昨晩テレビで岸田首相の記者会見を眺めていたら、亡くなった安倍氏の葬儀を、この秋、国葬の形式で行うと「宣言」していて、ちょっと驚きました。というのも、国葬にするかどうかについては国民のあいだで賛否がわかれているため、政府は慎重に判断するものと見られる、とか、中曽根康弘・元首相にならって自民党・内閣合同葬の方向で調整、などという記事を見ていたからです。「熟慮」「注視」の岸田氏としてはずいぶん思い切ったなあと、唐突な感じは否めません。
【安倍晋三】安倍元首相の「国葬」は実施すべき? ネットで激しい賛否の応酬…内閣府の見解は|日刊ゲンダイDIGITAL
しかし、ここ数日で、安倍氏当人はおろか自民党議員の多くが旧統一教会と深く関わっていることが白日の下になっていることは、この岸田首相の即決と大いに関係しているように思います。
「安倍元総理よりももっと濃密に付き合っている政治家もいる」旧統一教会と政治の関わり、背景に選挙運動か | 政治 | ABEMA TIMES
季刊『宗教問題』の編集長・小川寛大氏はABEMA Primeでこう言っています。
「今は創価学会以外、独自の力で政治家を当選させられるような宗教団体は日本には存在しないと言っていい。それでも政治家としては一票でも多く欲しいものなので、というところがある。それから、個の時代、政治離れもあり、業界団体が内部から選挙運動のボランティアを集めにくくなってきた。その点、宗教団体の信者なら、文句も言わずにタダで働いてくれる。そういうメリットから、名前は出さないが、安倍元総理よりももっと濃密に旧統一教会と付き合っている政治家もいる。……旧統一教会も“家庭連合”と名乗っているように、サザエさんに出てくるような、昔ながらの地域・家族の共同体にこだわる傾向がある。その表れとして、旧統一教会にいい顔をしたい政治家から、LGBTに対して差別的な発言が出てきてしまうということがある」
「……安倍元総理という人は、日本会議も含め、宗教も絡んだ団体と広く交際のあった人だったと思う。仕事で様々な宗教団体に行くが、よく祝電・祝辞を贈っていたし、ある団体には“自民党総裁・安倍晋三”と書かれた立派な花が置いてあった。“これは何か”と訊いたら、“仲良しだから”と言う。旧統一教会と安倍元総理個人がどこまで濃密な関係にあったのかは分からないが、“ズブズブ”では無かったにせよ、家庭環境や、自民党全体の雰囲気の中で付き合っていたということだったのだろう」
その安倍氏が “仲良し” だから、自分も旧統一教会と “仲良し” のほうが「出世(大臣)」が早いと踏んだ自民党議員が数多く関わっていることもわかってきました。冷戦期なら「反共」団体と仲良くして支持をとりつけるという戦法もありなのかもしれませんが、旧統一教会には、霊感商法による被害の声が上がり、1987年に全国弁護士連絡会がつくられたように、その問題性はかなり以前から指摘されています。政治家がこうした団体と懇意になって、優遇措置にまで踏み込んでいたとしたら……。
統一教会は霊感商法などの悪評を払拭し、イメチェンするため? 長年にわたって「改名」を申請していたようですが、2015年まで認められませんでした。元文科省事務次官だった前川喜平さんは2020年12月1日付のTwitterで、<1997年に僕が文化庁宗務課長だったとき、統一教会が名称変更を求めて来た。実体が変わらないのに、名称を変えることはできない、と言って断った>と記しています。
「統一教会」はいつの間にか「家庭連合」に? 悲願の改称実現で行われた“1万人の狂宴集会”(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース
しかし、それから18年後、許可されなかった申請が、なぜか認められることになります。当時、第二次安倍内閣で、「改名」を認可する立場の文科大臣だった下村博文氏についての記事があります。
下村博文氏が旧統一教会の名称変更関与を否定「正確に回答申し上げます」 - 社会 : 日刊スポーツ
下村氏は「文化庁に確認をしたところ、『通常、名称変更については、書類が揃い、内容の確認が出来れば、事務的に承認を出す仕組みであり、大臣に伺いを立てることはしていない。今回の事例も最終決裁は、当時の文化部長であり、これは通常通りの手続きをしていた』とのこと」と説明しました。しかし、前川氏の上のツイートにしたがえば、申請書類に不備があるなし以前に、統一教会の名称変更について政府はずっと慎重だったと想像されます。「仕組み」の問題として、最終決済が文化部長より上の文科大臣にまで行かない(文科大臣が認印を押さない、だから知らない)などということはちょっと信じがたいことですが(その決裁文書を是非お示しください)、百歩譲ってそうだったとしても、じゃあ、下村氏は、旧統一教会が名称変更することにどういうお考えをもっていたのか、霊感商法の事実を知っていて、そのごまかしにつながる名称変更は認めるべきでないとは思わないのか、ということです。責任を他に転嫁しているようにしか見えませんが…。
ABEMA Primeで小川氏は旧統一教会の献金について、こうも言っています。
献金の強制についても、たしかに“いくら払え”といったことを明文化している宗教団体は聞いたことがない。しかし問題がある宗教団体の中には、教えの中で巧みに“全てを投げ出さなければ地獄に堕ちる”といったことを執拗に説いていると、同調圧力、宗教的熱狂もあって、貯金を切り崩してしまうとか、甚だしきに至っては土地や家屋を売却して寄付してしまうとか、そういうことが起きてくる。
語弊のある言い方だが、旧統一教会も含め、問題のある教団というのは、そこへの持って行き方が上手い。模倣する方が出てくるので具体的なことは言わないが、“教祖様”が出てきて、ふわっとしたことを語って乗せる、といったものではなく、ターゲティングし、フォーメーションを組んで囲い込む。これも語弊のある言い方だが、“芸術的”な感じすらあって、普通の人が狙われたら、まず逃れるのは無理だ。
旧統一教会についても、そうした部分について度が過ぎているということは大昔から指摘されてきたし、裁判で負けている事例もあるわけだ。だからこそ、被害者や全国霊感商法対策弁護士連絡会の弁護士さんたちも政治家に対して“やめてくれ”という要望を出し続けてきた。
チューリップテレビには富山県内に住む元信者を取材した特集記事が連日上げられています。
「お金お金お金、献金献金で家庭ぐちゃぐちゃ」山上徹也容疑者の家庭だけではない "統一教会"元信者が語る 富山 | 富山県のニュース|チューリップテレビ (1ページ)
ほかの記事も参照。
しかし、政治家たちは弁護士や被害者たちの「(統一教会と付き合うのを)やめてくれ」、統一教会の宣伝のお先棒担ぎをしないでくれ、という声を無視し、これが社会問題化することを避けてきました。言葉は悪いが、「陰謀」に加担したと言われてもしかたないと思います。例えば、国家公安委員会委員長の二之湯氏についての記事。彼は警察庁を管理する立場の人です。
(画像3/3)安倍元首相銃撃事件で注目の旧統一教会「主導イベント」国家公安委員長が呼びかけ人だった! | Smart FLASH/スマフラ[光文社週刊誌]
政治家たちは、安倍氏を代表格=盾にして、だんまりを続けてきたわけで、その後ろめたさ、責任・追及逃れの感情が吐き出されているのが、今の異常な安倍氏の美化と神格化の煽動でしょう。いくら安倍氏が憲政史上在任最長記録の首相だといっても、国会での虚偽答弁、モリカケサクラなど数々の疑惑の放置に加え、今やアベノミクスの失敗によって四半世紀ぶりの円安とインフレを招いた張本人です。手放しで賛美するのは、諸問題や疑問の声を一気に押し流して忘れさせようとするたくらみがあると思います。
メディアも頼りないと思います。今朝の毎日新聞には、安倍氏国葬「全額国費で」という見出しが見えました。「国葬」なら全額国費なのもまあ当然というか、多くの人は特に違和感をもたないと思いますが、これは、国費(税金)はもっと別のところに使うべきとの、国葬反対者の声を意識して、わざわざ「全額国費」(たぶん1億円以上)と念を押しているということなのでしょうか?
しかし、国葬でなく、自民党・内閣合同葬でも、中曽根氏のときには予備費から約9600万円が費やされたといいます。足りない分を、使途が問われない官房機密費で充足されたら、明細はさらにわからなくなります。かりに自民党からの支出があったとしても、政党助成金ならば税金です。「全額(国費)」だろうが「一部(国費)」だろうが、念を押しても、結局同じことなのです、たぶん……。問題は、「全額国費」かどうかではありません。
安倍氏国葬「全額国費で」 | 毎日新聞
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