参院選の投開票日が迫ってきました。報道によれば、自公で過半数確保は(かなり)厳しい情勢のようです。小生はすでに期日前投票を済ませましたが、先日会った知人も同じで、出口調査まで受けたと言っていました。隣の某国では出口調査で自身の投票先を正直に言わない(むしろ「逆」に答える)ようで、選挙結果と真逆(正反対)になることがあるので出口調査は当てにならないのだそうですが、日本の人たちはおそらく(知人と同様)「素直」に答える人が多いのでしょう。だから日本のマスメディアの「当確」打ちと実際の「当選者」があまりズレることはなく、もし外してしまうと「一大事」になる程です。しかし、期間中の情勢報道というのも、確かにアナウンスメント効果により、少なからず投票行動を左右しそうなので、騒ぎすぎるのも考えものだと思います。
そういう意味で、ブログに書くのは「騒ぎ」に便乗するようで本意ではありませんが、自公の伸び悩みに「反比例」するように躍進する参政党について、気になった記事があったので引用してみます。自公と「反比例」するように、と書いたとおり、小生自身、参政党には自民党から離れた保守票が流れているのかと見ていたのですが、評論家の古谷経衡さんの見方は違っていました。
「参政党研究」の第一人者・古谷経衡氏が語る“支持者の本質” 「大半は人生で初めて投票に行く“無関心層”だが300万~500万票は動く」 | AERA DIGITAL(アエラデジタル)
……6月下旬に発表した論考で、私は参政党支持層について、多くが「日本政治や社会の大まかな構造に対して、驚くほど無知で無関心」な人々、これまで一度も投票に行ったことがなかった「無関心層」であると書きました。
一方、参院選が公示されて以降も支持率が伸長していることから、「岩盤保守層やネット右翼が大量に参政党へ流れているのではないか」との問いをしばしば受けます。しかし、そうではないでしょう。日本のネット右翼人口はおおよそ200万人程度とされています。最近はそのうち6割程度が日本保守党支持でまとまり、残り4割が自民党の旧清和会(安倍派)系や国民民主党を支持してきました。日本保守党内部の内紛や自民党の体たらくで一部は参政党に流れているでしょうが、私は多くてもネット右翼人口の2割強、票数で言うと40万~50万票程度だろうと見ています。参政党が比例で取るとみられる票の全体から考えるとごく一部です。
また、保守論壇はそもそも参政党と競合しません。参政党の主張は、従来の保守層やネット右翼とは相いれないからです。ネット右翼は揶揄されることも多いですが、一応は作法というか、理論があるんです。「憲法9条改正」、「自虐史観からの脱却」などの主張は彼らなりに学んだ理論の上にあります。例えば参政党の憲法草案が話題ですが、あれは「保守的」でも「ネット右翼的」でも全くありません。国家像の思想が見えませんし、憲法第1条を完全に書き換えるような意見はネット右翼からですらほとんど聞いたことがない。また、神谷宗幣代表はかつて「天皇陛下に側室を」と語っていましたが、保守・右翼界隈でこんなことを言おうものなら袋だたきです。
つまり、いま参政党を支持している人の多くも、これまで私が接触してきた支持層と大きく変わっていないでしょう。繰り返しになりますが、人生で初めて投票に行く「無関心層」です。保守とリベラルの対立構造や与野党の違いすらあいまいで、報道や外国人が増えたという何となくの実感から無自覚なゼノフォビア(外国人嫌悪)を抱いた人々。それが参政党支持層の中心だと考えています。……
「人生で初めて投票に行く「無関心層」……保守とリベラルの対立構造や与野党の違いすらあいまいで、報道や外国人が増えたという何となくの実感から無自覚なゼノフォビア(外国人嫌悪)を抱いた人々」――参政党支持層の中心がこうした人々だとすると、このコアな支持層は、昨日の政府発表で、訪日外国人客が上半期で2,000万人を突破した(前年比21%増)というニュースに、苦々しい思いをされているということでしょうか。実際、外国人から具体的な危害や迷惑を被っている(と感じている)人が支持者の中にはいるかも知れません。
半年間の訪日外国人旅行者数 最も早く2000万人超え|NHK 首都圏のニュース
参政党の支持層には、同党のキャッチフレーズ「日本人ファースト」が「刺さる(共感を呼ぶ)」ようです。類似例としては、先行して「都民ファースト」なる語もありましたが、これは本来は都民と他県民という「ヨコ」の関係ではなく、(自民党優位の)都議会対都民という「タテ」の図式だったと思うので、これを模して「国民ファースト」にするなら「同じ意味」ですが、「日本人ファースト」はどうみても「ヨコ」の対関係を想像させます。松尾貴史さんも日曜付の新聞コラムで同様のことを述べていました。
松尾貴史のちょっと違和感:「日本人ファースト」 国の衰え感じさせる言葉 | 毎日新聞
……2016年の米大統領選挙期間中、ドナルド・トランプ氏が「アメリカ・ファースト」(米国第一主義)と叫び始めた。元々は第一次世界大戦前後に国際紛争に介入しない米国の外交姿勢を指していたようだ。それにしても、今のご時世にそれを強調するとは、「米国はそこまで余裕がないほどに衰えてしまったのか」と感じざるをえなかった。日本人がこの「日本人ファースト」というフレーズに違和を感じなくなる状態は、米国同様、この国の衰退を実感させる。
この言葉は、排外主義や外国人差別を助長、あるいは正当化しかねないニュアンスをはらんでいる。「日本人ファースト」は、「日本人を優先する」という意味になるが、同時に「日本人以外は後回しにする」にも聞こえる。日本の国内には、数百万人の外国人、移民、難民、在日外国人が暮らしている。外国人観光客も多く滞在している。このスローガンは、その人たちへの支援や権利の保護を軽んじるということにつながる危険性がある。
つまりは、「うち」と「そと」との分断が持ち込まれやすくなる。この言葉が使われる場面では、「外国人は優遇されすぎている」「外国人は犯罪に手を染めやすい」などという、客観的事実ではない風説もセットで語られがちだ。……もし「日本人ファースト」でなく「国民ファースト」であれば、「主権在民」のように、「一部の権力者でない国民の側」というニュアンスになるので問題を感じないが、「日本人ファースト」にはそれがないのだ。
国の衰えを感じるといったが、まさに今、国民の間に鬱積している不安、不満、困窮についての怒りの矛先を外国人に向ける道具として、この言葉が用いられる傾向が強まっているのではないか。政治家が自らの責任の所在を、自分たちの無策や失政、利権の構造に向けずに「そと」にそらすことは、瞬間的な人気を得たとしても、長期的には社会全体の連帯を破壊してしまうだろう。……<以下略>
参政党の憲法案も眺めてみたのですが、予想どおりというか、小生個人には驚きの内容です。参政党支持層の人たちの多くも、自分が支持する政党の「憲法構想案」だけに見て知っていると思うのですが、その第19条(外国人と外国資本)などは、外国人に対する「敵意」がほとばしる感じがします。曰く、「外国人の参政権は、これを認めない。帰化した者は、三世代を経ない限り、公務に就くことが出来ない。帰化の条件は、国柄の理解及び公共の安全を基準に、法律で定める」――「三世代」とか「国柄」とか……ええっ!と思いますね。
また、曰く、「外国人の入国及び在留条件は、国が主権に基づき、自由に決定することができる」――個人の権利を最大限保障するために国家権力を縛るべき憲法の条文に、いくらなんでも「国が……自由に」って話はないでしょう。小生なんぞに言う資格はありませんが、この条文づくりに関わった人には憲法(というか法律のたてつけ)の基礎知識があるのかどうか疑わしい感じです。他の条文もそうですが、たとえるならば、人生をどう生きるべきかという話と、健康のため毎日バランスのとれた食事をして適度に運動した方がよいとか、定期健診を受けるべき、といったレベルの話が同列にされ混同されているところがあちこちに見受けられます(要するに総論と各論の区別がないのです)。
問題だと思うのは、現憲法の「第三章 国民の権利及び義務」について書かれた部分が「国民の生活」という章題に置き換わり、基本的人権の保障以下、現憲法で掲げられた個人の尊重と自由にかかわる条文の多くが、どこかに消え去っているのです。……参政党の言うこの憲法体制では、個人もメディアも、国策に異議を唱えることは困難になるでしょう(「表現の自由」の条文が見当たりません)。それが参政党が望む(目指す)日本の「国柄」なのでしょうか。今の米国もトランプ政権になって、自由な言論が抑圧されていますが、「〇〇ファースト」を叫ぶとこうなると考えるのは、あながち雑な理解ではないかも知れません。
いずれにしても、これから投票をされる方々には、「気分」や「空気」でなく、自身でよく見、よく考えて、投票されることを切に願います。
追記)3年前に参政党について書いた記事がありましたので(忘れていましたが)、よければこちらもご覧ください。
参政党について - ペンは剣よりも強く
