ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「永久顧問」と「永世名誉司会」

 今日も「短編」で。
 自民党議員の「保守団結の会」が一昨日(8月29日)、元々会の顧問で、先月亡くなった安倍晋三氏を「永久顧問」に選任したというニュースを知りました。
「考えをしっかり継承していく」安倍元総理を“永久顧問”に選任 自民党「保守団結の会」 | TBS NEWS DIG (1ページ)

会にかかわりはないので、とやかく言う資格もありませんが、こういう「永久…」というのは近頃の「日本の心性」に合うのかも知れないという気がしました。

 似たような事例かどうか、日テレの長寿番組の「笑点」に長く出演し、大喜利の司会もしていた落語家の桂歌丸さんは、病気療養中は「終身名誉司会」、2018年に亡くなってからは「永世名誉司会」の肩書きで、番組のオープニング・アニメに「登場」しています。見ていると、大喜利では今でも故人の名前がよく出てきます。他にも亡くなった司会者は4人いますが、どうして歌丸さんにだけこうした称号を送るのか。ただ一人残っていた番組創設時からのメンバーで、「ミスター笑点」と呼ばれる存在だと、説明がなされていますが、調べてみると、当時もこれに違和感をもった人はいたようです。
 2018年7月24日付「リアルライブ」にはこう書かれています。
『笑点』桂歌丸の「永世名誉司会」に賛否両論 過去の司会者を無視している? | リアルライブ

 7月22日、日本テレビの番組『笑点』が7月2日に亡くなった桂歌丸師匠に「永世名誉司会」の称号を贈った。歌丸師匠は2016年5月に番組を降板した後も、『笑点』には「終身名誉司会」としてクレジットされており、影の出演者として笑点を見守ってきた。
 しかし、7月2日に歌丸師匠が亡くなったことにより、終身名誉司会の任は解かれることとなり、7月22日からは亡くなった後も笑点に関われるようと「永世名誉司会」の称号を贈ったという。
 現在、『笑点』おなじみのOPアニメには、歌丸師匠は「終身名誉司会」ではなく「永世名誉司会」の肩書きで登場しており、永遠に笑点を見守る神様のような存在になっていくという。
 一部ネットでは「粋だと思った」「これは泣ける」と反響を呼んでいたが、その一方、この歌丸師匠の「永世名誉司会」就任には疑問も多いという。
 歌丸師匠は笑点の降板後「笑点ではなく落語家の桂歌丸として死にたい」と語っていたが、この度、永世名誉司会に就任したことにより、「死んでからも笑点にかかわり続けるのは本人にも酷なのでは?」との声があるほか、これまで笑点を盛り上げてきた歌丸師匠以前の司会者に対して、ややおざなりになっているとの指摘もあるという。……
<以下略>

 「永遠に笑点を見守る神様のような存在」――「死者」に文句を言わない、なじらないのはこの国の「美徳」かもしれません(もちろん歌丸さんを悪く言うべきところなど小生には感じられません)が、逆に死者側が文句を言わない、何も言わない(言えない)のをいいことに、現世の人間が「永久」「永世」などの称号を付けて、結束・連帯あるいは対外的好感度?など、自分たちのために利用することには、小生も違和感を抱きます。同時に、「伝統」や「伝説」というのは、こうやって恣意的(独善的)にかたちづくられるものなのかと思います。

 歌丸さんが亡くなってすでに4年。義理がたいのはけっこうですが、「現在」がずっと続いていくわけではありません。いつかは「永世」の冠を外し「名誉司会」職を解かねばならないでしょう。誰が言い出すのか、あるいは、誰も言い出せないで、このまま進んでいくのか。どうも後者の可能性の方が高い気がします。それは、「現在」が永遠ではないことが頭ではわかっていても、願望の方が上回っているためか、みんな何となく「ユーフォリア」な幻想から離れられない。結局番組にピリオドが打たれるまでそのままなのかも知れない、などと考えると、急に、この長寿番組と国の姿が重なり合うように思えてきます。

 蛇足で、もう一点。笑点のオープニング・アニメの動画を眺めていると、大喜利出演者の紹介順が年齢順になっています(司会者の春風亭昇太さんが出てくるのは5番目です。もし、これを見なければ、改めてメンバー個々の年齢差を意識することなどないでしょう。)。こんなところにまで「年功序列」(年長者を立てる)という「論理」が働き、それが延々「無風」で続いていくのかと(そのくせ、座布団を運ぶ山田さんは、最も若年というわけではないのに、歌丸さんを除いたメンバーの一番最後なのです)。芸能界、落語界の話とはいえ、これが当たり前だという感覚には、政界に似て、やはり驚かされます。子どもから見たら、70代でも80代でも、同じく「高齢者」でしょう。






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