3月から隔週金曜日に放送されている(という)TBS・CS放送の「政治をSHARE」という対談(いや鼎談)番組を一週遅れで見た。YouTube配信はありがたい。今回のテーマは「女性議員は増えちゃダメ? 立ちはだかる5つの壁」。進行は久保田智子アナ。ゲストは国民民主党の伊藤孝恵参議院議員とハフポスト日本版U30社外編集委員の能條桃子さん。
女性議員は増えちゃダメ?立ちはだかる5つの壁 伊藤孝恵さん【政治をSHARE #14】 - YouTube
久保田:…立候補する人たちの多様性がきちんと守られているということがすごく重要で、それが、たとえば女性の立候補者が17%じゃなくて80%くらいいたら、絶対に数は増えてたわけで、そう考えると女性がもっと立候補するためにはどうしたらいいのかな、というところがポイントにもなってくるのかなと思うんですよね。
それで、日本財団のデータをちょっとご紹介したいと思うんですけど、これ2020年12月、18歳から69歳の女性1万人に聞いたデータなんですけど、「女性の政界進出」が進まない理由について、
1位 議員活動と家庭の両立の難しさ 34.5%
2位 政治は男のものという価値観 34.0%
3位 女性政治家を育てる環境が未成熟 32.7%
<補足>
以下、4位「男は外で仕事、女は家事・育児」という性別役割分担意識31.4%、5位 女性政治家に対する差別やハラスメントの存在27.9%、6位 男性議員の無理解27.9%、7位 目指すべき女性リーダー像の不在25.0%、8位 地盤や経済的基盤等、出馬に関するハードルの高さ19.1%、9位 政治に関する女性の関心の低さ14.7%、等。(※複数回答可)
(【1万人女性意識調査】第2回テーマ「女性と政治」 | 日本財団)
久保田:このあたり、まずは政治家になる・ならないではなく、女性の意見として「進まない」のはなぜですか、ということなんですけど…。
伊藤:今、首もげそうでしたね(笑)。…女性議員がどうして増えないんでしょう、どう思いますかって、よく訊かれる。で、しげしげと考えて、簡単に言うだけでも5つ壁があると思うんですよね。
まず、1つめは、志を立てる壁ですよ。政治家になるって言ったときに、私の義理の父母は大反対をしました、子どもが不幸になるって。(子どもが…)そう、誰がこの子たちを育てるの?って。そういうアンコンシャス・バイアスっていうか、ジェンダーの問題もはらむ、でも実際の話です。それとか友達も、「政治家ーっ?! 無理無理無理、野党ー!? やめてよー!」みたいになって、離れていく友達もいました。
次に、候補者になる壁もありますよ。今回世襲の議員がたくさん生まれましたよね。全員男性だったでしょう。女性の声が必要だ、あなたたちの声がこの国の未来を照らし出すことになるなんて、そんな心持ちで立てられる(立候補する)というよりは、相手候補が男性だから、刺客とか、一人目が男性だから並びで女みたいな、そういう立てられ方をする。…
それから3つめは、選挙の壁ですね。朝から晩まで駅に立って、声をからして、泣いて土下座をするみたいな、そういう選挙を、育児しながら、介護をしながらどれくらいの人がやれるのか、やろうと思うのか。こういう選挙の当たり前の壁。
それから、おっしゃった両立の壁というのはあります。土日は全部地元です。で、平日は全部国会です。1週間に何度も質問があります、徹夜です。私は頑丈な体に生んでもらったから、まだ倒れていないですけど、そういうようなことを、子どもや家族に負担をかけてまで、いつまで続けられるのか、その志を維持していけるのかというのは非常に難しい。
5つめの壁はそこに連なってきますけど、じゃあ続けるのかという、継続の壁、出世の壁…。そういうのがあって、ひとつひとつを紐解いて、ひとつひとつを変えていかなければ、私は安易に「立候補しませんか」と…大切な人であればあるほど誘えません。
久保田:…よくやってますねぇ(笑)。でも、これって、女性議員だけの壁なんですかね? 男性議員にもあるけど、特に女性議員に課されているものは、期待されている役割分担が、女性は家事っていう意識があるからってことになるんですかね?
伊藤:志を立てる壁は、もし男性だったら、「おっ、いいんじゃないかぁ、やってみろー」っていうのが、(女性の場合は)まずないですよね。2つめの候補者になる壁も、例えば、高学歴者とか、地盤・看板・カバンとか、そういうのはあるかもしれないけど、(男性の方が)女性より道が開けていると思います。両立の壁だって、(男性は)育児や介護など誰かにやってきてもらった人たちからつくられたオールド・ボーイズ・ネットワークの中で、自分もそのように振る舞えばやっていけるんでしょう。でも、そうでない男性議員たちも増えてきていて…。地元の夏祭り40軒まわるところを、子どもの塾の送り迎えなんて(言ってられるか)、そんなのは隠しておけ、みたいな、そういう政治のフォーマリティの中で、私たち女性議員だけでなく、男性議員の子育て世帯も同じくきっと悩んでいると思います。両立の壁にはきっと同じく悩んでいる。継続の壁も、うーん、私たちの方が悩むんでしょうけれど、男性議員にも同じくあると思います。…
立候補者の「多様性」という話に、出自やマイノリティなどではなく、男女差を問題にしなければならないところがまず恥ずかしい感じがする(この意味で、ジェンダー・ギャップ指数を持ち出すまでもなく、明らかに日本は諸外国に「遅れ」をとっている)。伊藤議員の言う「5つの壁」は、選挙に立候補して当選し、議員になって活動するというプロセスで順を追って出てくる「壁」なので、話としてはわかりやすいし、これが循環し再生産されているということなのだろう。
どう紐解けばよいかはわからない(一点突破でもいい気はする)が、連想するのは、1975年10月24日、アイスランドの「女性の休日」のこと。
今年3月8日「女性デー」のHUFFPOSTの記事。
国中の女性がストライキを起こした日。1975年、アイスランドの「女性の休日」【画像集】 | ハフポスト
…1975年10月24日、男女の給与格差や性別の役割分担に抗議し、アイスランドで国中の女性がストライキを起こした。仕事や家事をやめた女性たちは、街に出て集会などを開催。国の女性の約9割が参加したといわれている。
当時の出来事を朝日新聞は「女性ゼネスト アイスランドは完全マヒ」の見出しで報じた。これはロイター通信が配信したもので、「男性たちは最初、スト突入の警告を全くの冗談と受け取っていたが、本当とわかってビックリ。女性がいないと1日も国がもたないことがわかったようだ」と書いている。
1975年10月24日、男女の給与格差や性別の役割分担に抗議し、アイスランドで国中の女性がストライキを起こした。仕事や家事をやめた女性たちは、街に出て集会などを開催。国の女性の約9割が参加したといわれている。
2020年にアイスランドのエーリン・フリーゲンリング駐日大使(当時)はハフポスト日本版のインタビューでこう語った。
「SNSもない時代ですが、女性の労働者団体が呼びかけ、メディアや草の根の口コミを通じて広く伝えられました。結果的にほとんどの女性がストライキに参加し、高齢女性も夫に『今日はあなたにコーヒーは淹れません』と宣言して町へ出たほどです。この日をきっかけに男性たちは、女性なしでは社会が回らないことを突きつけられました」
<以下略>
この国ではストライキの「文化」が消されているので、ストライキは今は有効な戦術どころか「時代錯誤」の「迷惑行為」としか見なされない。しかし、やり方は考えるにしても、一団となった人の声には政治が慌て出すのを、我々は去年の「#検察庁法改正案に抗議します」というTwitter運動ほか、これまでも随時見てきた。何でも「実力行使」みたいな話に結びつけるのは本意ではないし、そうでない方法を地道に続けるべきだとも思うが、結果、ほぼ変わらずにここまで来てしまったというのもまた事実である。これ以上のアイディアは、小生には無理だが、「5つの壁」とはいえ最終的にはベルリンの壁と同じことになるのではとは思っている(期待感も込めて)。要は、集団としての本気度が試されているということ。これが「女性」の問題でないのは言うまでもないが…。
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