ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

竹中平蔵退任とロスジェネ世代

 パソナ会長の竹中平蔵氏の不可解な退任発表がネットをザワつかせているという記事があります。
竹中平蔵氏パソナ会長退任にネットがザワつく…安倍氏死去直後だけに"非常に不可解"の声も(日刊ゲンダイDIGITAL) - Yahoo!ニュース

 時系列で言うと、安倍氏が亡くなった7月8日の10日後なので、その関連を疑う声もありますが、他方で、竹中氏がオリックス社外取締役を6月24日付で退任(5月11日発表)しているところから、安倍氏の死とは関係なく、「身ぎれい」にしなければならない理由が何かあるのではないかという憶測もあります。現在、東京オリンピックにかかわる贈収賄容疑で捜査を進める東京地検の捜査情報を早い段階でつかんでいた可能性もあります(ちなみに、AOKIの前会長・青木拡憲氏が退任したのは6月29日付でした)。

 竹中氏退任の真意はわかりませんが、7月27日付「一月万冊」を眺めていて、少々戦慄を覚えた部分があります。
 聞き手の清水有高さんは、自身が「ロスジェネ世代」(生年が1970年頃から1982年頃)に当たり、バブル崩壊後の超就職難のエピソードをよくお話されていますが、安倍氏を殺害した山上容疑者は1981年生まれで、同世代だと述べています。余計なことを付け加えると、京都アニメ放火事件(2019年)の容疑者は1978年生まれ。先日刑が執行された「秋葉原通り魔事件」(2008年)の死刑囚は1982年生まれ。みなこの「ロスジェネ」世代に当たります。

 清水さんと佐藤章さんは、動画でこう話していました。

安倍晋三が亡くなって動き出した東京地検特捜部。竹中平蔵の命が危険?安倍関係に向けられる警察の捜査。AOKIの次はパソナか?元朝日新聞・記者佐藤章さんと一月万冊 - YouTube

 佐藤:……竹中さんの場合は、山上容疑者が41歳で「ロストジェネレーション」であったということが、たぶん恐怖だったと思うんですね。
 清水:「一月万冊」を見ている人は私よりも年上の人が多いんですが、私と同世代かそれよりも下の人たち、安倍さんが撃たれて、容疑者41歳というのを聞いたときの反応は、「そりゃそうだよ、今まで踏みつけられてきたんだから、40代の「ロストジェネレーション」、暴発するわ」というのが第一印象だったんですね。これだけ恨みが溜まって、踏みつけられて、最後は絶望して撃っちゃったんだと、こんな事件がこれからいっぱい増えるんだと、最初はそんな反応だったんです。その後、統一教会の関連とかが(情報で)出てきて、ああ、こういう流れだったのね、という風になっていったんですけど。だから、40代や30代中盤の人たちは、これはリアルに、犯人に対しては、やってはいけないことなのは分かっているけど、でも、そうだよね、俺たち確かに踏まれてきたもんねというような「共感」が生まれてしまうんですね。だから、竹中平蔵が引退するって聞いたとき、お前も危ないよっていう声が多かったんです。
 佐藤:山上容疑者の場合は、「ロストジェネレーション」とは直接関係はなかったんですけど、でも、統一教会によって人生や大切な家族を台無しにされてしまったという深刻な思いがあるわけです。それと、今清水さんが話してくれた「ロストジェネレーション」。雇用形態では正規雇用が少なくなって非正規雇用が増えて、雇用が非常に狭き門になってしまったんですね。それまでは、僕みたいな凡才でも(何をおっしゃる!)就職できたんですけど……。
 清水:「凡才」ではないけど、就職はしやすかった、と。
 佐藤:(笑)ところが、優秀な人でも、就職はなかなか難しくなってしまって、それを「恨み」に感じるのは当然なところもあるんですよ。竹中さんは、そういう意味では、これまでにもかなり批判されているわけです。だから、竹中さん自身も、そのことはよーく分かっているんですね。ということで、(退任したのは)怖れを抱いたと考えても不思議ではないということです。

 昔クラス会に呼ばれて、1974年生まれの教え子たちと話をしていたら、やはり就職氷河期に直面させられ、ぼやきというよりは、怒りの感情を露わにしていたのを思い出します。はからずも、今回の安倍氏の事件によって、自民党政治が、彼ら彼女ら「ロスジェネ」世代のことよりも、統一教会の方を大事にしていたことが白日の下にさらされているわけですから、これに怒りを感じないはずがありません。にもかかわらず、自民党議員のみなさんときたら、「知りませんでした」「何が問題なんですか」と、まるで自分たちは関係がないかのようにふるまいます。これでは、悪い方向へ進んでいく予感だけが膨らんでしまいます。「暴発」などという惨劇は何としても避けなければいけませんが……。



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