ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

佐渡金山と外交

 ……岸田さん、「聞く耳」は広くもたないとダメですよぉ。佐渡金山を本気で世界遺産登録にもっていくんだったら、慎重かつ周到にやらないと、地元の人たちや関係者を失望させるだけですよ。外務省が言うとおり、今回は申請したって通らないのは目に見えているんですから。「韓国に言われたから申請をやめるのかぁ!」「弱腰外交じゃないかぁ!」「そうだ、そうだー!」式の嫌韓感情を煽る輩に迎合して無理な申請をするのは、外交上マイナスにしかならないですよー。「弱腰」と叫んでいる人びとは事後の責任なんかとらないんですから…。

 そんな声をよそに当初の方針を変更した岸田首相。自民党内で「弱腰だ!」と非難している人の代表は元首相。接待と手土産と、あとは「ポエム」というのもありましたが、そんなんで7年以上も日本の外交を担った(ふりをした)「過去の人」です。結果、どんな外交成果が上がったことでしょうか。先月は北方領土4島返還を実は勝手に2島に変えていましたと、回顧録でもあるまいに、驚愕の「機密?」をペラペラとしゃべりました(あなた、まだ一応現役の国会議員でしょ!)。「国益」をよーくお考え合わせください、と申し上げたいです。

 以下、1月28日付朝日新聞より引用させてください。 

岸田首相の判断変えた安倍氏との電話 佐渡金山、突き上げで一転推薦:朝日新聞デジタル

佐渡金山遺跡が2023年の世界文化遺産登録を目指す国内候補に選ばれたのは昨年12月末。地元の歓迎の声とは裏腹に、外務省を中心にユネスコへの推薦に慎重な声が多数を占めた。
 戦時中、佐渡の鉱山で朝鮮半島出身者が働いていたとして、韓国政府は「強制労働被害の現場だ」と撤回を要求。韓国は、15年に世界文化遺産に登録された長崎県端島炭鉱(軍艦島)などからなる「明治日本の産業革命遺産」にも言及。朝鮮半島などから連行され労働を強いられた人々についての説明が不十分だとして、「日本は約束した後続措置を履行していない」と批判した。
 推薦すれば韓国側の反発は避けられない。韓国の批判が佐渡金山だけでなく、すでに登録されている軍艦島にまで波及しかねないという懸念があった。

 悩みは韓国だけでない。「米国はどう思うのか」。首相の脳裏には、21日にオンラインで初会談したバイデン米大統領の存在もあった。同盟国の連携で中国に対峙(たいじ)したい米国にとって、日韓関係がさらに悪化することは都合が悪い。
 また、ユネスコは昨年、歴史的な資料を後世に引き継ぐことをめざす「世界の記憶」(旧記憶遺産)で、当事国が反対すれば登録されない制度を、日本政府の働きかけで導入したばかり。世界遺産とは違う制度とはいえ、韓国が反対する中で日本が推薦することは、矛盾する行為となる。
 確実に登録できるチャンスを探るべきだとの外務省の主張を受け、首相は国会答弁で「登録を実現することは何よりも大事。何が最も効果的なのか、しっかり検討していきたい」と繰り返し、推薦見送りを軸に調整を進めた。

「保守層の溜飲が下がっても…」関係者の懸念
 ところが、首相の対応に、自民党内から反発の声があがった。安倍晋三元首相が顧問を務める議員連盟「保守団結の会」は18日、速やかな推薦を政府に求める決議をまとめた。19日には高市早苗政調会長が、記者会見で「日本国の名誉に関わる問題だ」と主張。官邸幹部は「いろんな所から声が入ってきた。あと何プッシュかすれば覆るかもしれない」と話した。
 20日安倍氏が自らの派閥で「論戦を避ける形で登録を申請しないというのは間違っている」と語った。推薦を見送れば、党内の安倍氏に近い議員らが首相を見放しかねないとのメッセージだった。今夏の参院選を控え、首相は「何か工夫を考えないと」と漏らすようになった。
 首相が安倍氏に電話をかけると、安倍氏はこう語った。「軍艦島世界文化遺産に登録された時は保守系朴槿恵政権だったのに韓国は騒いだ。今回先送りしたって結果は同じだ」
 首相は見送りから一転、推薦を決断。安倍氏の指摘に従い、韓国との歴史問題の論戦に備えるため、滝崎成樹官房副長官補を責任者にタスクフォースを設置することにした。安倍氏は28日、「冷静に正しい判断をされた」とコメントした。

 党内の声に押されて推薦に踏み切った首相は「丁寧で冷静な議論を積み上げていく」と述べた。だが、実際に世界文化遺産に登録される道筋は描けていない。
 ある政府関係者はこう懸念する。「党内の一部の保守層の留飲が下がっても、登録という実を取ることにつながらない。結果が出なければ再び矛先は首相に向かう。大きなリスクを背負うことになった」

新潟では喜びの声、一方で識者は「佐渡に『ツケ』回るのは気の毒」
 2月1日の期限を目前に推薦にこぎ着けた地元・新潟では安堵(あんど)が広がった。
 四半世紀前から世界遺産登録の運動に取り組んできた「佐渡世界遺産にする会」の中野洸(こう)会長(80)は「ラストチャンスと覚悟していたが、5度目の挑戦でようやく実った」と喜びをかみしめた。「当時の実態を韓国にきちんと説明すれば必ず理解を得られると信じている」
 ただ、今回と同じ産業遺産で、歴史認識のずれをめぐる日韓の対立があらわになった「明治日本の産業革命遺産」は登録まで難航した。韓国政府は朝鮮半島出身者が「強制労働」させられた施設が含まれているとして待ったをかけたのだ。ギリギリの折衝の末何とか登録で妥結したが、当時外相だったのが岸田首相だ。
 この際日本側は「意思に反して連れてこられ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者らがいたことなどを理解できるような措置を講じる」と明言した。しかし、20年に東京にオープンした産業遺産情報センターで朝鮮半島出身の徴用工への差別は「聞いたことがない」とする証言を展示すると、韓国が再び反発。世界遺産委員会は昨夏、日本が登録時に「約束」した説明が不十分だとして、「強い遺憾を示す」とする決議を採択した。
 日本政府は誠実に実行してきたとの立場だが、世界遺産に詳しい西村幸夫・国学院大教授は「ユネスコの決議に応えず、次のもの(佐渡金山)だけ推薦してくるのは何だと言われかねない。決議にはきちんと対応すべきだ。産業革命遺産の『ツケ』が佐渡に回るのは気の毒だ」と指摘する。

 韓国政府は、佐渡金山遺跡について「強制労働が行われた場所という十分な説明がないまま世界遺産に登録されないように、ユネスコなど国際社会とともに断固として対応する」として登録を阻止する構えだ。3月9日には大統領選を控える。今のところ日韓関係や対日政策は大きな争点になっていないものの、韓国内で反発が強まれば、与野党の候補者らが「反日カード」として利用する可能性もある。世論の支持を狙い、候補者らが競うように日本への批判合戦を繰り広げれば、日韓関係がさらに悪化しかねない。
 佐渡金山は23年夏ごろに開かれる世界遺産委員会で審議される見通しだ。紛糾した場合、登録には出席し投票した委員国の3分の2以上の票が必要になる。ただ、文化庁によると、対話を重視しようというのが慣例で、二国間の対立などがある場合、登録可否の判断を避ける可能性もある。登録への道のりは不透明だ。

<以下略>

 日韓関係について、毎日新聞の29日付記事。

焦点:世界文化遺産 佐渡金山、一転推薦へ 「弱腰」批判、揺れた首相 | 毎日新聞

林芳正外相は28日夜、記者団に「韓国の独自の主張は受け入れられないと韓国側に申し入れた」と明かし、韓国側をけん制した。だが、日韓の対立が激化すれば、日米韓連携にも影を落とし、軍事的圧力を強める中国や北朝鮮へのけん制を強める米国との足並みも乱れかねない。
 日本はユネスコの「世界の記憶」(世界記憶遺産)を巡り、中国の申請により「南京大虐殺」に関する資料が15年に登録され、16年には日中韓などの民間団体が「慰安婦」関連資料の登録を申請(17年に登録見送り)した教訓から、「加盟国の反対がある限り遺産登録を見合わせる」との制度の創設を主導し21年に導入にこぎつけた。この制度は世界文化遺産には直接適用されないが、韓国が反発する中で推薦することで「日本のこれまでの主張と整合性がとれなくなる」(外務省幹部)との懸念が出ている。

……
日韓、さらなる火種
 韓国外務省報道官は28日、日本政府の推薦方針に対し「強い遺憾の意を表明し、このような試みを中断することを厳重に促す」とのコメントを発表した。同省の崔鍾文(チェジョンムン)第2次官は28日夜、在韓日本大使館の相星孝一駐韓大使を呼び、遺憾の意を伝え抗議した。慰安婦や徴用工問題で冷え込み「1965年の国交正常化以来最悪」とされる日韓関係は、さらなる火種を抱えた。
 韓国政府は関係省庁の幹部や有識者を交えたタスクフォースを発足させるなど、対抗策の検討を本格化させる。3月の大統領選の進歩系与党「共に民主党」候補・李在明(イジェミョン)京畿道前知事もフェイスブックで「侵略と強制動員の歴史が世界遺産に美化されることは受け入れられない」などと批判した。
 韓国側は佐渡島の金山については「本人の意思に反して強制的な労働が行われた場所が、十分な説明なしに世界遺産に登録されないよう国際社会とともに断固たる対応をしていく」(外務省報道官)などと反発を強めてきた。

 背景にあるのは、15年に長崎市端島(通称・軍艦島)などで構成される「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に登録されたことだ。韓国側は当時、戦時中に朝鮮半島出身者が強制徴用された施設があるとして反対したが、日本側が「自らの意思に反して連れてこられ、厳しい環境下で働かされた多くの朝鮮半島出身者がいた」と説明すると約束したため同意した。
 ところが産業革命遺産の全体像を説明するために20年6月に一般公開された「産業遺産情報センター」(東京都)の展示内容について、韓国側は戦時中に強制労働させられた徴用工に関する説明が不十分だなどと主張。ユネスコ世界遺産委員会も21年7月に「約束を完全には履行していない」とする決議を採択した。こうしたことを踏まえ、佐渡島の金山の推薦についても、鄭義溶(チョンウィヨン)外相が「深く憂慮する」と述べるなど、けん制を強めてきた。

<以下略>

 日本政策投資銀行新潟支店の試算によれば、世界遺産登録による効果は、2019年に49. 8万人だった佐渡島への来訪者が登録後は1年で67. 8万人に増加し、その経済効果は約520億円に及ぶんだそうです。オリンピックもそうですが、利権話を絡ませて目くじらを立て、またまた無用な対立を招いて…と。何やってんのかと思います、ほんとに。








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