ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

新学期を前にして

 オリンピックやGo to よりも前にやらなければいけないことがある—―そう思わざるを得ない。

 NPO法人キッズドアの渡辺由美子さんが「現代ビジネス」に書いている。3月28日付記事の一部から。
 
「冷蔵庫はからっぽ…」「今、助けて」 コロナで追い詰められる困窮子育て家庭の「悲痛な声」(渡辺 由美子) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

……「沢山の野菜、ありがとうございます。冷蔵庫がからっぽの状態が続いていましたが、いっぱいになり心もお腹も満たされました。冷蔵庫に食べ物が入っていると嬉しいです」

「お正月に食べることができると思っていなかった、おもち、おそば、新米に新鮮な野菜、子どもたちの笑顔 そして”おいしい“のひとことで辛い心も苦しみも少しふっとびました」

これは、私が運営するNPO法人キッズドアが、日本全国の困窮子育て家庭970世帯に年末年始の食糧支援を行なった際、同封したはがきに綴られた保護者からの言葉です。まさか今の日本で満足にご飯も食べられない子どもがいるとは信じられない方も多いでしょう。しかし、現実は非常に多くの子どもたちが満足にご飯を食べられていません。

NPOでは新型コロナウイルスよりも以前から困窮子育て家庭への支援を実施しています。一見普通の、洋服や持ち物からは困窮には全く見えない子どもたちが、実は非常に厳しい環境に置かれている場合があるからです。
例えば、家が非常に狭いために子ども部屋はおろか自分の勉強机もなく、家庭で落ち着いて勉強することが難しい子どもや、月末になるともやしの頻度が多くなる子など、ケースは様々です。
パートで家計を支えるシングルマザーも多いのが実態ですが、そこに新型コロナウイルスの影響が直撃しました。緊急事態宣言や自粛で仕事に行けなくなるとすぐに収入が減り、それに備える蓄えもないために、日々の食事ですら事欠く状況となったのです。

2020年3月の一斉休校も大きく影響しています。突然の休校で給食がなくなり、子どもの昼食代に頭を悩ませるご家庭が多く出ました。そして、1年以上がたった今もそのような困窮子育て家庭が十分な支援を受けられず、親子ともに追い詰められています。
食事すらままならない環境の中、当然ながら子どもの学習にも大きな影響が出ています。私たちは休校期間中の2020年5月、そして年末の12月に文房具を送りました。子どもたちからたくさんの感謝のはがきが届いていますが、それを見るとかえって悲しくなるのです。

「定規が壊れていたけど買えなかったので、定規がもらえて嬉しいです」

「筆箱がボロボロだったので、新しく筆箱がきて嬉しいです」

「キャンパスノートが一番ありがたいと思っています。休校中も課題は出され続けるためノートの消費は激しいからです」

塾代や参考書の購入という話ではないのです。ノートや定規、消しゴムや筆箱など、最低限必要な文房具も買えない、そのような家庭がたくさんあるのです。

私たちは、2020年10月にコロナ災害で苦境に陥る日本全国の子育て世帯に登録してもらい、支援を行う「ファミリーサポート」という事業を開始しました。登録された困窮子育て世帯(2020年12月8日時点で1233名)の状況は大変厳しいものでした。
約半数が、世帯年収200万円未満、300万円未満を加えると8割を超えます。56%が非正規雇用で正社員は2割しかいません。貯蓄も10万円未満が4割で、働きたくても働けず、収入が減ればすぐに生活に行き詰まります。
その結果、直近1年間で、必要な食料が買えなかった方が37%、家賃・電気・ガスなど生活に必要なインフラの支払いができなかった方が30%、学校関係の引き落としができなかった方も27%です。切実な声も多く届きました。

「光熱費、携帯代、学校関係のお金、全てがきちんと払えず、クレジットカードも利用停止になりました」

「ひと月丸々あった収入がない時もあれば減額もあり、支払いが滞り、首が回らない状況になり、どうしたら良いのかわからず死んでしまおうかと思ったほどでした」

食事や子どもたちに最低限必要な教育のためのお金がまったく足りていない…あまりに深刻な日本の実態が当事者から寄せられたコメントからもデータからもおわかりいただけたかと思います。
この状況が続く中、3月は卒業、4月からは新学期、進級という時期を迎えます。子育て家庭の支出が一番多い時期です。制服や体操服、上履き、文房具など様々なものを揃えなければなりません。日々の食事も満足に取れず、学校関係の引き落としもできないような状況では、新学期を乗り越えられないのです。
せっかく入った高校を中退する、新学期の準備ができないから不登校になる、そんな子どもが出てしまうことを大変危惧しています。
そのため、私は今、「コロナで困窮する子どもたちを救おう!プロジェクト」(https://www.change.org/kodomowosukuou)の発起人として、政府に困窮子育て世帯への3月中の現金給付を求める署名活動や政府への要請活動を行なっています。
私たちが求めている金額は困窮子育て家庭に5万円、子どもが2人以上いる家庭には子ども1人につき3万円を上乗せして、とりあえず1度でいいから3月中に給付して欲しいという、とても控えめな要望でした。
2月5日のインターネット署名開始から約40日、3月16日に緊急事態宣言による雇用環境の悪化を受け、低所得の子育て世帯に子ども1人当たり5万円の特別給付金の支給が決定しました。大変喜ばしいことですが、もう少し早く決まっていれば新学期に間に合ったかもしれないと思うと残念です。具体的な支給時期などはまだ発表がなく、気を揉んでいらっしゃる保護者の気持ちを思うと1日でも早い支給を願うばかりです。

<以下略>

 小生も学校で働いているあいだ、こうした家庭の子どもたちを見てきた。当時、給食が一日で唯一の食事という子が何人もいた。10年以上前でもそういう状況である。このコロナ禍でさらに深刻になっているはずだ。
 こうした社会の姿を伝え、可視化するべきメディアはどんどん隅に追いやられているが、良心までも隅に追いやられてしまう国であってはいけないと思う。新学期のスタートを前に、子どもたちが笑顔を取り戻せるようにしたい。たいしたことはできないが、小生も何かしたい。




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