ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

これは「民主主義への挑戦」なのか?

 8日に安倍氏が銃撃されて亡くなった件をめぐり、メディアや政治家たちから「言論の自由の封殺、民主主義への挑戦」という言説があふれていることには違和感をもっています。警察発表によれば、逮捕された容疑者の話から出てくる動機に、政治的意図を感じさせるものは見当たりません。どなたかが言ってましたが、もし政治的意図をもった行為であるなら、容疑者から逮捕後、もっと自己の正当性を主張する供述があってしかるべきです。確かに事件は、安倍氏が選挙の応援演説の最中に起こりましたし、安倍氏の思想信条を是としないに人は少なくありません。しかし、だからといって、この事件に主観的な政治の色を付けるのは短絡的で危うい感じです。むしろこれは、個人的怨恨に発する他の殺人事件などと同じと見る方が妥当ではないか、と考えていたところ、弁護士の郷原信郎さんが、そのもやもやした感じをズバリと文字にしていて、すっと胸に落ちる感じがしました。
 7月9日付のニュースレターから引用をお許しください。

安倍元首相殺害事件は、「一つの刑事事件」として真相を見極めるべき | 郷原信郎の「世の中間違ってる!」

……今回の事件の発生直後から、
「言論を暴力で封じ込める行為」
「自由な民主主義体制を破壊する行為」
などの言葉が使われていることには違和感を覚えます。
参議院選挙の投票日の2日前に、その参議院選挙の応援のための街頭演説を行っていた最中に起きた事件であること、それが、選挙に多大な影響を生じさせたことは間違いありません。しかし、犯罪の動機が、選挙運動の妨害などの政治的目的であったとする根拠は、今のところありません。選挙期間中の街頭演説中の犯行だったことだけで、反抗の政治性や、選挙との関連性を決めつけた見方をすることは、逆に、選挙や政治に不当な影響を与えることになりかねません。

犯行直後から、安倍政権時代の様々な疑惑について、安倍首相が野党やマスコミから批判されてきたことが今回の犯行につながったかのように決めつけ、
「アベガーのせいで安倍元首相が殺された」
などとSNSで拡散している人もいますが、軽率の誹りを免れないと思います。そのような見方は、逆に、本件を政治的目的によるテロであるかのような誤解を生み、模倣犯の発生につながる可能性もあります。

ここで、間違いなく言えることは、今回の安倍氏殺害は、「選挙期間中に選挙の街頭演説中の政治家が被害にあった」という特異性はあっても、あくまで「1件の刑事事件」だということです。被疑者は、今後、刑事訴訟法の手続にしたがって、証拠取集が行われ、起訴され、刑事裁判で判決が言い渡されて処罰されることになる。そして、最終的には、刑事裁判での事実認定によって、この安倍元首相殺害事件というのが、どのような動機・目的で行われた事件だったのかが明らかになるということです。

逮捕された山上徹也容疑者は、警察の取調べに対して、特定の宗教団体の名前を挙げて
「恨みがあった。団体のトップを狙うつもりだった」
「(安倍氏が)団体とつながりがあると思った」
「母親が(この宗教団体の)信者で、多額の寄付をして破産したので、絶対に成敗しないといけないと思っていた」
と供述しているとのことですが(読売)、そうであるとすると、政治的目的はなく、個人的な恨みを動機とする犯行を行うに当たって、それが可能だと考えた現場が、たまたま選挙演説の場だったことになります。
仮に、動機が、「特定の宗教団体に対する恨み」であったとして、その恨みを安倍元首相に向ける理由があったのかどうかは別の問題です。しかし、2021年9月17日に、全国の弁護士300名からなる「全国霊感商法対策弁護士連絡会」が、特定の宗教団体について、
信者の人権を抑圧し、霊感商法による金銭的搾取と家庭の破壊等の深刻な被害をもたらしてきた問題について、国会議員や地方議員が特定の宗教団体やそのフロント組織の集会・式典などに出席し祝辞を述べ、祝電を打つという行為が目立っており、宗教団体に、自分達の活動が社会的に承認されており、問題のない団体であるという「お墨付き」として利用されている
として、安倍晋三衆議院議員宛てに公開抗議文を送付していた事実があり、特定の宗教団体による被害を、安倍元首相への恨みに結び付けることも考えられないわけではありません。
いずれにしても、本件の犯行動機が何なのかは、今後、刑事事件の捜査・公判を慎重に見極めていかなければいけません。
<以下略>

 ちなみに、上に出てくる「宗教団体」の具体名について、国内の大手メディアは一切名前を出しません。海外のメディア報道を見て初めて具体名を知ったという人もいます。こんな報道管制は異常です。もし、そんな不自然なことをしてもOKなら、容疑者の名前だって伏せて「匿名」でもよいし、写真で顔を出す必要もないし、経歴などについても、第三者が特に知る必要のない情報をことさら報道しなくても、差し支えはないはずです(実際、これがもし少年事件だったら実名報道などしていないのですから)。こうした不自然な隠しだてを一体となって行うメディアが、世間に向けて「言論の自由の封殺」「民主主義への挑戦」などと声高に言える資格がどこにあるのかと思います。

 郷原さんが上に書いていますが、この「宗教団体」に関与する安倍氏に送付されたという、昨年2021年9月17日付の公開抗議文を以下に付します。
公開抗議文 衆議院議員 安倍晋三 先生へ 統一教会 家庭連合





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