3月に出た『主権者のいない国』（講談社 小生、未読）の著者で政治学者の白井聡さんが、昨日（5月21日）午後「大竹まこと ゴールデンラジオ」にリモート出演して話していた内容の一部。
2021年5月21日 白井聡 - 大竹まこと ゴールデンラジオ！ - Omny.fm
太田アナ：今、世界的な環境問題があります。また、格差が広がりいろいろなところで分断が起こっています。差別もなくならない、紛争も収まらない、と。地球全体が危機的な状況になっていく。そういう中で、一瞬でもそうしたものに目を向けないで済むような政治家たちが支持されている。よくも悪くも「騙してくれる政治家」がリーダーとして世界中で活躍している。気づいてみると、どんどんひどい状況になっている。でも、そういう中で、主権者として、そうではないんだと目覚めて、そういう動きを変えていくのが大事なんだということをこの『主権者のいない国』でおっしゃっているように思ったんですが……。
白井：まあそういう論旨ではありますが。今、騙してくれる指導者が支持される傾向はあるかもしれません。たとえばイギリスのボリス・ジョンソン（首相）さんなんかは、そういう政治家と見られていたと思うんですが、彼自身がコロナに感染して、あやうく死にかけて……ということもあった。やはり本当の危機が訪れたときに、それまでポピュリストと見られた政治家もさすがに変わりますよね。腰が据わるというか、真剣に仕事を始めるというか……。俺もちゃんとしなきゃってね。
室井：やべぇ～、この国、変わんねぇ～。（笑）
白井：隣国に目を転じてみると、台湾とか、韓国とか、これらの国々は、ここ2、30年で急速に民主化が進んできた国々ですが、それらの国々の方がコロナ対策がきちんとできているのは、どういうことなんだろうか、と。
室井：日本はまだGo to やって、利権の先を潤わせようとかさあ、まだ金もうけのこと考えてる人がいて……。
白井：そうなんですよね。それで最近顕著になってきたのが、実務がまともに回せなくなってきたことで、たとえば接触者管理アプリのCOCOA（ココア）とか。あれ、ついにできないわけでしょ。それから今の大規模接種センターのシステムが問題になってますけど……。
大竹：今日の新聞では、まともな番号を打ち込んでもエラーが起こるっていう。
白井：要するに、丸投げと中抜きで無茶苦茶になってる。
室井：私、どうしても聞こうと思っていたことがあって。白井先生から見て、10年くらいのスパンでいいんですけど、10年後、この国が最高にうまくいったときの状況と最悪なときの状況と、どこまで考えているのか知りたいんですけど……。
白井：今のままの（ひどい）状況でずっといくとは思ってません。悪くなるときはもっと劇的に悪くなるんじゃないかと。
太田：悪くなると困るんで、どうすればいいのかを教えてほしいんですが……。
白井：まずはオリンピックを中止すること。それから政権交代すること。何党でもいいんですけど、次の政権がやることはごくシンプルな話になるんで、コロナ対策をちゃんとやることと、菅政権と安倍政権がやったさまざまな犯罪行為をきちんと追究し、摘発をすること。これを本気でやったら、たぶん自民党が崩壊することになると思うんです。自民党は解体せざるをえなくなる。
太田：これは自民党の中から変えようという動きが出てきても同じことなんでしょうか？
白井：中から変えていこうとする動きというのは……。うーん、今まで8年間待ってましたが、出てこないですね。
大竹：これに関するメディアの動きはどうなんですか？
白井：非常に責任は大きいですよね。今までだって、たとえばオリンピック批判がまともにできなかったわけだし。大メディアの多くがオリンピックのスポンサーになって利害関係者になっているから、踏み込んだ批判というのが全然できずに今日にいたってますよね。
大竹：ここまでくると、もう取り返しがつかないという話もありますけど、その点はいかがですか？
白井：一番悪いパターンは、オリンピックにかまけてインド変異株が大流行する。インド変異株は日本人の免疫系を通り抜けてしまい、ワクチンもあまり効かないものだとすると、何十万単位で死者が出る可能性もありますよね。……。
こういう話を耳にすると、ひどい惨状ばかりが頭の中に広がってしまう。しかし、他方、絶望の中にも希望を見ている自分を感じて、驚きを覚えることもある。これは錯覚なのか、鈍感なのか？ 魯迅の「絶望」を引き合いに出すのもおこがましいが、佐藤章さんの『職業政治家 小沢一郎』を読んでから、最後のインタビュー（の副題？）の（小沢氏による？）「あきらめるな日本人、よい世の中に必ずできる」という言葉が今も不思議と残響しているのである。
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