ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

沖縄復帰50年 あるハンスト

 1972年5月15日に沖縄は日本に「復帰」しました。それからもう半世紀です。先月28日には衆議院で復帰50年についての決議が上げられました。しかし、「強い沖縄経済と平和創造の拠点としての沖縄をつくる」という見出しには、今さら感しかありません。「惰性」と言ってもよいこの施策と切り口。千葉県の田舎に住んでいてもそう感じるのですから、沖縄の人には言わずもがなでしょう。中身を一読して、「万国津梁の魂*」とか「世界を魅了する」とか、いくら国会決議とはいえ、やってることとの落差、その大言壮語ぶりにはむなしさを覚えます。
*1458年に琉球王国尚泰久王が鋳造させた首里城正殿の梵鐘は、通称「万国津梁の鐘」と呼ばれ、表面には琉球の海洋国家としての気概が刻まれていることから、海外に雄飛する沖縄・琉球の象徴として引用されるとのこと。

【全文あり】沖縄の日本復帰50年決議が可決 首相「基地負担の軽減に全力」衆院本会議 - 琉球新報デジタル|沖縄のニュース速報・情報サイト

 9日から沖縄県出身で東京の大学院で学ぶ元山仁士郎さんが首相官邸前でハンストをしています。復帰50周年で衆目を意図した行動と思いますが、何とも言えない切なさを感じます。5月9日付の毎日新聞朝日新聞の記事の一部です。

沖縄出身の大学院生が首相官邸前でハンスト 辺野古移設の断念訴え | 毎日新聞
辺野古移設断念求めハンスト 復帰50年「祝える状況なのか」:朝日新聞デジタル

毎日新聞
……元山さんは▽辺野古移設の即時断念▽普天間飛行場の数年以内の運用停止▽日米地位協定の運用にかかるすべての日米合意の公開と、民主的な議論を経た見直し――の計3点を政府に求めている。声明文で「50年前も現在も基地問題は変わっていないといっても過言ではない。果たしていつまでこの状況が続くのか。私たち沖縄の人々が抱える基地問題は、日本に住む人々に忘れられてしまったのだろうか」と訴えている。
 元山さんは報道陣の取材に対して「果たして沖縄は日本に復帰して良かったのか。むしろ良くなかったのではと言わざるを得ない。ハンストを決めたのは、そういう状況を日本に住む人に問いたいから。沖縄を好きな人は多いと思うが、観光だけでなく基地問題も一緒に考え、受け止めてほしい」と話した。

朝日新聞
……元山さんは9日、復帰50年について「祝える状況ではないと思う」と指摘。県民投票で約7割が「反対」した後も埋め立てを続けることをはじめ、沖縄の声が日本政府に尊重されていないと説明した。「これで復帰50年を迎えられるのか。復帰後は沖縄と米国の間に日本政府が入りスポンジのように吸収することで、沖縄の声が(米国に)届かなくなっている」と訴えた。
 ハンストは官邸前のほか、10日以降は自民党公明党の本部前でも午前10時から深夜を基本に続ける。15日は移動を挟んで、記念式典がある沖縄の会場前でも午後に実施する予定。口にするのは水と塩だけで、政権が要求を受け入れるか、医師による体調判断が許す限り続ける。コロナ禍のためデモや集会など大勢の人を集める必要がない形を選んだと説明している。

 辺野古の基地建設は、軟弱地盤や工期はもちろん、そもそも基地として使える代物かどうかにまで、アメリカ側から疑問の声が出ているのですから、何らかの見直しの動きが出てもおかしくありません。しかし、そうした懸念は一顧だにせず、民意を無視して、ひたすら機械のように海に土砂を投入し続ける。そこにあるのは政府のメンツだけです。敗戦濃厚なのに撤退できない軍と同じものがあります。
 惰性だけという意味では、北朝鮮拉致問題も実は何もやっていないのに、「内閣の最優先課題」と言い続け、被害家族や関係者はじめ、多くの人を落胆させ続けています。この間、関係者が何人か亡くなりました。政府は不作為のまま自然消滅を待っているのでしょうか。人気取りだったとはいえ、20年前の小泉政権のときには政治は動いたのです。動かざるをえない力が20年前には働いていたとも言えますが。
 
 積年の諸課題はこうしてやり過ごし、先送りされているものが目立ちます。もちろん、領土問題など、先送りした方が賢明な場合もありますし、最前線に立つ人の中には決して惰性に陥ることなく苦悶しながら実務を担っている人がいるかもしれません。しかし、多くは諦めと刹那主義に染められていると思います。
 ハンストをして、これでどうなると、すぐに「結果」には結びつけられません[元山さんたち(=あえて複数にします)は百も承知でやってるのですから失礼な話です]。しかし、ここ十数年の日本政治は度を超えてひどい。劣化と堕落がすさまじい。それが国民に与え続ける失望感、「どうでもいいよ」感は深刻だと思います。元山さんたちの行動は、だからこそ貴重です。見ているだけで本当に申し訳なく思いますが、しかし、敬意をもって見ています。



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