ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

国家賠償法・1条 2項

 国が認諾した赤木さんの訴訟について、社民党福島瑞穂議員が先週の1月21日参議院の代表質問でふれていてオッと思いました。該当部分を起こしてみます(11分28秒頃から)。

【2022.01.21参議院本会議】福島みずほ代表質問〈会派:立憲民主・社民〉 - YouTube

 森友学園についてお訊きをします。赤木雅子さんにお会いしました。改竄を強制され自殺をしてしまった赤木俊夫さんについて、総理は十分な説明を果たしたと考えていますか。当時の安倍総理が2017年2月17日、国会で「私や妻が関係していたなら国会議員も総理大臣も辞める」と答弁しました。改竄指示のメールが本省から近畿財務局に来たのは2月26日です。安倍総理の答弁が引き金となって改竄に至ったのではないですか。総理の見解をお聞かせください。
 赤木雅子さんが提訴した国家賠償請求訴訟において、国は答弁書で「棄却」と主張しました。しかし、赤木雅子さん弁護団の頑張りで「赤木ファイル」が出てきました。裁判に負けると思ったのか、証拠調べをさせないために幕引きを図ったのではないですか。
 国が1億円以上もの税金を使うことは、納税者である国民に対して、説明責任が発生します。国民に対する説明として、今回の裁判を認諾としたことを、税金の使い方として、どう説明するのでしょうか? 国家賠償法1条2項は、公務員の行為が故意、または重過失でなされた場合は、国は、自ら賠償した後に、その公務員に求償できると規定しています。赤木ファイルからは、当時の局長であった佐川宣寿氏の指示であったことが明確です。佐川氏には故意があります。政府が、国家賠償法1条2項に基づいて、佐川氏に、1億数千万円、求償するのが当然です。いつ求償するのか、答弁下さい。

 これに岸田首相はまともに答弁してはいないのですが、ちょっと注目する必要があるように思いました。
 国家賠償法の1条1項の内容は知っていましたが、同2項のことはよく知りませんでした。というか、地方自治体のレベルでは住民訴訟で公務員個人の責任を問えても、国政では無理だと思い込んでいたのです。条文にはこう書いてあります。

<第一条> 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
 ② 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

 実際にこの2項にもとづいて「求償」がなされたケースというのは少ないようですが、ないわけではありません。調べてみると、2009年の大分県の県立高校で部活中に起きた死亡事故では、顧問教員の重過失を認め、個人に対して県が賠償を求めるよう命ずる高裁判決が出ています。これは一旦は県(と学校)の責任だけを認めた判決が出されましたが、原告側がこれに納得せず、顧問教員個人の責任を追及し続けた結果でした。

 最高裁ですと、これも大分県ですが、教職員選考試験の不正事件に関与した複数の公務員の故意が認められ、県が支払った賠償金について、関与した個々の公務員が連帯して国家賠償法1条2項に基づく求償債務を負うという2020年7月14日付判例があります。

 この判例について、「たまのお法律事務所」さんが2021年11月4日更新の記事で詳しく解説されています。引用させてください。

国家賠償法1条2項の求償について | たまのお法律事務所

判例に見る国家賠償法1条1項と2項の法的性質
……この裁判は、県教育委員会の職員らが、教員採用試験で受験者の得点を操作するなどの不正をおこない、県が不合格となった受験者らに対して損害賠償金を支払った事件で、住民らが、県知事に対し、不正に関与した者に対する求償権を行使するよう求めた住民訴訟の上告審です。
この裁判では、元々の不正行為を働いた公務員が複数存在し、その不正行為を共同不法行為と認定できる場合、求償権は、不正を働いた人それぞれに分割され、分割請求権となるか(例えば、不正行為を働いた人がXとYの2人で、県が負担した損害賠償金が100万円であった場合、県はXとYに対し各々50万円ずつ請求できるのか)、あるいは、不法行為者間の連帯債務となるのか(XとYに対し、合計100万円の範囲で、どちらにも100万円まで請求できるのか)という点が争点となりました。
この点につき、最高裁は、

国又は公共団体の公権力の行使に当たる複数の公務員が,その職務を行うについて,共同して故意によって違法に他人に加えた損害につき,国又は公共団体がこれを賠償した場合においては,当該公務員らは,国又は公共団体に対し,連帯して国家賠償法1条2項による求償債務を負うものと解すべきである。なぜならば,上記の場合には,当該公務員らは,国又は公共団体に対する関係においても一体を成すものというべきであり,当該他人に対して支払われた損害賠償金に係る求償債務につき,当該公務員らのうち一部の者が無資力等により弁済することができないとしても,国又は公共団体と当該公務員らとの間では,当該公務員らにおいてその危険を負担すべきものとすることが公平の見地から相当であると解されるからである。
最判令和2年7月14日)

と、故意の認定される場合には連帯債務になると判示しています。

 これは佐川元理財局長はじめ当時の財務省と近畿財務局の職員にも当てはまるのではないでしょうか。公文書の改竄指示が故意でないことなどありえませんし、「過失」があったなら「重過失」は免れません。もちろん、黒幕は佐川氏ではありませんが、何とかこの線に沿って追究を続けられないものかと思います。







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