去年の今日は1986年のチェルノブイリ原発事故から35年ということを書いたのですが、まさか1年後の2022年、ウクライナがこんなことになるとは、夢にも思いませんでした。一刻も早い停戦を祈るばかりです。それとは別に、今日は短く。
むかし若い先生とお酒を飲む機会があって、何で先生になろうと思ったんですか?と尋ねたら、その先生は、部活の指導をしたくて…と答えました。特に驚くことでもなく、部活動に情熱を傾けている先生は、この方に限らず、けっこう多いと思います。それは生徒にしても同じことで、教員と生徒がそのレベルで動けば、毎日毎日、土日であっても部活動はやることになるでしょう。
しかし、部活に対する向き合い方は先生も生徒も一様ではありません。小生もそうでしたが、教員は自分の適性や専門性とはかけ離れた運動部であっても、顧問となれば、土日の練習で学校には行くし、試合や大会があれば生徒の引率もします。これは土日に限りませんが、活動中に生徒が怪我をすれば応急処置に走り回って、医者に連れて行ったり、保護者に連絡したり、場合によっては救急車を呼んだりとかもありました。事が起こったときに何でその場にいなかったんだという話になったら、大事(おおごと)になってしまいます。それは先生方に顧問を「委嘱」している校長・教頭からしても学校管理上、最も忌避したいことのひとつでしょう。
一線を退いてみると、よくこんな「綱渡り」みたいなことを続けてきたなと改めて思います。
最近学校の先生方のブラック労働(“超”超過勤務)を是正する気運が出てきたのはよいことだと思いながら、情勢を見ています。スポーツ庁の有識者会議が昨日(4月26日)の会合で、公立中学校の運動部の部活動については、休日を対象に2025年度までの3年間で活動主体を学校から地域に移行させる提言案を明らかにしました。期限を切ったことにそれなりの「意思」を感じますが、難題は山積していて、先生方の代わりに土日の部活動をみる地域の指導者の確保や、その役割(責任)の位置づけなど、現実的に詰めなければならないことが多く、どこまで望ましい方向に進むのかは全く未知です。
部活クライシス:民間クラブ、受け皿に 部活、地域移行「3年間で」 | 毎日新聞
スポーツの歴史的転換 中学部活動の休日の地域移行、25年度までに - 一般スポーツ,テニス,バスケット,ラグビー,アメフット,格闘技,陸上:朝日新聞デジタル
おそらくは、学校でやる部活動は本来の趣旨に立ち返るというか、平たく言えば趣味の範囲にとどまるような制度設計にしていかないといけないように思います。そうならない最大の理由は、競技会、とりわけ究極的には全国大会があるからで、この全国大会の見直しまで射程にいれないと、根本的、体系的には変えられないと思います。
一般の方で知っている人は少ないかも知れませんが、高校生の運動系の部活動には、統括組織が2つあって、野球部(高野連 前身組織は1946年設立)とその他の運動部(高体連 1948年設立)は別組織になっています。今回は中学校が対象ですが、もし「部活動改革」をするとしたら、高校の部活動に一切手をつけないわけにはいかないでしょうし、そうなれば、乱暴なことを言うと、財力・政治力とも上手の高野連をどこまで動かせるかがポイントになると思います。
今月の中旬、新聞の地元面を見ていたら、千葉県の高校野球の春季大会の試合結果が掲載されていましたが、学校連合チームがいくつも見えました。生徒数減、部員数減により単独ではチームを組めない学校同士が3つ、4つ一緒になってチームをつくり、大会(予選)に出場しているのですが、毎年、毎年、回を重ねるごとにその数が増えている気がします。高野連としても、生徒に公式試合に出場させてやりたいという“親心”はあるでしょうし、参加校が減り続けて高校野球の人気がじり貧になっていくのは好ましくはないでしょう。地理的にけっこう離れた学校同士がひとつのチームになっているところから推察すると、顧問の先生方も学校間の連携をとりながら合同練習をして、個々の生徒のケアをしてと、なかなか大変なのではと想像します(それが超過勤務になっていないことを祈ります)。
しかし、もし、これを「地域」に移管するとなったら、彼らは試合に出られるのか(厳しいと思います)、やはり学校の先生頼りになるのではないか、そのとき高野連はどうするのか――いずれは高校の部活動も、こうした個別具体的な問題にも向き合っていかなければならないと考えると、先は長いなと感じます。しかし、この潮流はもはや変えられないと思います。
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