ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

選挙と政教分離原則

 今日は短く。
 参院選は個人的には残念でした。結果として「改憲勢力」と呼ばれる四党が2/3を超えたのは確かにショックなことですが、これで一巻の終わりということはありません。岸田首相は、改憲案を詰めることに注力するようなことを述べていましたが、ここぞとばかりにあれもこれも変えようと思っても、自民党改憲案自体が今の日本国憲法とは理念を異にし、そもそも「建付け」がちがうので、現憲法の条文をいくつか「改正」するくらいではとても済みません。憲法改定に賛成している人の多くにとって、おそらく、たとえば、憲法9条に自衛隊条項を入れることを是とする人がいたとしても、自民案のような人権が抑制されることにまで賛同はしないでしょう。ある調査によれば、今回の参院選の焦点として「憲法改正」をあげた人は15%くらいといいます。これからより深刻になる物価高や日銀の金融政策(円安と債務問題)を後に回して、憲法改定にエネルギーを注ぐなど、いくら2/3を確保したからといって、そんな無茶なことはできません(だから、「省力化?」=トップダウンで迅速にことを進めるために、頭数だけのイエスマン議員を増やす。国民からの質問に何も答えない・答えられないような人物を選挙に立て、組織票で当選させるのでしょう。別にこれ、「おニャン子」に限りませんから)。

 選挙前の安倍氏の死去は不幸な事件でした。しかし、この事件によって、安倍氏がいかに宗教団体と密接に関係していたかが、だんだんとわかって来ました。しかも、これは安倍氏に限った話ではありません。自民党の多くの議員が宗教団体に関与し、その集票力を頼りにしないと選挙に勝てないのです(そもそも今の自民党自体が公明党創価学会の組織票頼りです)。
 「一月万冊」の中で指摘されていましたが、たとえば、自民党内の右派の主張は、家族観にしろ、LGBTへの嫌悪にしろ、統一教会の世界観をそのままなぞったものが多くて驚かされます。議員の公的な発言と選挙協力(票・資金)がバーターになっていると言っても過言ではありません。しかも、安倍氏は生前そうした宗教団体との関わりを、もはや隠すことさえしなくなっていたのです。
特ダネ!独自取材・安倍晋三銃撃事件の真相の裏に統一教会の存在か。サンクチュアリVS世界平和統一家庭連合。安倍を批判したから銃撃されたは的外れな批判。元朝日新聞・記者佐藤章さんと一月万冊 - YouTube

統一教会と自民党を結ぶ「票とカネ」。菅内閣に9名の利害関係者、日本会議とも共通する思想とは=原彰宏 | マネーボイス


 こんな背景が明らかにされれば、国民のあいだに1990年代のオウム真理教事件の記憶がよみがえるかもしれません。若い世代はともかく、40代50代以上の人にはなお忘れられない日本社会の傷痕です。「教団」とか「カルト」という響きに、なお嫌悪感を抱く人は少なくないでしょう。

 ……などと考えながら、2012年にまとめられた自民党改憲案を見ると、政教分離原則に変更が加えられていることに改めて気づかされます。この点について「宗教情報センター」2013年7月8日付の研究員レポートにはこう記されています。
憲法改正が宗教界に与える影響――信教の自由と政教分離 | 宗教情報センター

……「信教の自由」は「政教分離」の原則によって守られる側面もある。「政教分離」は憲法20条と89条で定められている。戦前は、「神社は宗教にあらず」(神道非宗教論)とされ、国家神道が優遇された反面、他の宗教が冷遇され、大本やプロテスタントのホーリネス系教会などは弾圧された。国家神道軍国主義を支える役割を果たしていたため、戦後に連合国軍総司令部GHQ)が「神道の国家からの分離、神道の教義からの軍国主義的思想の抹殺、学校からの神道教育の排除」など「国教分離の指令」を出し、これに基づいて、個人の「信教の自由」の保障と、政教分離の明確化が現行憲法で図られた。この沿革からすると厳格な政教分離が望ましい、とりわけ神社神道との分離は厳格に貫くべきとの見解がある。
<中略>
……政教分離を定めた現行憲法20条1項後段では、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」と国家の宗教的中立性を明示し、宗教団体が「政治上の権力」を行使することを禁止しているが、改正草案では「国は、いかなる宗教団体に対しても、特権を与えてはならない」と、「国」が主語として挿入され、「政治上の権力を行使してはならない」の文言が削除された。
 現行憲法の「政治上の権力」とは、通説では立法権裁判権など国が独占すべき統治的権力を意味する。政治活動そのものではない。政府の見解では、特定の宗教団体が支援する政党に属する者が公職に就任して国政を担当したとしても、宗教団体が「政治上の権力」を行使したことにはならない。……(しかし、これには)宗教団体の政治活動を禁じていると解釈して、宗教団体と、その団体が支援する政党の関係を「政教分離に反する」と批判する声も少なくない。この改正により、宗教団体も政治活動ができることが明確になるかもしれない。

「…かもしれない」どころではありません。自公連立政権にしろ、自民党議員と宗教団体との連繋にしろ、「自民党改憲案」をすでに既成事実化したもののように見えます。

 ということで、選挙の結果はそれとして、失望・虚脱している場合じゃないと、気を取り直しています。今日も明日も日は昇りますから。





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