ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「アベチル化」と「安倍派バブル」

 一昨日ブログに戯れ言を書いて悪ふざけをしているうちに、自民党政治資金パーティー収入の「裏金」問題は、一夜にして政局に発展する大問題になって、少し驚いています。昨日裏金問題で実名が出た松野官房長官は、終日疑惑に対して何ら釈明出来ず、今朝の読売新聞によれば、辞任は必至の情勢です。昨晩は、高木国対委員長と世耕参院幹事長など、安倍派の「重鎮」の名前まで挙がり、安倍派はもとより、岸田内閣の存続に決定的な打撃を与えるかも知れません。
 しかし、こんなふうに少しずつ政治家の実名を出しながら世論を煽っているのは、むろん検察でしょうから、ここまで煽動しておいて、後で記載漏れを修正してくれればOKみたいな話で手打ちにならないか、そんなことを考えながら、昨日、元検察官で弁護士の郷原信郎さんの配信動画「日本の権力を斬る!」を見ていたら、こんな話をしてました。一部の要約です。
【山田恵資氏と語る「自民党派閥政治資金パーティ裏金問題」、政界の動揺、検察の「ヤル気」、刑事立件の見通しは?】郷原信郎の「日本の権力を斬る!」#293 - YouTube
赤字下線部は、時系列上、追加した部分です。

 ……この件では自民党サイドも相当動揺しているようです。昨日(12月3日)放映された「激論!クロスファイア」でも田崎史郎さん(政治評論家)などが、リクルート事件以来の大変な疑獄になるとまで言われていました。この問題はここまでのところ、政治(家)の側の反応が大きく影響しているように感じます。
 そもそもこの件は、(前年の赤旗のスクープ報道を受けて)今年の1月に上脇教授が告発したのが始まりです。それから何ヶ月かたって、9月か10月あたりに自民党の各派閥の会計担当者が検察に呼ばれたという話で、告発を受けて検察がすぐに動いたわけではなく、そこまでは、ある意味、当たり前の話の展開です。しかも、(当初は)20万円超の記載義務違反ですから、それほど大きな話ではなかったはずです。
 ところが、「選択」(月刊誌)の記事には自民党関係者の話がいろいろと引用されて、「大変な問題かもしれない」と動揺が広がっているというように書いてあって、まず、そのあたりが、この問題が大きくなっていった背景としてあるんじゃないかと思います。自民党の議員からすれば、ノルマを超えた分を懐に……みたいな話は、長年やって来たことだとすれば、やっていることの悪さがわかっているだけに、検察が動くとなると、これは大変なことになるぞという恐怖感があったんじゃないかと思うんです。これ、もし第二次安倍政権の時代だったら、みんな安心していたと思うんですよ。どうせ検察は動かないだろうって。ところが、安倍元総理が亡くなって、安倍派は今統率をとれない状態です。岸田首相の支持率もどんどん低下して、政治権力がまさにぐちゃぐちゃになっている。こうなってくると、検察は何をしてくるかわからないぞという恐怖心があるから、自民党内で騒ぎ始めたんでしょう。党内の動揺を政治記者も察知して、これは大変だ、大変だ、という具合に、政治の側から騒ぎが大きくなっていったんじゃないか。
 となると、次は、検察は動くのか、という話になります。記者の方から検察に、これ、大変な騒ぎになっているけど、動くんですか、みたいな話をされたら、検察としてもそれは動かないわけにはいかんだろうということになり、それが政界にも伝わってますます騒ぎが大きくなっているんだろうと思います。これはある意味、政治の側の自爆なのかも知れませんが、検察の側も「燃料投下」をして、騒ぎを大きくさせているところは感じます。しかし、これだけ騒ぎを大きくして、検察はちゃんと落とし所を考えているのかどうか、「歩留まり」と言いますか、それを考えもしないで、全国から応援をとって大捜査体制を敷いているとか、普通そういうことはやりませんから、そこが問題です。要するに、証拠のレベルはこのくらいで、事件の立件の可能性はこれくれいで、でも、やってしまえば勝ちだ(裁判所はついてくるはず)というような考え方で今の検察が動いているような感じもあります。
 ただ、今回ちがうと思うのは、この事件は、裁判所がついてくるかどうかではなくて、事件が形になるかどうかもけっこう問題なんです。というのは政治資金規正法というのは全体がザル法で、しかも、そのど真ん中に穴があいてるんですね。それは、政治家がヤミ献金を直接受け取ったとき、その献金は政党支部に属するのか、資金管理団体に属するのか、どこ宛なのかがわかりません。だから、どこの収支報告書に記載すべきなのかがはっきりしません。なので、収支報告書の虚偽記入罪が立件できない。今までも、これで立件できたケースはひとつもありません。政治資金規正法という法律では、少なくとも、もらった側を刑事立件するのは非常に難しい。そう考えると、「歩留まり」とか、見通しがあるとかで検察が動いているようには、常識的には、見えないんですね。 
 しかし、ちょっと次元のちがう見方をすると、今の世の中が、これだけ物価高やインフレで生活が苦しくなって、庶民の怒りが政治に向けられる状況だと、国会議員は裏金をつくって使い放題なのか、そんな恵まれた立場なのか、という不満があると思うんです。この不満というのは、法的に刑事事件になるかならないかという話では収まらず、ならなかったら許しがたいという話になるわけで、ならなかった理由が、検察がやり損なったとか、犯人を間違えたという話ではなくて、制度が悪い、政治資金規正法というルールが悪いとなったら、そんなルールを誰がつくって放置してきたんだということになります。それは政治家なわけですから、ここに怒りの矛先が向かうでしょう。だとすると、検察にとっては、むしろやり得になるんじゃないか。(かりに立件ができなくとも)結局、やれるだけのことはやりました、これだけの事実解明もしました。でも、このルールでは、これ以上はできません、と。そう言えるんだったら、これは半ば「成功」と言えるんじゃないか。となると、政治の側にはブーメランのようにこの問題が返ってきて、この問題をこのまま放置しておいていいのかっていう話になっていくでしょうから、むしろ、ちょっとした刑事事件で立件されて決着するくらいの方がまだよかったのではないかと。それくらいの大変な騒ぎになっていると思いますね。……

 今朝の毎日新聞のコラム「土記」で伊藤智永さんはこう書いています。
土記:安倍派バブルの崩壊=伊藤智永 | 毎日新聞

……安倍派の元ベテラン秘書らに尋ねた。異口同音に「安倍晋三政権が長すぎた。あの半分ぐらいでよかった」と慨嘆し、「アベチルドレン」(衆院なら当選4回、参院は当選2回以下の議員たち)への危機感をこぼす。
 「安倍人気に便乗すれば当選できたから、安倍さんをヨイショすることにばかり一生懸命で、自分の支持者を作っていない。結局、資金稼ぎも安倍頼みになる」
 議員個人の名前で売れるパー券は限られるが、「東京の一流ホテルで開かれるナマ安倍総理のパーティーですよ」と言えば売れる。それでノルマ以上の収益は自分のもの。別の元秘書が怒る。
 「政治家をボロい職業と勘違いしている。彼らの保守万歳は安倍さんに取り入りたかっただけ。フワフワして芸能人みたい。派閥パーティー桜を見る会(定員なし)と一緒だ。それどころか幹部議員たちまでアベチル化したよ」
 人数もカネも中身も水ぶくれした安倍派バブルがはじけようとしている。長期政権が腐敗する鉄則は生きていた。

 このヤミ献金に限らず、「政治家業」が「集金イベント業」に堕している現状が、特に自民党議員には目に付きます。しかし、結局のところ、以下の記事などを見ると、そういうのを「容認」しているのは、個々の人はともかく、総体としての国民だとも思います。ある意味、議員にかぎらず、多くの者が「アベチル化」していたのかも知れません。
くらしナビ・ライフスタイル:15年分の消防団員報酬「空っぽ」 | 毎日新聞

 「卵」と「鶏」とどっちが先かはわかりませんが、当座「卵」からでも「鶏」からでも、できるところから変えていくしかないのでしょう。自分の関わる組織や集団を前にすると、気が重いですけど……。この裏金問題を、そのきっかけにできればよいのですが。



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