ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「リアリズムの喪失」

 本当は昨日投稿すべきだったのですが、昨日7月22日付の毎日新聞に掲載された駒村圭吾氏(憲法学者 慶大教授)へのインタビュー記事は一読の価値があると思います。話の中身(全体的なトーン)は、「解釈改憲」を重ねながら憲法体制を維持してきた日本の政治からは、リアリズムが失われた(あるいは、政治的リアリティと向き合わなかった)ということですが、特に、以下に引用する部分には共感しました。
論点:日本国憲法80年 インタビュー 駒村圭吾・慶応大教授 | 毎日新聞

――現行憲法を巡る政治の状況をどのように認識していますか。
 一言で言うと「リアリズムの喪失」に尽きるのではないかと思っています。
 明治憲法体制は「統帥権の独立」「国家神道」「家父長制」のトライアングルの頂点に天皇を置くとこでリアリズムとは対極にある神権的な統治を行いました。しかし、これらは戦後、新憲法によって全部否定されました。
 そして日本は戦後復興を果たし、高度経済成長を経て、その後、バブル経済の崩壊で「失われた何十年」となります。そして過去の成功体験だけが抽出されて「日本はスゴイ」というある種の「神話」「物語」が漂い始める。そこにポピュリズムも相まって、真実や事実ではなく「物語」によって政治を行おうとするようになった。明治体制と同じく政治におけるリアリズムの空洞化が常態となりつつある気がします。
 しかし、今語られている「物語」は古いアルバムや先人の遺影を眺めて郷愁をかみしめるようなものです。過去の風景は絶対に戻ってこないにもかかわらず、過去と現在を無理やり接続しようとしている。
 殺害された安倍(晋三)氏は国葬で送られ、紙幣の肖像とする提案もありました。神格化とは言いませんが、安倍氏周辺は同氏の遺志を必要以上に強調して「後継者」の先陣を争う。このことがさらに政治をリアルから遠ざけているのではと思います。
 日本国旗損壊罪法はまさにそうです。自民党内からも「立法事実がない」と批判されたのに成立させました。選択的夫婦別姓もそう。経済界や労働界も実現を求め、同党内にも賛同者は少なからずいるのに「誰だかわからないが上の方が『ダメだ』と言っている」との理由で実現に動かない。
 同性婚もそう。自民党支持層も含めた世論の大半が賛成で、同性婚を認めない現行法に対する違憲判決も立て続けに出ているのに、政府は動こうとしない。
 皇室典範改正もそう。国民の多くは女性の天皇を容認しているのに、それを無視した今回の改正は、皇室が戦後積み上げてきた国民の支持を将来的に押し下げてしまうかもしれない。そうした可能性を度外視した改正は、天皇制のリアリズムを無視していると言えます。
……

 駒村氏は品よく「物語」と言っていますが、現政権というか首相のでたらめや下劣さを考えたら「妄想」か「虚構」でもいいところです。

 高市政権の支持率は下落傾向です。政権が発足した去年10月21日の円ドル相場は1ドル=151円80銭でした。今日7月23日は163円50銭くらいですから、この9か月で12円近く円安が進んだことになります(とりわけ160円を突破した6月上旬から1か月余で3円も円安となっています)。驚異的というか無策というか。物価高が止まる兆しはないでしょう。
 これで「積極財政」によって「成長のボタン」とやらを押して、押して、押しまくったら、どういうことになるのか。あるいは、財源を明示せずに(できずに)来春から消費税減税をやると言ったら、どうなるのか――「リアリティ(の喪失)」などという単語を使わずとも、行く末は明らかです。
 まさにこの数か月のあいだ、国民生活を無視=犠牲にして、どたばたと短期間で無理やりに成立させたのが、国民には「無用」な法律群です。支持率が下がる理由だと言われてもしかたないと思います。




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