ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「錯誤」のなかでフタがとれ

 この国の政治の潮流、世の風潮の潮目が変わったというのは、この2ヶ月でたびたび感じるところです。フタがとんだ、とか、重しがとれた、という表現が言い得ているように、この数年間、報道・ジャーナリズムや学校教育をはじめ、いろいろなところを蔽っていた澱んだ空気、こんなことを言っても大丈夫なのかと、何となく発言を抑制したり自己検閲させたりする力が薄れた感じがあります。きっかけはまちがいなく安倍氏の死去です。逆に考えると、「安倍晋三」という存在は何だったのだろうか、と思います。まだ一変とまでは言えないものの、テレビには確実に変化が現れているように思います。今までが酷すぎたとも言えますが……。

 日本テレビではここ一月余り「情報ライブ ミヤネ屋」が統一教会問題にするどく切り込んだ番組づくりを続けています。外部からは判然としませんが、局内の報道の雰囲気に変化があるのでしょう。同局が夜中に放送しているNNNドキュメントも、過去には戦争責任、差別、冤罪など、日テレ系列の地方局が持ち回りで、日本社会や政治の暗部を剔り出すような番組づくりをしていて、よく録画視聴していました。教員をしていた頃には拝借して授業で生徒に見せた映像もあります。しかし、ここ数年は政治的な琴線に触れるような内容には抑制的だった印象があります。
 HPから最近の同番組の題名を拾って一覧にすると、以下のようです(日付はみな正確には翌日の深夜です)。
NNNドキュメント|日本テレビ

≪2022年≫
〇9月18日 みいちゃんのお菓子工房~場面緘黙症 少女の夢~
〇9月11日 真夜中の青空 ひとり親救う夜間託児所
〇9月 4日 休診日に会おうぜ!~毒舌院長「大丈夫、みんなできる」~
〇8月28日 核兵器とPeace
〇8月21日 「体験者」じゃない被爆者だ!!~長崎 置き去りにされた私たち~
〇8月14日 侵略リピート
〇8月 7日 オキナワ1967 “沖縄18歳の発言”から55年
〇7月31日 禎子さんの折り鶴 千羽になったら願いが叶うんよ
〇7月24日 あぶない きたない ばかばかしい “子どもの力”信じる青空保育
〇7月17日 傾斜地に生きる 徳島・にし阿波の一年
〇7月 3日 足りなかった勇気~西日本豪雨 父と愛犬の4年間~
 

 参考までに、一年前の同時期のものも並べてみます。

≪2021年≫
〇9月26日 あきらめまーや!~不屈のネイリスト…必ず歩く~
〇9月19日 帰ってきたロフマン
〇9月12日 笑顔のヒーロー コロナ禍に挑む大道芸人たち
〇9月 5日 奨、前へ前へ ~ありがとう ボクの足~
〇8月29日 学校安全の現在地 ~附属池田小殺傷事件から20年~
〇8月22日 瀬戸内海がゴミ箱になる日
〇8月15日 メアリーが伝えるヒロシマ
〇8月 8日 できることって、何? ~コロナ禍 東京 小学校の記録~
〇8月 1日 残してください 被爆ポンプです。
〇7月25日 ほころぶ 性暴力被害者 それぞれの一歩
〇7月18日 遺族とマスコミ ~京アニ事件が投げかけた問い~
〇7月 4日 ヤングケアラー “見えない子どもたち”のSOS
 

 すべて内容を見たわけではないし、題名だけ比較してどうということは言えません。しかし、少なくとも昨晩(というか今朝)放送された「死刑執行は正しかったのかⅢ~飯塚事件・真犯人の影~」は見応えのある内容で、この番組の「元の路線」に戻った感じを強くもちました。これはもはや「冤罪」と断言してよい事件です。12年にわたる追跡調査には頭が下がりますが、こういう内容の番組が今までどれくらい「お蔵入り」にされていたかと思うとゾッとします。

死刑執行は正しかったのか3 ~飯塚事件・真犯人の影~

 9月24日付のデモクラシータイムスを見ていたら、おおよそこんな話がありました。
デタラメな「国葬」反対の嵐! ずれまくる首相、支持率急降下 WeN20220924 - YouTube

 田中優子:(若い人たちには)事実を知らせるしかないんで、森友学園のことも加計学園のことも教育とつながっているんですね。安倍さんは(第一次政権でまず教育基本法から手をつけたけれども)おそらく、子どもたちの世代に、自分が考える世界観、つまりは、(自分たちを批判する)あの人たちは共産主義者だという、安倍さんが考える非常に狭い世界観とか価値観を、教育勅語的に子どもたちに教えたかったんじゃないかなと思うんです。それは自分の味方を増やすことでもあるんですけど、非常に単純で、安倍さん自身も知識がない、自分自身で学んでいないからだと思いますけどね。マスコミが事実をきちんと伝えられなかった理由のひとつは、あまりにナンセンス過ぎて、そんなことありえないんじゃないかと思ってしまうわけです。私もそんなにひどいとは思わなかったのは、今度の統一教会の件で、この問題が出たとき、そんなに(安倍さんや自民党と)直結していたとは思わなかったし、そんな甚だしい錯誤があったってことも意外でした。前から批判はされていたけれども、こんなだったとは思わなかった。そういう事実を伝え続けていかなければならないと思いますね。
 白井聡:マスコミや大学で教えている人たちにも錯誤があると思うんですね。というのは、この国や社会はまだけっこうちゃんとしていると思っているんだけれども、実は末期のソ連みたいなもので、ほとんどすべてデタラメだと。そういう基本的な見方を前提とすれば、サタンとか言っている荒唐無稽な妙な団体の思想が自民党に流れ込んで、それが教育政策とか憲法の議論に圧力として作用したりシンクロしたりすることがあるかも知れない。そんなことはまさかあり得ない、ということがあり得ないんで、その程度のことは実はアリアリだよと、前提自体を変えないといけないと思いますね。

 亡くなったソ連ゴルバチョフ氏が、チェルノブィリ原発事故の真実を知ったのは、外国の報道だったと言われています。日本がひどくなったとはいえ、さすがにそこまでは堕ちてはいないだろうと、小生などもどこかで思ってきたところはあります。しかし、そこにはやはり「錯誤」があったかも知れません。
 普通に考えれば、統計をかさ上げしたり捏造したりしたら、一般の人には国民経済の実態などわかりようがないし、有効な対策がうてるはずもありません。それでは目隠ししながら勘だけで前に進むようなものです(スイカ割りでもあるまいし)。あるいは、そもそも国会答弁で総理大臣がウソをつきまくることなどあり得ない話ですし、自身がそれを認めていても、なおも議員を続けるなど、他の国では考えられないことでしょう。その他、こうした「あり得ない」事例には事欠きませんが、デモクラシータイムスの中で北丸雄二さんが言っていたように、今やリベラルや民主主義が「左翼思想」だと攻撃される国です。「人民の人民による人民のための政治(政府)」が「左翼思想」だったら、リンカーンはさしずめ社会主義者共産主義者というところでしょうか。まったくもって無知無学の恐ろしさ、そういう人を総理大臣にしてしまう政党と国民、政治のことは政治家にまかせとけばいい、口を出すな、という認識の怖さを再認識します。
 カナダのトルドー首相が直前になって国葬儀欠席に転じたのは、ハリケーン被害への対応と言いつつも、日本国民の反対の声の多さにギョッとしたからでしょう。その他の首脳たちもおそらくは同様です。しかし、「聞く耳」「聞く力」がウリの当事国の首相は気にしない(いや、多少は気にするかもしれませんが、結局はもう片方の、国葬反対の声を「左翼思想」と罵る側の声を聞いて、それに従ってしまう)。明日、多くの人々が反対の声を上げるなか、国葬儀は強行されようとしています。





↓ よろしければクリックしていただけると大変励みになります。


社会・経済ランキング
にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
にほんブログ村