これは学校で働いたことのある人なら誰もがわかる身につまされる話。しかも、ほとんどの人が改善したいと思っているのに、全体として悪化することはあっても、ほとんど改善されないという、まさに今の日本の政治の姿と二重写しになるような話だ。
朝日新聞がシリーズで伝えている「いま先生は」。11月21日付、第3回の記事。
何でも対応…「私たちはコンビニ」 気持ちの糸が切れた保護者の一言:朝日新聞デジタル
午後7時すぎ、東海地方の中学校で、職員室の電話が鳴った。
「兄弟げんかをしているから、止めてほしい」
30代の女性教員が受けたのは、保護者からのそんな電話だった。
管理職に相談すると、「行ってあげて」と言われた。
生徒の自宅に急行し、兄弟をなだめて学校に戻った。そして、また残っていた仕事を再開した。
こうした「呼び出し」は珍しいことではない。
生徒の万引きが発覚して、店から迎えに来るよう言われる。
SNSで生徒間のトラブルが発生したからと、生徒たちに聞き取りに行く。
夕方の退勤時間後に対応することもある。
同じ学年の同僚教員が向かう場合は、戻ってくるまで帰れないこともある。それが暗黙の了解だからだ。
「私たちはコンビニだからね」
同僚たちとそう自嘲することもある。
教員は24時間対応する便利な存在――。生徒や保護者から、そう思われているのでは、と感じる。
いつからか、学校に対して過度な要求をする親が「モンスターペアレンツ」と呼ばれるようになった。
自身も、保護者の要求は年々大きくなっていると思う。
<中略>
先生という仕事に対する意識が変わったのは、教員になって4年目のころだ。
当時の勤務校は、部活が盛んだった。教員全員が部活の顧問をするよう求められ、未経験の競技を担当することになった。
毎日練習の指導にあたり、授業の準備が始められるのは午後9時を過ぎてからだった。
土日も部活の練習があり、生徒の練習に懸命に寄り添った。
未経験の競技だったが、大会の審判や運営を任され、プレッシャーは日に日に大きくなった。
体調を崩し、ある朝、起き上がれなくなった。
「土日のどちらかは部活を休みにしたい」
思い切って生徒や保護者に打診した。すると、保護者から「先生には熱意がない」と言われた。
その瞬間、気持ちの糸が切れた。
「あぁ、もういいや」
それまでも、部活の運営の仕方をめぐって、保護者から不満を言われることがあったが、我慢してきた。
プライベートを犠牲にしてでも、「生徒のために」と頑張ってきた。
でも、もう限界だった。
教員の仕事にやりがいを感じられなくなり、こう思うようになった。
職があって、給料がもらえて生活ができればいい。
良い先生にならなくたっていい。
<以下略>
教育ジャーナリストのおおた としまさ氏のコメント(投稿)もあった。
【視点】「今の教員の働き方では、いい子、まじめな子ほどつぶれる」
私も似たような言葉を現役校長から聞いたことがあります。時代の変化もあるようです。
「私たちが教師になったころより、優秀な新人が多いんです。指導方法も勉強していますし、子どもの扱いも上手。器用な新人が多い印象です。反面、繊細で線が細いと言えばいいでしょうか。だから、理想に燃えて学校に入っても、目の前の現実を見て心が折れやすい傾向は否めない。ただし前提として、昔に比べると今の教師は規則でがんじがらめで気の毒です。常にしなければいけないこと、すべきことに追われてしまっている感じがします。自分が若かったころは子どもたちのことだけを見て、好き勝手言うことができました。みんな荒削りでいきなり教壇に立って、個性を前面に押し出して、我流でスタイルをつくっていました。でも今はそれが許されない雰囲気がどこの学校の職員室にもあります。それではやりがいを感じることがますます難しくなります。…」
金平さんが「筑紫哲也『NEWS23』とその時代」で回顧(懐古)しているものとほとんど同じである。1990年代から30年――どうすればよかったのか。
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