ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「裏金の文化」

 昨日政治資金パーティーの裏金問題で安倍派の4閣僚が交代となりました。「異例」中の「異例」と言われますが、今までに「例」がなかったのは、普通はここまで来たら内閣総辞職になるからで、実際、岸田内閣の支持率は、先週の時事通信社調べで17%(不支持58%)です。こう言っては何ですが、こんな「悪あがき」を許して、内部批判(疑似政権交代)も出来ない自民党も堕ちたものだと思います。

 今朝の新聞に「政治とカネ」をめぐる問題について、二人の識者のコメント(インタビュー記事)がありました。一人は今回の問題を刑事告発した上脇さん、もう一人は、政治資金問題のTV解説でお馴染みの岩井さんで、解説者として最適任の二人だと思います。部分的に少し引用してみます。
論点:繰り返される「政治とカネ」 | 毎日新聞


<岩井さん>
…… パーティーは政治家、献金する側の双方に都合のいい制度だ。献金する側からすると、外国人や赤字企業など制限がある献金と異なり、制限がない。公開基準も5万円超の寄付より甘い。一方、政治家にとっても、催し物の対価という建前があるパーティー券は売りやすい。
 94年に政党助成金制度ができてから、献金が集まらなくなったことも背景にある。パーティー券は、政治資金規正法上は、献金の枠外にあるが、買わされている側は献金だと思っている。仕組み自体に矛盾がある。政治資金を集めるためのパーティーなのだから事実上の献金だと私は思うが、対価だから献金ではないという論理だ。
 最大の問題は、チェックする仕組みがないことだ。20万円超は公開されるといっても、本当にそれだけかは確認できない。どうしたらパーティーを開いたことになるのか、決まりはなく検証もされていない。政治資金収支報告書を調べていると実際にパーティーを開いたのか、疑わしい例もある。……
 カネは、派閥領袖(りょうしゅう)クラスが配る時にも、国会議員が地方議員に渡す時にも、正しい方法でやると名前が表に出る。誰にいくら渡したかが公表されるのはトラブルのもとになる。だから現金で渡したいとなる。パーティーは現金が集まるから裏金作りに利用された。
 裏金は日本政治の慢性の病で、結局は買収のためだ。昔より劇的に減ったが、今も残る。政党本位の選挙になったが、現場はいまだに後援会選挙だ。後援会の維持にカネがかかる基本構造はあまり変わっていない。いろいろなところに裏金を作る仕組みがある。たとえば、政党から政治家個人に支出される「政策活動費(組織活動費)」は億単位だ。政治家に渡された後は使途も何も明らかにする必要がなく、事実上の裏金だ。逆にそれだけ裏金を必要としている。……

<上脇さん>
……パーティー券を買った側と、売った派閥側、双方の政治団体の収支報告書を突き合わせるとズレがあるので、不記載がわかった。しかし、それ以外に不記載がないということではない。買った側の政治団体が記載しなければ、わからない。また、企業や個人の側には報告制度がないので、派閥の政治団体側の収支報告書と突き合わせることができない。派閥側に企業分の不記載がないとはいえない。私が告発した分は氷山の一角だ。
 パーティーの仕組み自体も問題だ。本来は売った券の枚数分、基本的には全員参加するのがパーティーのはずだ。ところが、はじめから買った人が全員参加するわけではないことが前提になっている。たとえば、2000人しか入らない会場でその何倍もの券を売り、経費を減らして収益を上げている。限りなく寄付に近い状態だ。企業は政党(本部、支部)、政治資金団体以外には寄付できない。そのため派閥のような政治団体には寄付できない。だからパーティー券を使い、事実上、派閥に対する企業献金になっている。
 寄付であれば、年間に合計5万円を超えたら、いつ誰から寄付を受けたか、明細を記載しなければならない。ところがパーティー券は1回につき20万円を超えなければ記載の必要がない。たとえばパーティーを5回やって、1回20万円ずつ、年間で100万円買ってもらっても名前は記載しないですむ。実態としては寄付であるのに、制度としては寄付と全く違う建前になっていることが問題だ。
 裏金とは使途を明らかにしないカネだ。選挙の買収に使う恐れも、政治をゆがめる可能性もある。こっそりカネを使う政治をするという感覚の政治家が国民のための政治をするだろうか。
 政治資金規正法は政治活動におけるカネをさらけ出し、使い道の説明責任を果たすためのものだ。裏金を作ることは法の建前とは違う政治をやっていることになる。政党助成金制度があるのに裏金を作っているならば、納税者から見れば「泥棒に追い銭」だ。こんな政治をしている政治家に国民の苦しい生活がわかるわけがない。
 収支報告書を見ると飲み会が多く出てくる。政治家は「政治にはカネがかかる」と言うが、飲み会に政治資金が必要だろうか。ポケットマネーでやればいいことだ。……

 昨日の郷原信郎さんの配信動画「日本の権力を斬る!」では、「頭悪いね」発言で有名となった長崎3区選出の谷川弥一衆院議員の話をされていました。この議員は、例の安倍派の政治資金パーティーでは5年間で4,000万円をキックバックされ、収支報告書に記載がなかったそうですが、問題はこのお金を何につかったかです。
【パーティ券裏金受領疑惑「逆ギレ」谷川弥一氏、20年前の長崎での「思い出」】郷原信郎の「日本の権力を斬る!」#296 - YouTube

 山口……当然、その政治資金が何に使われているのか、もう一つ話題になっているのが、芸者代に15万円使っていたというのを指摘されて。(これを)政務活動費かなんかで一応計上してたらしいんですけど、要するに、東京から来た国会議員の人に長崎の芸能・芸術を見せようと思ったというので、これが政治活動費だと言い張っていて。つまり、非課税のお金で芸者さんを上げていたということまで明らかになっちゃいまして……。
 郷原この人の感覚からしたら、4,000万円の裏金をもらった? どうしたの、それが? 何が悪いの? ねえ……。
 山口俺が売ったんだもん……。
 郷原そう、当然じゃん、みたいな感じで……。
 山口しかも、そういう(4,000万円の)お金は何に使っているかわからないわけですからね、今日現在。
 郷原表に出る金で、芸者遊びでしょ。じゃあ、裏って言ったら、一体何に使ってるんですかね?……

 自民党の派閥が「パーティー券販売会社」と化し、国会議員諸氏がその「社員(セールスマン)」になるのを促し、(一部を)肥え太らせた責任の一端は、総体としての国民にあると思わなければいけないのでしょう。というのも、嵐が過ぎ去るのを待っていれば(やり過ごせば)国民は必ず忘れるという議員諸氏の「期待」に、これまで我々はだいたい応えてきてしまったのですから。



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