ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

部活動問題に特化した教職員組合

 福岡県で部活動の問題にだけ特化した教職員組合が結成されたそうです(愛知、三重についで3例めとのこと)。通常の教職員組合が「常設委員会」型ならば、さしずめこれは「実行委員会」型です。一問題解決型組織であれば、他の問題に煩わされずに専心できる。時代に合っているというべきか、やっぱり若い人たちは柔軟で機動力があるなと思います。と、同時に、同調圧力が強い中、みんなでNO!の声を合わせて組織を立ち上げたことには敬意をおぼえます。どうなるのかわかりませんが、こうした声が集まって、良い方向に進んでいかないものかと思います。
部活の顧問「断りにくい空気」を変えたい 20代の教員らが組合設立:朝日新聞デジタル

 教員の中には(特に高校ですが)部活指導をしたいから教員になったという人も少なくありませんが、おそらくは多数の教職員が特別自分の専門でない運動種目や分野の顧問を任され、毎日遅くまで、休日も、練習に付き添っていると思われます。大昔は、記事にあるように部活顧問は「やって当たり前」「そういうもの」という雰囲気が支配的でした。最近になって教員のブラック労働が世間に知られ、部活の顧問として休みなく働くことがようやく問題視されるようになりました。しかし、授業準備や家庭生活に支障をきたすという教員側の「苦痛」が、仕事をきちんとやりたいと真面目に考える教員であればあるほど大きいということの重みが、なお十分理解されていないかもしれません(単に土日くらい教員を休ませた方がいいという話ではないのです)。
 その一方、生徒の側も、願わくば技術指導のできる顧問に教えてもらいたいという気持ちがあって、4月にどんな先生が顧問になってくれるか、今度来た先生はどんな先生なのかと期待しつつ、ああ、また専門のちがう先生かぁ、がっくり、ということがしばしばだったでしょう(それは顧問を引き受ける教員にとっても辛いことです)。かりに、せっかく技術指導に長けた教員が顧問になっても、今度は指導に「暴力」がともなったりすることがあり、生徒が深く傷つけられる事態もあちこちで露見しています。部活動を舞台にして、互いに望んでいない関係が延々と続き、小さな「悲劇」があちこちの学校でくり返されてきたわけです。

 こうした「悲劇」がなくなる方向に作用するかどうか、スポーツ庁の主導で来年度から「地域部活動」なる部活動の改編が始まろうとしています。公立中学校の土日の部活だけは地域在住の指導者に委ねるというのですが、実技指導は委ねられるにしても、生徒の安全管理(怪我や事故の対応)や学校施設の管理に、まったく顧問職員が関わらないわけにはいかないだろうという指摘もあります。そもそも、学校教職員の数を増やさないという大前提で改編をしようとしているため、顧問を引き受けた教職員には悩みのタネが増えるだけになるおそれがあります。すでに「あきらめ」をもって見ている先生方も多いと聞くと、「部活特化組合」が設立されたのは、こうした状況をよしとしない先生方の意志の現れだと思います。潜在的な賛同者はかなり多いのではないでしょうか。
部活改革に今こそ必要な視点と大きな議論 「つけが回ってきている」:朝日新聞デジタル

 組合について言えば、「常設」の各都道府県の教職員組合の中に「部活動問題」を特別に扱う部署があるかどうかは各地域によると思いますが、「部活動」は、少なくともこれまで教育委員会と教職員組合の交渉事項にはなっていたと思います。しかし、組合員の教員のあいだにも温度差があって、部活顧問の委嘱を拒みたい人ばかりではないので、顧問を引き受けるかどうかが交渉の俎上にのぼることはほとんどなく、話は、(その代わり)手当の増額などといった賃金の方向に進みがちだったと思います。それはそれで評価しないといけないのですが、いくらお金を積まれようと(そんなに厚く積まれてもいませんが)、失われた時間は返ってきません。

 実際の交渉相手になるのは各校の校長(と教育委員会?)でしょう。常任の顧問弁護士とまではいかないかも知れませんが、具体的な交渉時には誰かに同席してもらうかたちにするのがベターです。みんなでいろいろと知恵を出し合うにしても、法律面の「知恵袋」は必要です。3月がヤマ場になるのでしょうが、どんな展開になるのか、また、社会にどんなインパクトを与えるのか、(口だけで申し訳ありませんが)応援する気持ちをもって、推移を見つめています。




↓ よろしければクリックしていただけると大変励みになります。


社会・経済ランキング
にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
にほんブログ村