ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「報道特集」教員の“ブラック勤務”問題 を見て

 昨日のブログで、教員に授業評価をするよりも、休ませた方がいいと書きましたが、夕方、TBSの番組「報道特集」で「教員の“ブラック勤務”問題」を見ました。違法な長時間労働のことを「ブラック」と呼ぶ「語法」には違和感もあるのですが、他の職業も同じ問題を抱えているところはあるので、むかし学校で働いていた者としては、多くの人に共感してもらえるのであればそれでもよいのかなと思っています。以下、思いついたことを記してみます。

 番組は大阪の府立高校の教員の訴訟の紹介から始まりました。JCCに冒頭の抄録があります。

<特集>教員の“ブラック勤務”問題 TBSテレビ【報道特集】|JCCテレビすべて

 教員の仕事が長時間になるひとつの原因は、仕事に際限がないということだと思います。まず、仕事の量です。授業とその準備や事後処理、校務、クラス担任、おまけに部活動の顧問など、一人の教員に任されている仕事がそもそも多い。生徒を相手にしていますから、何かことがあれば、生徒の個別情報について尋ねられますし、情報交換も必要ですから、担当する生徒の個別情報や学習の記録などもそれなりに控えて整理しておく必要があります。1クラスには30人から40人の生徒がいます。一人ひとりを大事にしたいと思うのはもちろんですが、個別指導を十全にやろうと努めたら、寝ないでやってもたぶん終わりません(そもそも「十全」なんてあるのだろうかと思います)。仕事にはキリがありませんが、教員には、人間ですので、申し訳ないけれど限界があります。
 教員にだって家庭はあるし、子育てや介護だってあります。いくら勤務時間内に仕事を終えるようにと、教育委員会や学校の管理職が勤務時間を「厳守」させたとしても、大半の教員は仕事を家に持って帰って、家事をしながら残業をすることになるでしょう。これは要領のいい、悪いの問題ではありません。生徒の個人データや業務用パソコンは学校の外には持ち出せないことになっているはずですが、これだと、ついつい…ということは起こりえます。生徒の家庭とも連絡をとる必要が出てくるかもしれませんが、これも家事の合間にやることになります(何度電話しても出てくれない、つながらないということもあります)。さらに生徒や保護者の関係するトラブルへの対応が加わったら…。これで心身をすり減らし、体調を壊す人が出てこない方が不思議です。

 番組では「給特法」と呼ばれる公立学校教員の給与について定めた法律の改正がまず必要だと強調していました。1971年に制定されたこの法律は、教員の残業時間を月8時間程度とみなし、給与の4%を上乗せするかわりに残業代を支給しないというもので、これがあるために学校管理職は教員の常態化する残業を当たり前と思い、現在までの過労死ラインをはるかに超える長時間労働を見過ごす傾向があったというのです。
 実態にあわない法律の改正はどんどんやってもらいたいと思いますが、この法律が問題の根源だと考えるのは早計という感じがします。確かに、給特法の改正のしかたによっては、時間外手当が増えることから長時間労働抑制の圧力が働いて、「ブラック」の度合いが軽減されるかもしれません。しかし、それでは、他業種には「給特法」がない(=労働基準法が適用される)のに、なぜ過労死があり「ブラック」な労働実態がなくならないのか説明できません。

 何かを変えればすぐに効果が出るというものではないとは思います。しかし、変えなければ何も動かないのも確かです。
 小生としては、1人の教員に、授業をやる人、担任業務をやる人、部活動をやる人…を兼務させる弊害にもっと目を向けてほしいと思います。学校によっては、ひょっとしたら学校事務の仕事(の一部)まで兼務させているかもしれません。これを軽々に他の業務にたとえるのは恐縮しますが、たとえば、病院で、医師が、看護師の仕事も、薬剤師の仕事も、場合によっては医療事務の仕事も兼務しているとしたらどうでしょうか。医師が四苦八苦するのはもちろんですが、自身をよく診てもらいたいと思っている患者にしわ寄せがいく可能性は高まるでしょう。そう考えれば、学校で教員がいくつもの仕事を抱えて疲弊すれば、そのしわ寄せが生徒にいくのは間違いないでしょう。病院の業務分担は学校に比べるとかなり専門ごとに分かれているように感じますが、同じことをどうして学校ではできないのでしょうか。医師の仕事も教員(教師)の仕事も良心や責任感だけで何とかなるわけではありません。

 むかし思ったのですが、教員に元気がなく生徒も元気がない学校というのは最悪で、教員が元気で生徒が元気でない学校というのは(残念ながら)ありうるけれども、教員が元気がないのに生徒が元気な学校というのはあるのだろうか、と(ひょっとしたらあるのかもしれませんが)。それでも、やはり、教員も元気で生徒も元気な学校がいいし、みんなそれを望んでいるはずだと思うのです。





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