ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

新聞記事の「余計なこと」

 今日は短く。
 一昨日沖縄県知事選が告示されました。投票日は来月11日、2週間後です。
 その選挙戦最中の沖縄で、昨日ある「事件」がありました。聴衆の一人が候補者に向けて古い銃弾のようなものを投げ付けたというのです。安倍氏の銃撃の余波がまだ残る中、現場は一時騒然としたということです。しかし、新聞によって、事件の報道のし方(情報)に違いがあるのです。いずれも短い記事ですが、受ける印象は違ってくるでしょう。

 小生は最初に朝日新聞の記事を見ました。
街頭演説中の候補者、薬莢のようなもの投げつけられる 沖縄県知事選:朝日新聞デジタル

 「投げたのはチョウ類研究者の女性」とあるので、ああ、そう言えば、前にそういう記事を読んだなあ、と思いつつ、「容疑者」ってわけでもないので名前を伏せるのは分かりましたが、こんな遠回しで奥歯にものの挟まったような言い方(「肩書き」紹介)はないのでは、と思いました。また、投げられた側の候補者名も伏せてあって、こちらはだいたい想像はつきましたが、名前を伏せる必要があるのだろうか、それとも、選挙がらみで何かあるのかと思いました。

 続いて、同内容の毎日新聞の記事を見て、あれ? と思ったのです。
沖縄知事選候補の佐喜真淳氏、古い銃弾?投げられる 那覇で演説中 | 毎日新聞

 こちらは共同通信の配信記事の転載のようですが、朝日が伏せた候補者名は書いてあり(想像どおりでしたが)、「チョウ類云々」の話は書かれていないのです。確かに、「チョウ類云々」は、特に読者に知らせないと事件の輪郭が見えなくなるような情報とは言えません。そう考えると、朝日新聞の記事の末尾にも違和感をおぼえます。

……女性は、沖縄本島北部の森で調査研究を続けるかたわら、米軍北部訓練場の返還地に残留している空包など米軍の廃棄物を見つけて通報したり、訓練場のゲート前に空き瓶や空き缶を散乱させたりといった活動をしていた。

「訓練場のゲート前に空き瓶や空き缶を散乱させたりといった活動」――読者に、この人は米軍に対する抗議活動をしている人であることを想像させますが、知らない人には何のことだかわかりません。背景や理由に触れずに、空き瓶や空き缶を「散乱させたり」などとだけ書いたら、単に悪意をもって嫌がらせをする人ととられかねません。

 ちなみに、毎日新聞共同通信)の記事では、こうなっています。

捜査関係者によると、女性は米軍北部訓練場(沖縄本島北部)の返還区域で見つかった古い銃弾など廃棄物の撤去を求めて活動しており、今回も抗議目的とみられる。

 朝日の記事は署名入りですから、記者が警察関係者から聞いた情報なのでしょう。なぜ、こうした書き方をしたのか、その真意はわかりませんが、記事、というか事件に「触発」されて、SNSですでに対立候補陣営への「攻撃」が始まっているのを目にしました。候補者名を伏せたことが、かえって不信感を煽る要因になっているかもしれません。
 安倍氏銃撃の山上容疑者と同様、と言ったら、大げさですが、なぜこの人が、特定候補者に対して、「古い銃弾のようなもの(読売新聞では「薬きょうのようなもの」)」を投げつけたのか、この記者は、何としても追記事を書かなければならないように思います。

<追記>こんなTweetもありました。
https://twitter.com/nogitama/status/1563202635561582595



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