文にもあるわけですよね。「万機公論ニ決スベシ」と。その考え方に基づいて帝国議会もできたし、さらに戦後の議会もある、ということでやってきたわけですが、まさに議会主義の原理を否定している。大臣罷免は当然だし、国会議員を辞職しなければならないようなひどい発言、それに値する発言だと思います。

 本当にそうだと思います。しかし、もし、これ、日本国家が「教団」で、与党が「正統」で野党が「異端宗派」というふうに仮定したら、野党(異端)の言うことは「なにひとつ聞かない」というのは、言ってる側にとっては、いたって「正常運転」で、「失言」でも「暴言」でもないのかもしれません。民主主義? 議会主義? そんなものが「教団(国家)」にあるか! 異端は排除・殲滅することが「正しい」ということでしょう。さすがに今の政治の世界ですから「殲滅」とまではいかないにしても、これまで随所で民主主義社会を正常に機能させてこなかったことの所産に思えます。
 教団が国家を乗っ取るなどという荒唐無稽な話はオウム真理教事件によって終わったように思ってきましたが、教団が前面に出ずとも、こうしたかたちで国を動かす「教団国家」となることが可能であると、想像するのはおぞましいかぎりです。特に、第二次安倍政権以降の、自民党と旧統一教会との結びつきは直視しないといけません。
英紙が「安倍晋三と統一教会の関係」に迫る─それは祖父・岸信介の時代から「公然の秘密」だ | 自民党とカルトの“近すぎる距離” | クーリエ・ジャポン

 昨日夕方テレビで安倍氏の葬儀に関する映像を見ていて、個々人が氏にどういう感情を重ねるかは自由だと思いましたが、氏の扱いに、まるで教団国家の「教祖」のようなものを見ると、うす気味悪く感じます。他にもそういう人はいるのでは、と思います。神奈川県や横浜市など、いくつかの自治体では庁舎内に記帳所を設けたといいますが、党国一体の国ではありませんし、異論を挟めないのか、これも気味が悪い。マスコミといい、この国はもう戦争の反省はしないことにしたのかと。

<追記>
トルストイ『文読む月日』の7月12日の引用――

 (二) 羽振りのよい一部少数者が、その時代の富を独占して、ほとんど反省することもなく勝手な生き方をしているあいだ、そして一方では大多数の人々が昼夜兼行で働きながら、自分らの労働の産物がすっかり他人に奪われていることに全然気づかないでいるあいだは――食人の世界がいつまでも続く。人々はしばしば偏見や習慣を真理と受け取る。その場合、それは人々を苦しめない。しかしいったん彼らがその真理なるものが真っ赤な嘘であることを悟ったら――もうおしまいである。そうなればもう、人々が不合理だと考えていることを無理にさせるためには、暴力に頼る以外にはないのである。
                              (ゲルツェン)
(北御門二郎訳、ちくま文庫、中巻、244-245頁)

 ゲルツェンがいつ書いた文章か不明ながら、おそらくこれはロシアで19世紀後半のテロリズム時代の前に書かれたものと推測します。もちろん権力側の暴力を言っていて、今回の事件は向きが逆なのですが、それにしても、嫌な感じがしてきます。







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