ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「裏金」の何が問題か

 立憲民主党の泉代表が先週の12月13日夕方、JR秋葉原駅の西口で演説する動画(部分)を見て、意外になんて言ったら失礼ですけど、話がうまいなぁと感心しました。政治家なんだから当たり前と言えばそれまでですが、今や音を発するだけで内容が何もないか、20から30字くらいで収まる定型の枕詞を置いたらあとは黙秘をするか、いずれにしろ、意味のない話しかしない(できない)政治家があまりに目立つので、こんな当たり前のことをする(できる)政治家に「新鮮味」を感じてしまうのです。no nameさんのツィッター(X)から引かせてもらいます。
https://twitter.com/gohauni22suru/status/1735275498006282408

……これは単に自民党の議員が懐を温めていたという話に留まらないんですよ。なぜか? 政治資金規正法にはですね、なぜ政治資金を明らかにするのかと言えば、それは、皆様にちゃんと監視をしてもらい、皆様の批判のもとに、政治活動が行われるようにするためだということが、政治資金規正法にちゃんと書かれています。その意味ではですね、やっぱりたとえば経団連自民党に24億円も年間献金しているということについて、明らかになるから、皆さんはようやく、それがおかしいか、おかしくないかの判断ができるわけですよね。チェックができるわけですよ。でも、これが裏金だったら、まったくチェックできないですよね。ですから、もしかしたらですよ、これ裏金だからわからないんです、わからないんですけど、もしかしたら、その裏金を受け取って、自民党議員は国会質問をしているかも知れません。明るみに出たのは、一つありましたよね。あのー馬を買った議員、いましたよね。秋本なんとかっていう自民党の……。風力発電の業者から、風力発電の国会質問をする。それだけで合計3,000万円ものお金をもらって、馬の共同購入か何かわかりませんけど、そんなことをやっていたという話、あったわけですよ、現に。私ね、この事件だって全然いいわけがないと思ってるけど、今この場では、それはまだマシな方ですって言わなきゃいけない。(なぜって)明るみに出ているから。それぐらい裏金っていうのは、悪いことだっていうことですよ。裏金になったら、そんなことをしているかどうかもわからないんです。是非みなさん、だからこそこの裏金は絶対許してはいけないんだと、是非是非、今たまたま秋葉原を通ったみなさんもですね、私たち立憲民主党、そういう正しい政治を日本の世の中に広げていきたい、そうじゃないと政治が曲がる、お金によって行政が曲がる、そんな政治嫌ですよね、皆さん、(そーだーの声)一緒になって頑張りたいと思います。……

 しかし、ここでのポイントは演説が上手いかどうかではなく、「裏金」の何が問題か、です。泉さんも上で述べているとおり、企業が名前を隠してこっそりと政治家に献金(という賄賂)をし、その意を受けて、政治家がその企業に有利な法律をつくったり、国民のためにならない政策をとったり――ということにならないように、政治家の政治資金の出入りをなるべく透明化しようというのが、政治資金規正法の趣旨ですが、それがないがしろにされてしまう、それが問題です。たとえ、同法が抜け穴だらけのザル法だと言っても、法律の趣旨や精神を曲げていいことにはなりません。

 元内閣官房参与藤井聡さんもこう書いています。
自民党「裏金問題」の本質は「未記載」ではない…!企業との癒着による政権与党の「腐敗」その追及は国民の責務である(藤井 聡) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)

……多くの国民は、「自民党が何だか凄いワルイコトしてる!」という風にざっくりとしたイメージを持っていると思われますが、何がどう悪いのか、いまひとつ十分に理解されていないのではないかと思います。
 しかし、こういう問題は、「法的」に何が問題なのか、という話と、「道義的」に何が問題なのか、という話を分けて考えないと、事の本質を見誤ることになります。
 まず、「法的」に問題なのは、繰り返しになりますが「20万円以上の政治献金(この場合はパーティ券収入)」の未記載です。つまり、ただ単に、「記載するべきものを記載していなかった」という事が問題となっているのです。だから、場合によっては、「記載漏れがありました、ごめんなさい。これからきちんと訂正します」というだけで、お咎めなしになり得るのです。
 実際、そうやって言い逃れし、無罪放免となってきたケースは過去に数多くあったわけですし、今回も岸田総理自身が既に、自派閥の「裏金」問題を、「記載漏れ」だけで終わらせようとする発言をされています。……
 では、道義的な問題として考えた場合、本件の一体何がワルイ事なのかと言えば、それはすなわち、「企業と自民党政治家が、パーティ券購入を巡って癒着し、それによって政治が歪められ、日本国民が大きな被害を受ける」ということそれ自体です。
 さらに詳しく言うなら、各民間企業は政治家に取り入って、自社の利益になるように動いてほしいという「下心」でパー券を買う一方、政治家の側は、パー券を買ってもらった「見返り」に、その企業に対して「便宜」を図るという構図それ自身が問題なのだ、という話なのです。……
 そもそも派閥所属議員は、派閥のパーティがある度に、凄まじいノルマを課せられます。そのノルマを達成すれば派閥の中で優遇されて「出世」できるけど、達成できなければ冷遇され出世できない。だから、派閥議員達はノルマ達成に必死になる。
 そしてそういう議員たちは何とかパー券買ってもらうために「パー券買ったらオイシイことが有りますよ」と陰に陽に言い出すことになる。そしてその結果、政治が実際に歪むという事になってしまう。
 すなわち「たかだか数万円のパー券」のせいで政治が歪んでいくという構図があるわけで、したがって、表面的な法的問題の背後にあるのがこの、「パー券を通した与党と各業界との癒着構造」なのです。……
 したがって、国民は今、特捜部が誰を逮捕するのかという問題とは別の次元で、その癒着構造、贈収賄構造の疑義を徹底批判せねばならないわけです。これこそが、有権者としての日本国民の務めであると筆者は考えます。……

 世論は熱しやすく冷めやすいとはいえ、これは執念深く(しつこく)やらないといけないと思います。後から考えると、今が日本政治の大きな転換点になるかも知れませんから。


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